40話 男色ってなんだ?
ハルトたちサッカー部の練習試合が終わり、その翌週のハジメたちバスケ部の合同練習会も終わったさらに翌週。
学校の部活動が中間試験前の休みに入り、ハルトとハジメは最後の追い込みをかけていた。
「ぐぬぬ、年号が覚えられねえ……!」
「……同じ苗字のやつばっか出てくる。紛らわしい」
「しかもみんな漢字だし! マイケルとかコビーとか覚えやすいのにしてくれよ!」
「日本史にそんなバスケ選手っぽい偉人は出てこないだろ」
テスト間近の家庭教師ということで、今日は暗記系をメインに攻めている。
試験で良い点を取るには、結局のところ授業の理解というよりテスト範囲の文言をとにかく覚えることが大切だ。
まあ、本来の勉強・学習という観点で見ると良くないんだろうけど、今回は双子たちのスマホがかかっているからな。
「(しかし、こうなってくると逆に俺は暇になってしまうな……)」
暗記系の問題はとにかく覚えるだけなので、どうしてその答えになるのかみたいな解説をすることが少ない。
最初の頃は楽しく勉強する為に歴史漫画を読ませてちょっとした時代背景を説明したりもしたが、今はその段階は通り過ぎてテスト前の詰め込み期間に入っている。
「織田信長には男色の気があり、近習には蘭丸を……なあ八雲、男色ってなんだ?」
「男同士の恋愛とか、男が好きな男って意味だな」
「そ、そうか。男同士の……」
「…………」
「な、なんだよハルトッ」
「……別に」
う……ちょっと変な空気になってしまった。
別に下ネタってわけじゃないけど、こういう話になるとどうしても気まずい雰囲気が滲み出てしまう。
まあ、思春期だししょうがない。
「昔のサムライは、男同士でも付き合ってたのか……?」
「まあ、現在の同性愛とはまた少し違う関係だろうけど、武将が側近……ここに書いてある『近習』ってやつだな。要するに、美少年を側に置いて色々……みたいなことはあったらしい」
「へ、へえ……」
「……それじゃあ、先生が武将でおれが近習みたいな?」
「ちょっ、ハルト何言ってんだ!?」
勉強に飽きたのか、当時の武将の真似事(?)を始めるハルト。
っていうか、やるにしても男色の近習はテーマが良くないだろ……
「……ねえ先生、当時の男色たちはどういうコトをしたの?」
「いや、そこまでは知らねえよ……中学の試験にも出てこないだろ」
「2人も男色の近習はべらせて、八雲はヘンタイ将軍だなっ!」
「いやハジメもなのかよ」
これが男子中学生特有の悪ノリ……そんなことはどうでもいいから勉強に集中して欲しい。
「ほら、真面目に勉強しろよ。そうやってサボってると男色の将軍様からお仕置きされるぞ」
「……お仕置きって?」
「そうだなあ……ケツを叩かれるとか?」
「それじゃあうちの母ちゃんと同じじゃん!」
ハジメ、メリッサさんにケツ叩かれたことあるのか……容易に想像つくなあ。
「……先生、そういうのじゃなくて、もっと男色っぽいお仕置き考えて」
「男色っぽいお仕置きってなんだよ……叩くんじゃなくて、ケツ揉んだりロウソク垂らしたりか?」
「……~っ!」
あ、ハルトがなんかゾクゾクしてる。
相当キモいこと言ったから鳥肌が立っちゃったのかな。
「……お、おれ、ちょっとトイレ」
「ハルトのやつ、自爆したな」
「ハジメ、自爆ってなんのことだ?」
「な、何でもねえよっ! それよか八雲、オレも八雲にお仕置きしたい!」
「なんでだよ」
無駄にキラキラした目で手をワキワキと動かすハジメ。
お仕置きって、さっき俺が言ったケツ揉むとかそういうことか……?
「それじゃあ、俺と日本史のテストやって勝った方が負けた方にお仕置きってことでどうだ?」
「え~ズルッ! それじゃあ絶対八雲が勝つじゃん!」
「それは分からんだろ。現役で勉強してるハジメの方が覚えてるかもしれないぞ」
「とにかくそれは無しっ!」
そう言って、ハジメは大人しく勉強を再開した。
ふう……やれやれだ。
「べ、別に……八雲にならお仕置きされてもいいけど」
「何か言ったか?」
「なんでもねえよヘンタイ八雲っ!」
なんでだよ。
———— ――――
面白かったら★とリアクションをいただけると執筆の励みになります!
———— ――――




