48話 って、なにキモいこと考えてんだ俺は
夕方頃にハジメを家まで送り、帰宅して一息入れる。
結局アイツ、俺の家に来て家事やって風呂入って帰ってったな……あれで遊んだことになるのか?
「それにしても、今日は随分と濃密な一日だったな……」
朝からハルトとサッカーして、ビュッフェレストランでメシを食って、入れ替わるように今度はハジメを家に迎えて……
なんというか、二股してるクズ彼氏みたいな1日だ。
いやまあ男同士だし、アイツらとはそんないかがわしい関係ではないのだが。
「……こうして別々に会ってみると、だいぶ性格が違うんだな」
普段2人セットで勉強を見ていると、ちょっとした仕草とかセリフのタイミングが同じでさすが双子だな~って感じることが多かったけど、1人ずつ接してみると2人一緒にいた時とは違う面が見えたりする。
ハジメも言っていたが、成長するにつれて好みや生活リズムが変わっていって、千葉さんちの双子ちゃんから千葉ハルトと千葉ハジメという個人として認識されていくのだろう。
「それにしても、誘いを受けたときは少し驚いたな……」
別に、ホテルレストランのビュッフェだって3人で行けばいいし、そのまま一緒に俺の家に遊びに来れば2人の希望は叶えられたはず。
……でも、あいつらはそれをしなかった。
お互いの行きたいところ、やりたいことをこちらに提示して、俺と2人きりで遊びたいという意思を見せてきた。
「こういうのも、一種の独占欲……って、なにキモいこと考えてんだ俺は」
もしかしたら、ハルトは女子が好きそうなビュッフェに行くのをハジメに知られたくなかっただけかもしれない。
ハジメはハジメで家事をしているところをハルトに見られたくなかっただけかもしれない。
双子とはいえお互いに言えないパーソナルな面を持ち合わせているだろうし、そういう事を解放する相手として、家庭教師と生徒という適度にフラットな関係性の俺を選ぶというのは納得できる理由だ。
「って、なんで俺は中学生の内面を解析するようなことを……」
柄にもなくうちの大学の教育学部の連中みたいなことをしてしまった。
子供の行動原理とか、そういうのは俺にはよくわからん。
「……なんか、ハジメの匂いが残ってる気がする」
さっきまでハジメが横になっていたソファベッドに腰掛けると、ふんわりといい香りが漂ってくる。
男子中学生の残り香を気にする大学生……さすがにセルフ通報案件かもしれない。
「俺も少し、のぼせちまったかもな……」
ポコンッ♪
「……ん、チャットメッセージか」
なんとなくハジメがいた場所を避けて座ると、スマホからメッセージ受信の通知音が聞こえてきた。
「3人のグループチャットの方か」
家庭教師のスケジュールなどを確認する為に作ったグループチャットに2件のコメントが入っている。
俺はコメントしてないのでハルトかハジメだろう。
「えっと、なになに……」
≪ハジメ≫
八雲、今日はありがとな!
ホテルレストラン、今度はオレも連れてってくれよ~!
≪ハルト≫
先生、今日はごちそうさま
……先生の家、次はおれも連れてってね
「……はぁ~、やられたわマジで」
スマホをソファに放り投げ、クッションに顔をうずめる。
結局アイツら、情報共有してるじゃねえか……俺がダブルブッキングで焦ってんの見て内心楽しんでやがったな?
家族同士でもパーソナリティがどうとか真面目に考えてしまった俺がバカみたいじゃないか。
ポコンッ♪
「ん、まだなにか……?」
返信する気力もなくて既読スルーをかましていたら、今度はハルトとハジメから個別のメッセージが入っていた。
≪ハルト≫
今度は、おれ1人で先生の家に遊びにいくね
≪ハジメ≫
次はオレと2人でバスケやろうぜ!
「こ、こいつらまたそういうことを……っ」
再びスマホを放り投げてソファに身体を預ける。
「悪ガキ共め、俺はもう騙されないからな~……!」




