43話 なかなかセンス良いじゃん
「ハルト、ハジメ……」
「誕生日おめでとう~!」
「お、おうっ」
「……ありがと」
6月11日、日曜日のお昼時。
俺は普段よりも早めに千葉家にお邪魔して、15才になったハルトとハジメの誕生日を祝っていた。
正確には明日が2人の誕生日なのだが、平日なので千葉家では1日繰り上げて今日お祝いをすることにしたらしい。
「ダーリンは夜帰ってくるから、お昼は代わりにスペシャルゲストの八雲くんがお祝いするわよ~」
「なんというか、俺が先にお祝いしちゃって親父さんに申し訳ないな」
「いーのいーの。あの人がいたら主役の2人を差し置いて盛り上がっちゃうから」
「父ちゃん、パーティーとか好きだもんな~」
「……酒飲んで酔っ払って、おれのプレゼント勝手に開封してたことあった」
「あ~あったわね~! それでハルト、泣いちゃって。そしたらハジメがラッピングを包み直してハルトに渡して、でもそれがグチャグチャでハルトがさらに泣いちゃって……」
「そ、そこまで言わなくていいっ……!」
「それめっちゃ昔のことだしっ! てか悪いの父ちゃんだし!」
「まあ、それはそうだな」
メリッサさんに幼い頃の微笑ましいエピソードを暴露され、慌てて遮る双子たち。
それにしても。中学3年にもなって家で誕生会とか恥ずかしいって感じかと思ったけど、意外と普通に楽しんでいるようでなによりだ。
「そ、それよりほら、母ちゃん!」
「……おれたちに渡すものがあるんじゃない?」
プレゼントが待ちきれないのか、ソワソワしながらメリッサさんに催促するハルトとハジメ。
そりゃそうだよな……2人とも、この日のためにテスト勉強がんばってたんだから。
「はいはい、分かってるわよ~……こっちがハルト、こっちがハジメね」
「「よっしゃ!!」」
ラッピングされた長方形のケースを受け取ると、大胆にビリビリと包み紙を破いて中身を確認する。
「なんつーか、開封の仕方が海外っすね」
「うちではいつもこんな感じよ。大げさなくらいビリビリに破いて喜びを表現する、みたいな」
「なるほど……」
オーストラリア人のルーツを持つメリッサさんは、自身の親から受け継いだ習慣を息子たちにも伝えているらしい。
まあでも、静々と包み紙を開くよりこっちの方がワクワクしてるな~って感じはするかもしれない。
「うぉおお~! アイフォーンの最新機種!」
「……やった!」
包み紙の中から出てきたのは、2人が欲しがっていたスマートホン。
機種やカラーは2人とも同じようだ。
「それじゃあ俺からも」
「……先生から?」
「スマホカバーと保護フィルムだ。先にこれ貼っとかないと指紋でベタベタになるからな」
「八雲サンキュ~!」
俺は事前に購入するスマホの機種をメリッサさんから教えてもらい、対応するカバーとフィルムを2人にプレゼントすることにした。
「……おれのカバーは青」
「オレのは赤だ!」
「同じのじゃつまらんと思ってな。ハルトのはサッカー部のユニフォーム、ハジメのはバスケ部のユニフォームのカラーに合わせてみた」
「へ~、なかなかセンス良いじゃん八雲」
「先生、ありがと」
良かった、これで『こんなクソダサいカバー使えねえよ』とか言われたら3日くらい落ち込むところだった。
正直、中学生の好みとか分からんしな……気にいってくれたならなによりだ。
「そうだ八雲くん。今日の家庭教師だけど……」
「あ、さすがに今日は無しにしますか? 誕生日だし」
「無しにはしないんだけど」
しないのか……千葉家、意外とストイックな教育方針だな。
「勉強を見る代わりに、2人にスマホの使い方とか教えてあげてくれない?」
「そういうことですか……もちろん、良いですよ」
「「よっしゃ!!」」
ということで、この日の家庭教師の勉強内容は『スマートホンの使い方』だった。
学校の科目で言うと……情報処理かな。




