44話 とりあえず俺から1個注意な
「これで連絡先の登録はオッケーだな」
「遂に八雲のメアドゲットだぜ~!」
「……へへ」
メリッサさんからプレゼントしたスマホの使い方を教えてあげて欲しいとお願いされた俺は、本日の家庭教師の時間を使ってハルトとハジメにアプリの説明やチャットの使用方法を伝授していた。
といっても、2人ともメリッサさんのスマホを使って連絡してきたり、友達のスマホを借りてゲームをしたりという経験があったので、そこまで細かく教えなくてもすぐに使いこなせるようになっていた。
「なー八雲、プロフィール写真どうやって変えんの?」
「システムのプロフィール編集のとこ飛んで、アイコンタッチして……っておい、俺の顔写真に変えようとするな」
「……先生、チャットアプリのID教えて」
「QRコード出すからちょっと待ってな」
2人ともメリッサさんにスマホを貰ってからすっかり夢中だ。
とはいえスマホが手に入ったということは、それだけ勉強がおろそかになる可能性も増えてしまう。
ハルトたちがSNSやショート動画漁りにのめり込んでしまわないように気を付けなければ。
「あー、とりあえず俺から1個注意な。SNSには本名と顔写真は絶対晒すな。以上」
「そうなのか?」
「……おれ、去年出たサッカーの大会でネットに名前と集合写真載ったことあるけど」
「ぐっ……正直、それもやめたほうがいいんだけどなあ」
今の時代、スマホに疎い大人の方がネットリテラシー低かったりするから厄介なんだよな。
まあ俺も部活で全国出た時の写真やら動画やらが出回ってるだろうからあまり人のことは言えないが。
「ちょっと怖い話をすると、ネットでお前らの顔と名前を見て、お前らのことが気になったり一目惚れしたりする人がいるかもしれない。するとどうなると思う?」
「……サッカーの大会、見に来るとか?」
「それくらいならまだ平和だが、どんどんエスカレートしてお前らが通っている中学やこの家を特定してストーカー化するかもしれない。その内、見るだけでは飽き足らず話しかけてきたり触ってきたりするかもしれない」
「「……っ」」
実際にストーカー被害に遭ったハルトと部活のコーチからセクハラ被害を受けたハジメが顔に恐怖を滲ませる。
さすがに大げさに言い過ぎたか……?
「えっと、その……こほん。要するに、プライベートな情報はあまり載せないようにな。2人とも顔が良いんだから、ネット上で拡散されたら大変だぞ」
「か、顔が良い……」
「……先生も、そう思う?」
「ん? まあ一般論としてな。ハルトもハジメもだいぶ整ってると思うぞ」
「……そ、そっか」
「へへっ……八雲がそこまで言うんじゃあ仕方ねえな!」
よし、とりあえず2人とも納得してくれたようだ。
……。
…………。
「そういえば結局アイツら、ご褒美に何が欲しいとか言わなかったな」
2人の誕生日パーティーと家庭教師を終えて帰宅したタイミングでふと思い出す。
中間試験で赤点を回避したらスマホを買ってもらうという約束の他に、俺からも何かご褒美が欲しいと言っていたハルトとハジメ。
ハルトは前に2人で遊びに行きたいとか言ってたけど、今のところ何もリクエストされていない。
「ハジメもパケモンカードじゃなくて別のお願いにするとか言ってたよな……ん?」
家に帰ってスマホを確認すると、チャットアプリの方にメッセージが届いているというお知らせが表示されていた。
「ハルトとハジメか。さっそく使いこなしてるな」
少し微笑ましく思いながら、アプリを開いて2人のチャット画面を確認する。
≪ハルト≫
先生、来週の土曜日にホテルビュッフェ行かない?
≪ハジメ≫
来週の土曜、八雲の家に遊びに行ってもいいか~?
「こ、これは……どうしたらいいんだ?」




