54話:吹き矢
「あー腹減った〜。」
「もう昼すぎだもんな。」
現在時刻は13時20分。お昼時を少しすぎたくらいの時間だ。
「他の人たちは昼飯どうしてるんだろうな。」
「さあ、戦いでそれどころじゃないんじゃないか。それか戦闘の合間に食べてるとか?」
ぐーきゅるるるるー
「……購買って空いてるかな?」
「行ってみるか。」
つい先程毒魔法で倒した先輩の上から立ち上がりアーサーと共に購買を目指して歩き出す。その間もずっとアーサーのお腹からは切ない音がなり続けていた。
「あ!」
「なに?」
「あれ、もしかしてギルダたちじゃないか?」
アーサーの指差す方を見てみると確かにギルダとメイ、リュークの3人がいた。
「アイツらも参加してたんだな。」
「ていうかヤバそうじゃね?上級生たちに思いっきり囲まれてるじゃん。助ける?」
「……いや、出場権をかけた戦いなんだし手助けはよくないだろ。ギルダたちも俺たちに助けられて残っても喜ばないだろうしな。」
「んー、まあそれもそっか。」
上級生5人に対してギルダたちは3人、実力差はもちろんのこと人数でも不利な状況だ。上級生もそれがわかっているのかどこかニヤニヤとした下卑た笑みを浮かべている。
(上級生になると性格破綻者しかいないのか?)
アーサーと2人、影から暫く様子を見ていたが5人のうち特に背の高い上級生がリーダーらしくすこぶる性格が悪い。ギルダたちの顔を執拗に狙っては驚いた顔や恐怖に染まった顔を見てゲラゲラと笑っている。ほかのメンバーも敢えて手や足を狙ってダメージを抑え必死になって防ごうとしている姿を楽しんでいる。
(下衆だな。わざと戦闘を引き伸ばして楽しんでいやがる。)
「おい、リン。やっぱあれ倒してきていいか?」
「ちょっと待って。」
「ん?何してるんだ?」
今日は毒魔法を色々試してみようと思い、実は様々な道具を収納袋に入れて用意してきていた。そのうち、吹き矢と大、中、小の針を何本か取り出す。
「……吹き矢?」
まずは極細の針を吹き矢にセットし、上級生のうち1人を狙って発射する。
「うぎゃっ!」
「なに?」
「なんだ、どうした?」
針は見事ターゲットのおしりにプスッと刺さり、悲鳴を上げていた。ほかのメンバーやギルダたちも急に上がった悲鳴に驚きそちらに目を向けている。
「いや、なんか急におしりが……」
針が刺さったおしりを見ているターゲットを放置して次に狙いを定めようとしているとアーサーから声がかかった。
「おい、何ひとりで楽しそうなことしてんだよ。それ、もう一個ないのか?」
アーサーにねだられた為、予備で持っていた吹き矢と針を何本か渡す。
「よっしゃ!じゃあ俺ちょっと別のとこから吹いてくるわ!」
そう言って吹き矢と針を持って楽しげに移動していくアーサー。アーサーにはさっき吹いたのと同様何も塗っていない針を渡した為今手元にあるのは朝仕込んでおいた毒魔法をかけた針だ。事前に毒魔法を仕掛けておいても同じ効果を発揮するのかどうかを試そうと思っていた為ちょうど良かった。
「なんだこれ、針だ!どっから飛んできたんだ!?」
最初のターゲットとなった上級生が針を抜き当たりを見回す。それに合わせて他の奴らも周囲を警戒しだした。
「ギャッ!くそ、また針が飛んできた!」
「いってぇ!おい、あっちだ!あっちから飛んできたぞ!」
「ウギャッ!おい、2本目!俺だけ多くないか!」
アーサーが次々と針を飛ばしているようだ。それも建物の影に隠れて場所を移動しながら命中させている。バッジのダメージも地味に増加してるのがまた面白い。
「ギャア!だから3本目ェ!なんで俺だけ!?しかも針太くなってるし!!」
反応が面白いからか最初のターゲットに多めに針を飛ばしているようだ。
(吹き矢しながらウインクを飛ばしてくるな!笑っちゃうだろ!)
