17話 ……先生、もう帰るの?
「おっと、もうこんな時間か」
双子たちとピザ食ってゲームしてたらガッツリ夜になってしまった。
「……先生、もう帰るの?」
「泊まってけよー」
「いやいや、そういうわけにはいかねえだろ」
帰宅の準備を始めた俺を掴んで引き留めようとするハルトとハジメ。
中学生同士ならまだしも、家庭教師が教え子の家に泊まるのはさすがにおかしいだろ。
「じゃあ寝なくていいから徹夜で遊んでけよ!」
「……桃鉄100年やろうぜ」
「明日月曜じゃん。学校あるだろお互いに」
「サボる!」
「サボるな。あとそんなことしたら俺の家庭教師が終わる」
教え子と朝までゲームして学校サボらせる家庭教師は流石に首切られるって。
……ピザ食ってる時点で既にアウトな気もするけど。
ガチャッ。
「ただいまー」
「ハルト~! ハジメ~! パパが帰ってきたぞ~!」
「……あっ」
「やっべ」
そんな感じで言い合いをしていたら、外出していた両親が帰ってきてしまう。
ヤバいな……こんな時間まで居座って教え子とゲームしながらピザ食ってる家庭教師、流石に怒られるか?
「おや、おやおやおや……!」
「ど、どうも……」
「君が家庭教師の八雲クンか!」
「あっはい」
「はっはっは! いや~噂には聞いていたがタッパがあるねえ!」
リビングに入ってきた男性にガッと肩を掴まれ、バシバシと叩かれる。
なんつーか、運動部のノリだなあ……
「おっと、自己紹介をしなければ! 私の名前は千葉邦重! ハルトとハジメのファーザーさっ!」
「あー、えっと……家庭教師の北条八雲です」
「はっはっは! いや~ナイストゥーミートゥーだね八雲クン!」
「よ、よろしくっす……」
ガッシリと握手をして豪快に笑う邦重さん。
あまりにテンションがグローバルすぎて恐縮してしまう。
黒髪に若干日焼けした肌はハルトに似ているが、性格的にはハジメ寄りだろうか。
「八雲くん、もしかしてハルトたちの面倒見てくれてたの?」
「いや、その……すんません、勉強終わった後も一緒にゲームしたり夕食ご馳走になったりしちゃって」
「全然良いわよそんなの! むしろありがたいわ~!」
メリッサさんに現状を正直に伝えて謝ると、予想していた反応とは真逆のリアクションだった。
「こんな時間まで子供を留守番させるのなんて久しぶりだったし……あ、時間長引いちゃった分のお給料は出すからね」
「いやいやさすがに悪いですよ!」
「はっはっは! ベビーシッターは立派な職業だよ八雲クン!」
「おい父ちゃん!」
「……おれたち、そんなガキじゃねえし」
父親にガシガシと頭を撫でられながら文句を言う双子たち。
あー、俺に頭撫でられてるときもあんな感じなのかな……
「妻から聞いているよ。八雲クンのおかげで息子たちが真面目に勉強してくれるようになったと。さすがシゲの甥、教えるのが上手いんだろうね」
「ナオちゃ……叔父のことを知ってるんですか?」
「シゲとは大学の同期なんだよ。妻のメリッサも一緒でね」
「うふふ、邦重と直重でお互いに『シゲ』って呼んでるのよ。頭悪いわよねえ」
「あはは……」
直重叔父さんからは『知り合いの子供の家庭教師』ということで頼まれたわけだけど、そういう関係だったとは。
「あーっと……それじゃあ、俺帰りますね。邦重さんに挨拶できて良かったです」
「私も会えて良かったよ。仕事の都合上、なかなか家に帰れないからねえ。これからも息子たちをよろしく頼むよ」
「分かりました。そんじゃあハルト、ハジメ。次は水曜な」
「おう、じゃあな八雲!」
「……またね、先生」
ガチャッ……バタン。
「なるほど、彼が八雲クンか……良い家庭教師に巡り合えたじゃないか」
「なあ父ちゃん母ちゃん、今度八雲を家に泊めていいか?」
「……中間試験近いし、勉強合宿したい」
「おお良いじゃないか! 教師付きの一夜漬けとは贅沢だ!」
「一夜漬けは賛成しないけど、構わないわよ。もちろん、八雲くんがOKしてくれたらね」
「よっしゃ!」
「……絶対、OKさせてやる」




