18話 先生を満足させてあげるから
「なに? お前らスマホ買ってもらうの?」
「まあなー」
「……中間の結果次第だけどね」
ゴールデンウィークが近づいてきたとある日の家庭教師。
勉強の合間の休憩時間に双子たちの話を聞いていると、ハジメから『今度スマホを買うから連絡先を教えろ』とお願いされた。
「……5月末に中間試験があって、そこで全教科赤点回避したら誕生日にスマホ買ってくれることになった」
「誕生日?」
「……6月12日。中間の結果出たちょい後くらいだから」
「オレも6月12日だぜ!」
「そりゃそうだろ、双子なんだから」
……いや、でもどうなんだ?
もしハルトが23時59分に生まれてハジメが0時過ぎに生まれたら誕生日も変わるのか?
「とにかく中間はマジでガチる!」
「……絶対に赤点回避して、スマホ買ってもらう」
「やる気に燃えてるな」
まあ、スマホを持てるかどうかっていうのは学生にとっては死活問題なところがあるからな。
受験生だからどうとか以上に本気で勉強に取り組むだろう。
それはそれとして、双子だと出費も2倍になるから親は大変だろうな……とはいえ2人で1台のスマホを共有ってわけにもいかないだろうし。
「……それで、さ。先生」
「ゴールデンウィークに、勉強合宿やってくんねえか?」
「は? 勉強合宿?」
なにそれ、高原学校的なやつ?
俺も勉強すんの?
「合宿って……山にでも篭って勉強すんのか?」
「ちげーよ、オレんち! 八雲がウチに泊まんの!」
「……先生に、おれたちの家に泊まりがけで家庭教師をしてもらうってこと」
「ああ、そういうことかー……」
いやいやいや、そういうことかーじゃないだろ。
一瞬納得しかけたけど普通にダメだろ。
「生徒の家に泊まるのは……」
「なんでだよ、いいだろ! お、男同士なんだから……!」
「……ハジメ、なにドモってんの?」
「う、うるせー!」
「……母ちゃんと父ちゃんには許可貰ってるから。後は先生が良いなら、お願いしたいんだけど」
「マジか」
親御さんのオッケー出てるのかよ……じゃあ本当に俺次第じゃん。
「なあ、頼むよ八雲。一晩中、オレに教えてくれよ……!」
「……後悔させないから。ちゃんと、先生を満足させてあげるから」
「お前ら、なに言って……」
「なにって、徹夜で勉強教えてくれって言ってんだけど」
「……ちゃんとテストで結果出して、教えてくれた先生を満足させてあげる」
そういうことね。
んだよ、変な言い方しやがって。
「主語をきちんと伝えないと国語で良い点取れないからな」
「なにワケの分かんねーこと言ってんの?」
「……とにかく、おれたちの勉強合宿の先生やってほしいんだけど」
「あーもう、分かったよ! でも夜はちゃんと寝るからな! 徹夜で勉強したって身に付かねんだから」
「よっしゃ……!」
「……うしっ」
パチンッ、とハイタッチを交わして喜ぶ双子たち。
泊まりで勉強漬けになることのなにがそんなに嬉しいんだか……
と思ったが、まあ今のコイツらの学力を考えるとそれくらいしないと全教科赤点回避は厳しいか。
「お前らの家に泊まるって言ったって、俺が寝る所なんてあるのか?」
「……おれのベッドで一緒に寝ればいい」
「ハルトお前っ……八雲! オレのベッドに寝ていいぞ!」
「お前らのベッドじゃ足伸ばせねえよ」
身長192cmの俺には子供用のロフトベッドはさすがに狭い。
そのうえコイツらと一緒に寝たらギュウギュウになってしまう。
「……ウチの寝室、母ちゃんと父ちゃんが寝てるめっちゃデカいベッドあるよ」
「父ちゃんいないから八雲がそこ使うか?」
「それだと俺がメリッサさんと寝ることになるじゃねえか」
「げっそうだったー!」
「……それはキモいな」
結局、メリッサさんに聞いたら客人用のマットレスがあるとのことで寝床は無事に確保できた。
「へへっ……ゴールデンウィーク楽しみだなあ」
「……先生、徹夜で人生ゲームやろうよ」
「マリパもやろうぜマリパ!」
「勉強合宿だっつってんだろ」




