43話:まずは燃やしてみましょう。
「実は、さっき気づいたんですがこのダンジョンに入ってからレベルアップした分はどうやらデバフが適応されていないみたいなんです。」
「それは本当か!?」
「はい、1度ダンジョンを出て戻ったらどうなるかは分かりませんが、さっきから少しずつ身体が軽くなっているので間違いはないかと思います。」
(普通は鑑定士じゃないかぎりステータス画面は見えないからこう言うしかないよな。身体が軽くなってるのは事実だし。)
「それは気づかなかったな...」
「レベルアップするほど倒せてなかったしね〜」
「でもそれでパーティーを組むのとなんの関係があるんだ?」
みんなは俺の話を聞いて提案に合点がいったようだが、ゼクトだけはわかってないようで顔にハテナを浮かべている。
「今、俺が森を焼いてるんでほとんどの経験値は俺たちパーティーのみに均等に配分されてるんですよ。」
まだ納得がいってないようで首を傾げている。
「だからこそ俺たちは結構レベルが上がっているんですが、クリスさんたちパーティーは森から逃れてきた魔物の経験値しか入らないのでなかなかレベルアップしにくいと思うんです。」
ここまで聞いてやっと俺の言いたいことがわかったのか耳をピンと立てている。
「でもパーティーを組めば経験値も均等に配分されるんで、クリスさんたちもレベルアップして今より戦いやすくなると思うんですよね。」
「でも、いいのか?お前たちはその分、得られる経験値が少なくなるし、最初にパーティーを組まないと言ったのは...俺だ。」
クリスは下唇を噛んで下を向き、その拳は固く握られて震えている。ほかのメンバーたちもそれぞれバツが悪そうな顔をしている。昨日も謝ってくれたのにまだ気にしていたようだ。
「構いませんよ。それに昨日みたいな状況になった時、一人一人のステータスが少しでも高い方が戦いやすいでしょうし。」
ここまで黙って俺の話を聞いていたアーサーとミホーク先生も快く頷いてくれた事で俺たちは全員でパーティーを組むことにした。これで一人あたりの経験値は10分の1になる訳だが、このダンジョンは魔物1匹あたりの経験値が桁違いに多いのでこの調子で殲滅していけばまだまだレベルアップできるだろう。もともとレベルが高いであろうクリスたちも数回はレベルアップできるはずだ。
(ここは30階だから階層ボスが出るはず。どんなボスか分からない以上少しでもステータスをあげておく必要がある。最悪ステータスが足りなそうであれば魔物のリスポーンを待ってレベル上げに専念するのもあり...かな。)
「すまない。恩に着る。」
律儀に頭を下げてきたクリスに続いてほかのメンバー達も頭を下げる。ゼクトは俺を抱えてるからかさっきからずっと頭を撫でてくる。
「気にしないでください。それよりもうこの近くには魔物は居なさそうですし次の所へ移動しましょう。」
俺の言葉に従って俺たちは次のエリアに向かった。もちろん俺はゼクトに抱えられたままで。ここまで来るともうこれがデフォルトになって逆に落ち着く。
「ん?」
「どうした、ゼクト。」
そろそろまだ燃やしてない範囲が見えてくると言う時にゼクトが耳をピンと前に向けて立ち止まる。不審に思ったクリスが声をかけるとゼクトは瞳孔をキュッと細くし、前方を注視する。
「なんだ?この音...?」
俺たちも耳をすましてみるが何も聞こえない。ゼクトは獣人のため、人が聞こえない音も聞き取れるようだ。
「何か、無数の何かがひしめき合ってるような...。音的に今までの魔物の比じゃないくらいの数だ。水音?にしては何か質量がある...。とにかく、あの森の中を埋め尽くすほどの何かがいる!しかも今もどんどん増えていってるみたいだ...!」
音が気持ち悪いのか耳をぺしゃんと倒してすごい嫌そうな顔をしている。
「でも〜どれだけいたとしても〜リンくんが燃やしたら1発じゃないの〜?」
「それはそうなんだが...多分だがあの森の中に広大な沼地が広がってるようなんだ。そしてそこから何かがどんどん増えていってる。だからその沼地をどうにかしないとキリが無さそうだ...!」
(沼地か...炎と相性悪いな...。)
「とりあえずまた燃やしてみるので近くまで言ってもらっていいですか。」
ゼクトは耳をペシャンとしながらも、俺の要望通り森に近づく。ほかのメンバーは俺の周囲を囲むように布陣している。
「じゃあ歌いますね。」
そう言ってユニークスキル"Fire"を発動し、これまで通り森を焼き払う。
(...あれ、おかしい。経験値が増えない。)
今までなら燃やし初めてすぐステータス画面の経験値のところがどんどん増えていたのに今回は全く増えない。
ゼクトの話では森の中には隙間がないくらい魔物がいるとの事だったのにこれでは魔物がいないみたいだ。
(もしくは俺のユニークスキルでも1匹も倒せていない...?)
そんなことを考え始めた時、炎の中から次々と何かがあらわれはじめた。




