37話 ほら、これなら狭くない
「ったく、ハルトのやつ油断もスキも……あれ? なあ母ちゃん、八雲こっち来てねえの?」
「八雲くんならハルトと一緒にお風呂入れちゃったわよ~」
「はっ!? な、なんでだよっ!?」
「だってサッカー部の練習試合のお手伝い頑張ってくれたし、これから家庭教師やってくれるのに汗かいた服じゃ気持ち悪いでしょ」
「じゃあオレも入る……!」
「何言ってんのハジメ、うちのお風呂に3人もいっぺんに入れるわけないでしょ」
「く、くっそ~!」
……。
…………。
「悪いなハルト、俺まで一緒することになっちまって」
「……別に。うちの母ちゃん、強引だから」
千葉家の風呂場でシャワーを浴びる俺と、浴槽に浸かりながらこちらをジッと見つめるハルト。
サッカー部の練習試合でかいた汗を流してこいということで、俺たちは何故か一緒に風呂に入ることになってしまった。
「夏の大会もスタメンで出れそうなのか?」
「……多分。コーチからも動きが良くなったって褒められた」
「おお、やったじゃねえか」
事故で左足を負傷し、リハビリを得て完治してからもなかなか今までの実力を取り戻すことができずにいたハルトだったが、3年最後の大会前に完全復活を遂げたようだ。
「夏の大会でも活躍して、なんとかスポーツ推薦が取れると良いな」
「うん……でも、どうなるか分からないから家庭教師は続けてよ、先生」
「心配すんな。ハジメもいるし、お前だけ勉強見ないとかそんなことしないって」
「……うん」
シャワーを止めて、髪を軽く絞る。
湯舟には流石に入れないか……
「それじゃあハルト。俺、先に出てるから」
「……先生も、こっち来なよ」
「いや、流石に2人で入るのは狭いだろ」
「……おれが先生の前にくれば大丈夫だし」
「そ、そうか?」
ハルトに言われるがまま、浴槽の端に手をかけて湯船に浸かる。
すると、俺に背中を預けるような形でハルトが密着してきた。
そのままうまいこと調整して、足を伸ばした俺の間にスッポリと納まるハルト。
「ほら、これなら狭くない」
「いや、狭いは狭いだろ……」
ハルトがへへ、と笑ってこちらを見上げてくる。
日焼けした顔と、日光を浴びていない真っ白な胸元が俺の視界に広がった。
「(う、やべ……)」
相手は男子中学生だ。
変な気持ちになんてなるはずがないし、なっちゃいけない。
しかし、日焼けの跡というのは妙に艶めかしいというか、流石に密着しすぎというか……
要するに、俺の中の生理現象がハルトに反応してしまっている。
「……先生、おれのお尻になにか当たってるんだけど?」
「わ、悪い……湯船に浸かったら、ちょっと血行が良くなりすぎてな……」
「……ふぅん」
え、なんだその反応は。
もっとこう、罵倒するなりバカにするなりしてくれないと気持ち的に治まらないのだが。
「あー……のぼせそうだから先に出るぞ」
「……もうちょっと、入ってようよ」
「いやいや、もう十分だって」
「でも、あったまった方が、風呂上がりの牛乳が美味いし……」
「それも一理あるな……って、ハルト」
「んぅ……? どうしたの、先生……?」
顔を赤くして、フラフラと揺れながら受けごたえをするハルト。
そういえばコイツ、俺がシャワー浴びてる時からずっと湯船に浸かってるような……
「いやいや、お前の方がのぼせてんじゃねえか!」
「ま、待って……もうちょっと、一緒に……」
「いいから出るぞっ! ハジメ~! ハルトがのぼせそうだから介抱してやってくれ~!」
風呂場の扉を開けて、ハルトを抱えて脱衣所に出る。
バスタオルで身体を拭いてやろうとしたところで、ハジメが『扉の前にでもスタンバってたのか?』ってくらいのスピードでこちらにやってくる。
「ハルトッ!? お、おい八雲! 風呂場でナニしてたんだよっ!?」
「いやあ、ハルトの日焼け跡が湯舟の中でこう、密着してな」
「な、何言ってんの八雲……?」
いかんいかん……俺も若干、のぼせているのかもしれない。




