13話 脇持つなバカッ……!
抜き打ちテストの結果でひとしきり落ち込んだ後、ちゃんと気持ちを切り換えて勉強を始める双子たち。
テスト結果がよほど悔しかったのか、いつにも増して真面目に取り組んでくれている。
家庭教師としては非常にありがたいことだ。
「なあ八雲ー、ここ分かんねえ」
「んー?」
ハジメに呼ばれて後ろから問題用紙を覗き込む。
「……八雲って、身長なんセンチだっけ」
「俺か? 192cmだけど」
椅子に座ったまま背後にいる俺を見上げるハジメ。
たしかに、その位置から見上げたら余計に大きく見えるよな。
「うわ……オレより30cmも高いじゃん。なんか落ち込むわー」
「ハジメの身長って……」
「162cm! ハルトより背高いんだぜ」
「1cmしか変わらないだろ……」
ということは、ハルトは161cmか。
まあ、中学生だしまだまだ伸び盛りだろう。
「ちなみに俺は中学3年の時に183cmあったぞ」
「でか!」
「……でっか」
そこから更に毎年3cmずつ伸びて、高3でようやく止まって192cm。
そこまでいったらいっそのこと2メートル超えてくれ~とか考えたこともあるが、1人暮らしをするときにベッドを買いに行ったら中々サイズがなくて困ったので止まってくれて良かったと思い直した。
「いいなー。オレも背高くなりてえ」
「……ハジメ、背高くなりたくてバスケ部入ったもんな」
「じゃあ成果出てるな」
「ハルトより1cmしか伸びてねーから効果ないだろ!」
いやお前、今さっきハルトより背高いって自慢してたじゃねーか。
「192cmかー。なんでも見下ろせて眺めいいんだろうなー」
「見てみるか?」
「へっ……?」
俺は座ったまま羨ましそうにこちらを見上げるハジメの脇に腕を回し、そのまま勢いよく持ち上げた。
「ほら、これが192cmの視界だぞー」
「わっ……ちょっ……!?」
「…………」
はじめを背後から抱えたまま、部屋の中をグルッと回る。
回っている途中でハルトの何とも言えない表情が目に入ったけど、なんか怖いので気のせいということにした。
「ちょっ、脇持つなバカッ……!」
「くすぐったかったか?」
「もういいからっ……お、降ろせ……っ」
俺に脇を持ち上げられてくすぐったかったのか、顔を真っ赤にして抗議してくるハジメ。
「な、なんかスマン」
「あ、謝らなくていいし……っ」
そういえばコイツ、部活のコーチにセクハラされて部活行ってないんだったな……
うわあ、マジで無神経な事しちまった。
「ハジメ、マジで悪かった。こういう軽率なスキンシップはもうしないから」
「は、はあ? 別に、気にしてねえし。心の準備ができてなかったから……」
「そうか……?」
とりあえず、次からはもっと気を付けることにしよう。
男子とはいえ、相手は思春期の中学生なんだから。
「……先生、おれにもやって」
「持ち上げるやつか?」
「……うん」
俺の目の前までやってきて、両腕をこちらに伸ばすハルト。
いや、それだとお互いの顔を向いたまま抱き上げることになるんだが……
「……ん」
「わ、分かったよ……ほらっ」
「あっ……」
とりあえず、ハジメにしたのと同じようにハルトの脇を抱えて持ち上げる。
ただ、ハジメと違ってこっちを向いているので幼児に高い高~いをしているような体勢になってしまう。
「わっ……結構、高いかも」
「ま、回るぞ?」
「うん……」
ハルトを持ち上げたまま、部屋の中をゆっくり回る。
……なんというか、これ景色見えてんのか?
俺の顔しか見えてなくないか?
「ハ、ハルトのやつ……!」
「……ふふっ」
「次っ! 次オレの番!」
「えっ? いやお前、さっき嫌がって……」
「もう慣れた! だからハルトと交代!」
「……ハジメの番はもう終わりだ」
「くっそ~……!」
この後、結局追加で2回ずつ双子たちを交互に持ち上げた。
「いや勉強してくれよお前ら」
――翌日。
「おはよう、北条」
「お、おう庭田……」
「……なんか態勢おかしくない?」
「ちょっと、家庭教師で両腕が筋肉痛でな……」
「肉体労働でもやらされてるのかい?」




