42話:提案
S級ダンジョン2日目。
今日も俺たちは景気よく森を焼いて回っている。昨日の反省も踏まえて話し合った結果、やっぱりこの方法がいちばん効率が良いし危険も少ないとの結論に至った。魔物から見つかりやすくはなるが不意打ちで攻撃される恐れが無くなるのがいちばん大きい。今のステータスでは少し攻撃を食らっただけで重症は必至だ。
そのため俺が魔物ごと森を焼いてたまに出てきた魔物をみんなが狩るといった流れで今日も攻略を進めている。
ただ昨日と違う点が1つ。
今日はユニークスキルを使っている最中もずっとゼクトに肩車をされているというところだ。ユニークスキルを使っていると言ってもただ歌っているだけなのでほとんど体力は使っていないのだが、昨日俺が倒れたことと、このダンジョンでの要が俺ということもあってできるだけ体力を温存させよう、ということらしい。まあ、なぜ昨日みたいに抱っこではなく肩車かと言うと抱っこではゼクトの手が塞がって万が一の時に戦えないからである。
今この瞬間も配信しているので全世界に見られているのはとても恥ずかしいが、いい点もある。
1つ目は高身長のゼクトに肩車されていることでより遠くの森まで見えるようになったため、1回の使用でほんの少しだが昨日より広範囲の森を燃やせるようになったことだ。
そして2つ目はゼクトの耳に触り放題という点だ。どうしても手を頭に置かないといけないので必然的に掴むのはゼクトの耳になる。そのためこのモフモフふわふわの耳を四六時中触っていられるのだ。
「リン、ご機嫌だな。そんなに俺の耳が気に入ったのか?」
昨日よりアップテンポで歌う俺にゼクトが耳をピルピルさせながら尋ねてくる。歌っていて答えられないので代わりにぎゅっとゼクトの頭に抱きつくとゼクトがグルグルと喉を鳴らす。
「グルル、抱きつかれるのも悪くないな!」
「ちょっと!ゼクトばっかりずるいわ!リンくんお姉さんのところに来てもいいのよ!」
「いやいや、私のところにおいで。私が一生養ってあげよう!」
「お前ら集中しろ!魔物が来てるぞ!」
「ふふ、リンくん大人気だね。」
火だるまになりながら襲いかかってくる魔物たちを俺を覗いた3人1組で撃破しながらダンジョンを進んでいく。
ゼクト(リン)とアーサー、シリネで1チーム、クリス、ミホーク、ハクで1チーム、ローズ、シュベール、ディクトルで1チームといった組み分けだ。
朝、組み分けをした際にハクがだいぶ駄々を捏ねていたがまたディクトルによって制裁を与えられていた。
今もクリスのチームからジリジリとこっちに寄ってこようとしているが別チームのディクトルが拳を握るとピャッと自チームの方に戻って行った。
隙あらばこっちに来ようとするハクとそれを面白がってのほほんとしているミホーク先生にそろそろクリスの血管が切れそうだ。さっきからピキピキと額に上がる青筋がクリスの怒りを表している。
今も絶賛配信中のため視聴者はそんなやり取りも楽しんできるようだ。視覚的にもたまに森の中で爆発を放っており、魔物が打ち上がっているので飽きは来ないだろうし、エンターテイメント性もクリスたちの会話で保たれているので今も次々とコメントが流れていっている。まあ、こんな会話を繰り広げてはいるが実際はだいぶ無理をして戦っているのでみんなコメントを読んで返す暇はないのだが。
ただそれでも視聴者の数もどんどん増えているようで時折ミッション達成のポップアップが出ている。そして今日気づいたのだが、このダンジョンに入ってから上がったステータス分は10分の1のデバフが適応されないようだ。そのため、ポップアップが出る度に少しずつ身体が軽くなっていっている。
(昨日から順調にレベルアップもしてるしやっぱS級ダンジョンは最高だな。)
見える範囲の森は全て焼き、魔物も倒しきったのでまた移動を始める。
(魔物はほとんど俺が倒してるからアーサーと俺とミホーク先生は順調にレベルを上げてるけどゼクトさんたちはもともとレベルも高かったしステータスは上げれてないんだよな...。)
クリスたちを見るとそれぞれ大きい怪我はしていないものの、身体にいくつか傷を負っており息も切らしている。ゼクトも俺を担ぎながらのため肩が上下し息も少し苦しそうだ。
「どうした、しんどいのか?」
息を吐いて汗を拭っているクリスをじっと見ているとそれに気づいたクリスが声をかけてきた。その言葉を聞いて他の人たちもこちらを心配そうに見てくる。
(初対面はあんなだったけど、この人たちもちゃんといい人なんだよな。)
ゼクトも肩車よりは胸に抱く方が俺の負担が少ないと考えたのか俺を肩から持ち上げて昨日と同じように左腕で俺を抱えた。
「やっぱこっちの方がいいか?」
額に汗をかきながら少し眉を下げて顔を覗き込んでくる。他のメンバーも近くに走りよってきた。
歌ってるだけの俺より動き回ってる自分たちの方がしんどいだろうに、こちらを気遣ってくる姿に、俺はひとつ提案をすることにした。
「このダンジョンにいる間だけ、全員で臨時パーティーを組みませんか?」




