25話 そそそ、そんなんじゃねえし!
ハジメが作ってくれたお菓子を食べつつ、軽く休憩してから勉強を再開。
既に普段の勉強時間よりも多くやっているが、意外にも2人は文句を言わずに机に向かってくれた。
そのまましばらく双子たちの部屋で勉強を見ていると、メリッサさんに呼ばれてリビングへ。
気付いたら夕食の時間になっていたようだ。
「これは……なんというか、豪勢ですね」
「八雲くんがいるから張り切っちゃった」
「へっ、単純なんだから」
「……父ちゃんに言ってやろ」
「アンタら、メシ抜きにされたいの?」
「「…………」」
空腹には勝てなかったのか、無駄に悪態をついていた双子たちが大人しくなる。
「さあ、食べて食べて。おかわりもあるから」
「いただきます」
「「いただきまーす……」」
「あらあら、いつもなら無言で食べ始めるのにどうしたのかしら?」
「う、うるせー!」
「……ふんっ」
俺に釣られて手を合わせた双子たちがメリッサさんにからかわれて真っ赤になっている。
さすがにここは母親に一本だな。
「どうかしら? 八雲くん」
「めっちゃ美味いです。メリッサさん料理上手ですね」
「あら、嬉しいわ~。この子たちったら全然褒めてくれなくて」
「別に、不味いとも言ってねえし!」
「……もぐもぐ」
ハジメは照れ臭いのか、ブツブツと言い訳を呟きながらも食事を続けている。
そんでもってハルトは褒めないっていうか、食事に夢中で無言になってるだけだな。
コイツ、普通に食いしん坊だから。
「そういえば、さっきハジメがクッキーを作ってくれたんですよ」
「あらまあ」
「ちょっ!? や、八雲っ!」
「なんだよ、メリッサさんには秘密だったのか?」
「べ、別にそういうことじゃねえけどよ……っ」
菓子作りをしていることをあまり言われたくないのか、恥ずかしさを誤魔化すためにガツガツと米をかきこむハジメ。
「そんな勢いよく食うと喉に詰まるぞ」
「うるへー! ……うぐっ!」
「ほら言わんこっちゃない」
ハジメに水を渡して背中をさすってあげる。
「……おれも喉に詰まった」
「あらハルト大丈夫? はい、お水」
「……母ちゃんのばか」
ハジメの背中をさすっていると、水を飲みながらこちらを睨みつけるハルトと目が合う。なんなんだ一体。
「ハジメがお菓子を作るようになったのって、去年の年末くらいよね。ハルトが一時期外食できなくなって、洋菓子とかは市販のも食べられなくて」
「……別に、今は普通に食えるようになったし」
ハルトが外食できなくなったというのは、恐らくストーキングババア家庭教師の件があったからだろう。
1番酷い時期は家族の作る料理しか食べられなくて、給食も牛乳くらいしか飲めなかったらしい。
「なるほど、それでハジメがハルトのために菓子を作って……」
「そそそ、そんなんじゃねえし! バスケ部サボって暇だったから気分転換にやってただけだし!」
いやあ、分かりやすいなコイツ。
自分が作ったものならハルトも食べられると思って作ってたんだろうな。
ハルトも今は市販の菓子やフードコートの料理を食べられているから、ガッツリ他人の手作りじゃなければ大丈夫になったのだろう。
「なんつーか……2人ともよくがんばったな。偉いぞ」
「うわっ」
「んっ」
なんとなく褒めたい気分になって、2人の背中を軽くさすってあげる。
「八雲くんは料理できるの?」
「そうっすねえ……まあ、一人暮らしなんで最低限はって感じですね。メリッサさんの料理と比べたらだいぶ大雑把ですけど」
「あらいいじゃない、男の子が好きそうな味付けの料理とか知ってたら教えてよ」
「オレも八雲の料理食ってみたい!」
「……お、おれも」
「ん、そうか? じゃあその内な」
俺の料理っつっても、肉と野菜炒めて焼肉のタレかけて米の上に乗せて終わり、みたいなのばっかなんだけど……
「もう少し、レパートリー増やしとくか」




