52話:開幕
「じゃ、やりますか!」
開戦の合図と同時に視界の先にいた生徒たちに向かってアーサーが走り出す。制服の色からして最上級生のようでどうやら向こうも4人でパーティーを組んでいるらしい。
「その色、1年か!単騎で向かってくるとは身の程知らずめ!」
向こうもこちらに気づいたようで迎撃の構えを取る。さすが上級生といったところで隙がほとんどなく、魔法職っぽい男子生徒が無詠唱で風刃を放つ。同時に弓をかかえた生徒がノータイムで3射連続で放つ。
至近距離からの魔法と弓の攻撃をアーサーは身体を捻ることで難なく躱したがそれを狙っていたかのように短剣を両手に持った生徒が後ろから襲いかかる。
「そう来ると、思ってましたっ!」
それも予見していたアーサーは首元を狙ってきたナイフを地面に手をついて身体をかがめることで避け、相手の着地のタイミングを狙って足払いをかけた。それにひっかかり相手がバランスを崩した一瞬の隙を狙って背負っていた聖剣グラムを素早く抜き取りそのまま一閃。通常であれば胴体と下半身がなき別れになるほどの一撃に一瞬でダメージが90パーセントを超え相手は強制的に気絶。
続けざま近くに迫ってきていた剣士の生徒の一撃を剣で軽く受け流し左脇腹に一太刀浴びせる。
「やっぱ重いな。振り遅れるや。」
剣が体に当たる直前に反対側に飛びのいたのと、アーサーも剣に上手く体重を乗せきれなかった事が幸いし上級生のダメージは5パーセントほどに留まっている。
「くそっ!1年の分際で調子に乗るなよ!」
だが、1年からダメージを受けたことがプライドを傷つけたのか上級生の顔から嘲るような笑みが消え、剣が1段階速くなる。それに合わせて風魔法や矢も後方から息付く間もなくアーサーを襲う。どうやら下級生と思って手を抜いていたらしい。アーサーはそれに対し剣で受けたり体を捻って避けたりと防戦一方。
「ハハハ!どうだ、手も足も出ないだろう!これが上級生と下級生の差だ!」
「レート!遊んでないで早く片付けてよ!パーティー全員で40個集めないといけないんだから!」
悪役のようなセリフを吐く上級生だが、その顔色はだんだん悪くなっていく。
「レート?何してるの、早くバッジを奪ってよ。僕の魔力もアンナの矢も限りがあるんだよ?」
「うるさい!分かってる!」
レートと呼ばれた剣士の上級生は既に本気のようで目にも止まらぬ速さで攻撃を加え続けているが、アーサーはそれらを全て剣で受け流している。また、隙をつくかのように飛んでくる矢や魔法に対しても後ろに目でも付いているかのように最小限の動きで躱し、逆に流れ弾がレートに当たるように仕向けている。
「ふむ、こんなものか。やっと馴染んできた。」
「何を言って……」
「じゃあ、そろそろ終わらせましょうか!」
そういうとアーサーはレートの持つ剣を一瞬で弾き飛ばしそのまま頭上から剣を振り下ろした。そしてレートは恐らく何が起きたか分からないままダメージが9パーセントを超え気絶。
「レート!キャッ!」
「え、うわっ!」
続けて少し離れたところにいた上級生2人の所に向かいそれぞれ一撃で撃破。これでアーサーはバッジを4つ獲得したことになる。
「お疲れ、思ったより時間かかったな。」
「あー、準備運動的な?」
ダンジョンから出てかかっていた負荷(ステータス10分の1)が無くなったのとダンジョン内でレベルアップした分で一気に身体が軽くなり、ずっと動きに違和感があったようだが今の一戦で調整できたようだ。
「それよりいいのか?これで俺が1歩リードだぞ?」
「問題ない。これくらいすぐに取り返す。」
バッジを回収しながらニヤッとした顔を向けてくるアーサーを軽くあしらって次のターゲットを探して歩く。と、校舎の影からまた上級生の5人組パーティーが出てきた。
「じゃあ俺も試すとするか。」
俺は獲得してからほとんど試せていなかった毒魔法を使用することにした。魔力は充分あるし5人だけなのでユニークスキルは使わずいく。
まずは毒玉を5つ生成し上級生に向かって放つ。こちらに気づいた1人が慌てて剣を構え俺の攻撃を斬る。だがそれは悪手だ。一瞬で5つとも全て斬り伏せた剣の腕前は賞賛に値するが、戦闘は結果が全て。頭上を狙って放った毒玉を全て斬ってしまった為に頭からもろに毒を浴び、斬った者はもちろん固まって移動していたほかの4人にも少なくない量の毒がかかりその場に崩れ落ちる。
「な、にを……」
「おまえは……!」
「安心してください。ただの痺れ毒ですよ。命に別状はありません。まあ当分は動けないでしょうけど。ということでバッジは頂いていきますね。」
(ふむ、確かこの先輩は腕だけにしか毒がかかってないように見えたが全身痺れてるみたいだな。毒は即効性で体の1部にでもかかれば全身を痺れさすことが可能ということか。)
先輩たちをそれぞれ観察しながら胸についているバッジを回収する。意識がある分、バッジを取ろうとするとものすごい顔で睨んでくるが身体は痺れて動かせずただそれだけなので害はない。普段だったらニコッと微笑んでおくが面をつけている今微笑んでも相手には見えないので淡々と先輩を仰向けに転がしてバッジを取っていく。
「うわ……」
バッジを回収し終えて俺の様子を見に来たアーサーがなんとも言えない顔でこちらを見てくるが気にしない。
予選はまだ始まったばかりだ。魔法を試すいい機会に胸を踊らせながら次のターゲットを探した。
【バッジ数】
リン 5個
アーサー4個




