58話 ……先生、くすぐったい
「んっ……そこ、気持ちいい」
「少し張ってるな……使いすぎなんじゃないのか?」
「今週から、休みだから……あっ」
「それじゃあ、今の内にしっかりほぐしておかないとな」
ガチャガチャッ! バァンッ!
「な、何やってんだお前ら~っ!!」
「マッサージだよ」
「……マッサージだけど」
双子たちが通う中学が期末のテスト期間に入った水曜の家庭教師の日。
部活がテスト休みの為、早めに帰ってきたハルトの足のリハビリマッサージを念入りにやっていたところ、ハジメに見つかって怒られてしまった。
「怪我した左足に負荷がかかりやすかったり、逆に無意識に庇って右足に負荷が偏ってたりすると良くないからな……」
「……普段から気を付けてはいるんだけど、やっぱ先生に揉んでもらうと調子がいい、のっ」
「そ、それにしたってお前ら、そうやって変な声出すのは……っていうか八雲おまえっ、ハルトの尻揉んでるじゃねーか!」
「太ももだよ」
いやまあ、部位的にはほぼ尻と言ってもいい場所かもしれないが。
こればかりはリハビリマッサージの一環なのでしっかりやらないといけない。
「あっ、先生そこっ……んふぅっ」
「ハルト、ちょっと……ハジメが勘違いするからそういう声は抑えてくれ」
「だって、出ちゃうからっ……」
「~~~っ!」
俺とハルトのマッサージを見て顔を真っ赤にするハジメ。
男同士で普通に身体をほぐしているだけのマッサージなのにちょっと過剰な反応だとは思うのだが、ハジメは以前バスケ部のコーチにマッサージと称してセクハラされた経験があるので意識してしまうのも無理はない。
「ハジメ、もうちょっとで終わるから……嫌なことを思い出すようなら少し別の部屋で待っててくれて構わない」
「だ、大丈夫だしっ! 八雲のマッサージはアイツのとは違うって分かってるし……」
「……んぁっ」
「でもっ! ハルトはむしろそういう気持ちで受けてるだろっ!」
「……そういう気持ちって?」
「~っなんでもない!」
ハジメはそう言うと『オーブン見てくる!』と言って部屋を出ていった。
バスケ部の方もテスト休みで早帰りをしたので、俺が来るちょっと前から菓子作りをやっているらしい。
……テスト期間なので明日の試験教科の勉強でもしてくれていた方が良いのだが、まあ気分転換も大事だろう。
「よし、足はこんなもんかな……ハルト、他に気になるところはあるか?」
「ん~……そうだなあ」
うつぶせになっていたハルトがごろんっと寝返って仰向けになる。
「……じゃあ、胸筋ほぐして」
「おう、分かった……ん、胸筋?」
ハルトがニヤニヤしながら上着を捲り上げると、日焼けをしていない綺麗な胸と桜色の……
「ちょっ、おいこらハルト! 見せるな見せるなっ」
「え~? おれはただ、先生にマッサージしてもらおうと思っただけなんだけど」
「別に、服の上からでもできるから……!」
ハルトに服を戻させて、脇の辺りから優しく触っていく。
「んぁっ……先生、くすぐったい」
「頼むからこの状況で変な声出さないでくれ」
傍から見たら男子中学生のおっぱいを揉みしだく変態野郎になってるから。
「っていうか、バレーやテニスなら分かるけどサッカーで胸筋使うのか……?」
「……さあ、どうだろうね」
「おい」
こいつ、また悪ふざけで胸触らせただけか……?
部屋にスマホ隠して録画してたりしないよな。
「おーい、クッキー焼けたぞ~……って、それはさすがにやりすぎだろお前らっ!?」
「あ、やべ」
「見つかっちゃった」
オーブンでクッキーを焼いていたハジメが部屋に戻ってくると、そこには仰向けで家庭教師に乳を揉まれる兄の姿が。
うん、さすがに通報案件すぎるだろ。
「またオレのいないところでイチャイチャとっ……ハルトと八雲はクッキー無し!」
「……ハジメ、ごめん。それだけは許して」
「食いもんに弱すぎだろ」
こういうときの、解決方法は……よし。
「ハルトのマッサージ終わったら、ハジメにもしてやるから。それで許してくれ」
「そんなの、お前っ……ったく、今回だけだからな!」




