44話:燃やしてダメなら刻みましょう。
「なんだあれ?」
炎が逆光になりシルエットしか見ることができないが何か丸いものが上下に飛び跳ねながらだんだん近づいてくる。
アーサーが日差しよけのようにおでこに手をかざして目を細めるが、もともと森からだいぶ離れたところからユニークスキルを使ったというのもあり魔物の正体が分からない。
「なんか見た事あるような...。」
クリスたちも目を凝らして前方をみるが未だに正体が掴めていない。そうしている間にも魔物たちは少しずつ飛び跳ねながら距離を詰めてくる。
(あれはもしかして...)
「スライムだ!」
魔物の正体はE級ダンジョンでよく見ていたスライムだった。しかも数もそうだがその大きさも半端ない。人一人を余裕で飲み込めるほどの大きさのスライムたちがじわじわと近づいてくる。
「スライムを見るのはいつぶりでしょうか。」
「大きすぎて気持ち悪い〜」
囲まれる前にと各々がスライムに攻撃を仕掛けるが、やはりE級ダンジョンのスライムとは耐久値が桁違いなのか、ことごとくクリスたちの剣を弾き飛ばしている。
「うわっ!」
アーサーもスライムの中心に位置している核を狙って上段斬りを仕掛けるが剣はスライムの体をたゆませるだけですぐに体ごと跳ね返されていた。
「なんだあの体!めっちゃゴムみたいなんだけど!」
跳ね返されたアーサーが俺とゼクトの横に着地し、すぐにまたスライムに斬りかかるが何度やっても剣はささらず跳ね返されるばかりだ。
クリスたちはアーサーよりも攻撃力が高い分、一応傷はつけられているがそれでも核までには届いておらず1体を倒すのに十数回剣を奮っている。
魔法職も奮闘しているが、魔力が下がっているため乱発はできていない。しかも炎魔法と水魔法は効かないようで使えるのは風魔法くらいだ。
ゼクト曰く、俺たちが倒す数より沼地から生まれるスライムの方が多いため、このままだとスライムに取り込まれるのも時間の問題だそうだ。
「リン〜!そろそろ炎はいいんじゃないか?ちょっと、マジで、スライムの数がヤバい!助けてくれ〜!」
スライムに取り囲まれて右往左往しているアーサーからヘルプが入ったところで、あらかた森を焼き付くし、スライム以外の魔物は倒しきったため、俺はユニークスキル"Fire"の使用をやめ、"Wind"に切り替えた。
風刃をありったけ発動しアーサーやクリスたちを襲っているスライムに優先的にぶつけていく。
やはり耐久力がE級とは桁違いなのか1発では核まで届かず倒せない。そのため、2発、3発と続けて攻撃を当てスライムを倒していく。
大体1匹あたり3発前後で倒せている。倒すのに時間がかかるだけあって経験値も美味しい。10等分しているのにE級ダンジョンのスライムの何倍もの経験値が入ってきている。
「ふい〜、助かったぁ〜!」
スライムに埋め尽くされていたアーサーが全身にぬちょっとしたものをまとわりつかせながらこちらに近づいてくる。
「おいおい、アーサー、なんか濡れてないか?」
アーサーの見た目が濡れそぼった犬のようにみすぼらしくなっていたためゼクトが思わず声をかける。
「なんか、スライムにまとわりつかれた時に粘液をめっちゃ付けられたんですよね〜。ベタベタして気持ち悪い...」
おそらく食べられかけたのだろう。ちょっとあまり近づきたくないくらいぬちょっとしている。あとで水魔法で洗ってやろう。
「リンくーん!ごめん、こっちもお願いできるー!?」
ちょっと離れたところからシリネが声をかけてくる。そちらに目を向けるとシリネやクリスたちもスライムに襲われかけていた。
まとわりつかれても直ぐに死ぬことは無いが、長時間そのままだとスライムから出される謎の液体で体ごととかされてしまう。だからスライムの体液が付着しているアーサーも危険かと思われるが、スライムが死ぬとその体液も効力は無くすらしい。今はただのぬちゃっとした粘液だ。
シリネたちの周囲のスライムも次々と倒していき、いったん近くのスライムは全て倒し終えた。だがゼクトによると今も沼地から次々と新しいスライムが生まれているそうだ。
(ふむ。)
「リンくんがいるとあっという間ですね。」
「助かったわー、リンくんありがとう!」
「だが、沼地をどうにかしないことには今の状況の繰り返しになるだろう。」
ハクやシリネ、クリスが後方から合流する。ミホーク先生もその後ろに続いているが4人とも少しずつ服が濡れている。どうやらスライムにくっつかれた後だったようだ。
「いや〜、酷い目にあったね〜。服がびちょびちょ〜。全部脱ぎたいわ〜。」
胸元からおしりまで謎の粘液でびちょびちょになったローズが人差し指と親指で胸元の服を引っ張りながらとぼとぼ歩いてくる。見た目がだいぶ卑猥な感じになっており目のやり場に困る。コメント欄はお祭り騒ぎだ。
「今は我慢しろ。クリスが言うようにまずは沼地の対処が優先だ。」
「じゃが、どう対処する?ゼクトが言うにはだいぶ大きいんじゃろ?」
ローズに比べると身奇麗なシュベールとディクトルも集まってきた。まだスライムの第2陣が寄ってくるまで時間があるので沼地の対処法について全員で頭を悩ませる。
「リンくんは何かいい案はあるかい?」
ゼクトの胸に頭を預けてその様子をボーッと見ているとミホーク先生から声がかかった。
それを受けてみんなの視線が俺に集まる。みんなどこか期待したような表情だ。
(そんな期待されても困るんだが...)
「いい案はないですけど、提案はあります。」




