55話:人のパンって美味しそうに見えるよね
普段賑わっているはずの購買は閑散としておりお陰ですんなりと昼食を買うことに成功した。
「はぁー、エビカツサンドうめぇ〜。この噛みごたえのあるフランスパンにぷりっぷりのエビカツとシャキシャキとしたキャベツ、それでもって仕上げにこの甘辛くピリッとした特製ソース!これはまじで絶品だわ……。」
毎日シェフの料理を食べて舌が肥えているだろうに急に隣で食レポを始めたアーサーを軽く無視して自分も購入した特製クリームパンを仮面を少しずらして頬張る。
(うわ、クリームが濃厚。パンももちもちしててすごく美味しい……!)
普段は購買のパンは人気すぎてすぐ売り切れてしまうため買えること自体がレアらしいが、今日はほとんどの生徒が戦闘中というのもあって楽に好きなパンを買うことができた。
「あ、やべ。見つかった。」
一応周囲を警戒しながらパンを食べていると校舎奥から歩いてきた先輩たちと目が合った。先輩たち4人は俺たちの方を指さして何かを話したあと、そのままこちらに向かってきた。
「お前らその制服1年だな?呑気に飯なんかくいやがって。これはお遊びじゃねぇんだよ!要らねえなら俺たちがそのバッジ貰ってやる!」
「すみません、どーしてもお腹減っちゃって。もうちょっとで食べ終わるんであと2、3分待って貰えません?」
「ふざけるな!お前たちを倒して本戦出場を決めてやる!」
そういうと上級生たちは戦闘態勢に移り、次々と攻撃を仕掛けてきた。
「ですよねー、リン、ちょっと俺のパン持ってて!」
俺の返事を待たずに自分の食べかけのパンを俺に持たせると素早く剣を抜き上級生たちの相手をし始めた。いいとは言ってないがゆっくりパンを食べられるのでこのままアーサーに任せることにする。
上級生たちの職業は見たところ双剣士に槍使い、銃使い、精霊使いのようだ。精霊使いの彼女はハクさんと同じくエルフのようで、風の精霊を使役している。
この上級生たち4人はこれまで着実にバッジを集めてきていたようで、あとは人一倍うるさく喚いている双剣士と、その横で静かに槍術を繰り出す槍使いがひとつずつバッジを獲得すればあとはひたすら隠れて16時を待つだけという状況だそうだ。
ちなみに、もし上級生が俺たちをこのまま倒した場合、俺とアーサーが集めたバッチはどうなるかと言うと、上級生たちの手柄になることはなくそのまま学園に回収される。そのため、いくらバッジを多く持ってるやつを倒しても得られるバッジは結局1個。さらにいえばバッジを多く所持しているということはそれだけたくさんの生徒に勝ってきたという証であり、得られるバッジが1個だけなのであれば対戦は避けるのが無難となる。
まあ俺たちがバッジを何個持ってるかなんて相手には分からないし制服の色で見れば俺たちは下級生で普通ならば勝てる相手。挑まない手はないということだろう。
(はぁ〜、クリームパン美味しかった。もう一個買っても良かったな…。…………アーサーのエビカツサンドも美味しそうだな……。ちょっとだけ……)
双剣士と槍使いの息のあった攻撃を屁でもないかのように次々と交わし、隙をついていやらしいところに飛んでくる銃弾も剣で弾き飛ばしながら対応している。精霊使いの生徒も風の精霊を召喚し、後方から3人を支援しつつ風魔法で攻撃をしているがまだ使役のレベルが低いようで簡単な魔法しか使えておらずアーサーには相手にされていない。
逆に双剣士と槍使いは手数も攻撃力、速さも申し分なく息もピッタリとあっているため普通の生徒であれば攻撃を防ぎ切るのは至難の業だろう。ただ、彼らが不運なのはこれだけ生徒がいる中でアーサーに勝負を挑んでしまった点だ。
アーサーはリンとのダンジョンツアーで幾つものレベルアップによって飛躍的にステータスが向上している。さらにはずっと猛スピードで飛行しながら魔物を切り伏せていたため、動体視力と剣術が大幅にアップし、同レベルはもちろんプラス10程度のレベル差をものともしない実力を身につけている。
「くそっ、なんで攻撃が当たらないんだ!!」
「……っ!」
「俺も負ける訳には行かないんで、倒させていただきます!」
(はぁ〜、うまっ。もう一口……。美味しすぎる……!あともう一口だけ……。)
アーサーはまず双剣士の左手の剣を聖剣グラムで思いっきりはじき飛ばし、そのま右手の剣も大きく弾いて体勢を崩させ、がら空きになった上半身に斬り掛かる。が、槍使いが間一髪自身の槍で代わりにアーサーの剣を受け止め双剣士の脱落を防いだ。そして、銃使いと精霊使いもアーサーの背後を狙って攻撃を放つが、ギリギリまで引き付けて、相手の槍に聖剣グラムごと全体重を乗せて真上に飛び上がり回避。代わりにターゲットを失った銃弾と風魔法が槍使いと双剣士を襲う。
「くっ!」
「!」
「あ、ごめん!わざとじゃないんだ!!」
「すみません!!」
ダメージ的には1割もなかったが、お陰で一瞬隙ができ、背後から双剣士に袈裟斬りを行う。続けざま腰あたりを真横に一線。バッジがなければ上半身と下半身が泣き別れになる攻撃に一気にダメージが9割を超え気絶。
槍使いも体の向きを変えぬまま後ろ向きにアーサーに向かって槍を突き出してくるがアーサーはそれをひらりと交わし槍使いの首元を一閃。槍使いも同様に気絶。残った2人もアーサー自慢の瞬発力で瞬時に近づきそれぞれ一撃で気絶させた。
「ふぅー!終わったぁ〜。やっとご飯の続きだ!」
バッジを集めるのもそこそこに剣を背中のケースにしまいながらリンのもとへ。
「リン、パンありがとな!ってあれ、パンは?」
「…………えへっ。」
その後はもう1回購買に寄ってエビカツサンドと他にも何種類かパンを買い、リンからも少しずつパンを貰いながら黙々と咀嚼するアーサーの映像が記録された。
【バッジ数】
リン62個
アーサー63個