アーサーがまるで忍者のようにシュタタタタと移動しながら上級生のおしり目掛けて針を飛ばし、その合間にバチコーンとウインクを飛ばしてくるため笑ってしまってなかなか吹き矢ができない。
(ふぅ〜、落ち着け。アーサーはもう見ないようにしよう。)
実験に集中するため、息を整えて狙いを定める。
(アーサーに狙われすぎてちょっと可哀想だからあの人から刺してあげよう。)
ちょっとした親切心で最初のターゲットに狙いを定めて針を吹く。
「ギャッ!だから俺だけ多いってぇ!って、あ、れ……?」
針がおしりに当たって約3秒ほどで地面に倒れ伏した。どうやら事前にかけておいた毒魔法でも効果はほとんど変わりないようだ。
「なんだ、どうした!?おい、ジミー!」
慌てふためく上級生たちに次々と針を吹いていく。そして最後まで残ったのはリーダーらしき上級生。
「くそっ!どこだ!?隠れてないで出てこい!!」
焦ったように辺りを見回すがアーサーが色んなところから吹いているため俺たちがどこにいるか把握できていないようだ。ギルダたちは何が起こっているかわからず、3人で肩を寄せ合いながらポカンとしている。
ターゲットが残り1人になったからか、アーサーの猛攻が上級生のおしりを襲っている。
「いって、いってぇ!!……ギャア!!おい、ケツばっか狙ってんじゃねぇよ!っってぇ!!」
アーサーの手持ちの極小針が無くなったのか今上級生のおしりに刺さったのは4本とも中ぐらいの針。大きさ的には裁縫で使う針と同じくらいだ。おそらくアーサーがあと持っているのは針と呼んでいいのか、矢と同じかそれよりちょっと太いくらいの針だ。
今ちょうど俺と真反対にいるアーサーの目がキラキラと光っている。とても楽しそうだ。
「どこだ、どこにいる、何処から狙っていやがる!!」
炎魔法の適性があるらしくクルクルと体の向きを変えながら手当り次第に炎玉を放っている。仲間が正体不明のやつに次々と倒されて軽くパニックになっているようだ。アーサーはじっと狙いを定め自分の方にそいつのおしりが向くのを待っている。
(あ、やばい目が合った。)
「お前かぁ!!」
壁から少しだけ覗いた瞬間にそいつと目が合った(仮面をしているので目が合ったように感じただけ)ので軽くペコリとお辞儀をしておく。
(ご愁傷さま。)
俺と目が合ったということは、俺と真反対にいるアーサーからは……
「お前の仕業だな、よくも……あっっふん♡」
ズカズカとこちらに向かって早足で向かってきていたがその瞬間アーサーが吹き矢を吹き、極太の針はそいつのおしりの中心、つまり本来であれば出すしか役割がないところにすごい勢いで刺さって(入って)しまった。
「「「「「あ、」」」」」
アーサーの針には毒魔法はついていないはずだがそのままそいつは膝から崩れ落ち地面にパタンと力なく倒れ込んでしまった。
遠目から見てもそいつの耳や首まで赤く染まりピクピクと体が痙攣しているのがわかる。
(色んな意味でいったな。)
その場にはなんとも言えない空気が漂い、さっきまで一方的にいじめ?られていたギルダたちもそいつに哀れみの目を向けている。
(まあ、因果応報、自業自得ということで。)
実は俺の方にも毒を塗布済みの極太針が1本残っていたのでギルダたちに見つからないようにゆっくりとそいつの足元が見える方に移動し、もったいない精神で針を吹いた。
「あぁぁぁんっ!」
どこに刺さったかまでは言わないが、そいつは特大の声を上げ陸にうちあがった魚のように身体をビッタンと跳ねさせ、その後は痺れ毒のせいか何のせいか分からないがピクリとも動かなくなった。
俺とアーサーは静かにハイタッチをしそのままそっとその場を立ち去って当初の目的である購買に向かった。
【バッチ数】
リン 62個
アーサー 59個




