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エゴイストたちの愛が重い 〜嘘つきたちの甘い包囲網〜  作者: ぺんなす


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繋がった痕

一限が終わり、二限が始まるまでの休み時間。その時間をおれは今、みつきちゃんと過ごしている。至福の時間だ。うん、毎日これでいい。みつきちゃんもそう思ってくれてるよね、きっと。

学内にあるちょっとした休憩スペースのテーブルベンチ。その向かいの席に座るみつきちゃんを見つめる。みつきちゃんは、「うーん…」と唸りながら少しだけ唇を尖らせて、自分の手をじーっと見ていた。

「みつきちゃん、どうしたの?」

「うぅ…今日ね、ハンドクリーム忘れちゃったの」

寝坊でもしちゃったのかな。そうだとしたら……そこまで考えて、思考を止めた。これ以上は顔に出ちゃいそう。寝起きのみつきちゃん、いつか見せてね。

なんとか頭を切り替えて

「おれのハンドクリーム使う?めっちゃいいよ」

カバンからいつも使っているハンドクリームを出した。

「え?いいの?」

「うん。あ、おれが塗ってあげる。手出して」

言いながら、みつきちゃんに近づいて、隣に座った。

みつきちゃんの手をそっと取る。逃げられないように。

「えっと、こう…?」

「そう。そのままじっとしてね」

「うん」

手ちっちゃくてかわいい。改めて見るとおれの手とは全然違う。骨ばってないし、柔らかい。あと…なんか、いい匂いしそう。……あ、今この手の匂いを嗅いだらみつきちゃんの匂いがするのかな。シャンプーや、柔軟剤の匂いとは違う、本当のみつきちゃんの匂い。

────────うん、やめよう。これ以上はとってもよくない気がする。一度無心になってから、みつきちゃんの手にクリームを塗る。まずは右手から。ふふ、なんか楽しい、これ。毎日やりたいな。鼻歌でも出そうなくらいの心地で塗りながらみつきちゃんを見上げると、少しだけ唇を尖らせながらふるふると震えていた。え、なにそれ。初めて見たよこんなみつきちゃん。……いいもの見ちゃった。

「…うぅ…琉兎くん、なんかくすぐったいよ……」

「ん〜?でもしっかり塗らないと。ほら、こういう指の間も」

細く小さな指。その間も、おれのクリームで守れるようにゆっくり丁寧に塗っていく。反対側も同じように塗っていくと、みつきちゃんがくすぐったそうにぷるぷるした。なんて愛らしいんだろう。こんなに愛くるしい子がこの世にいるなんて思わなかったな。もっと……みつきちゃんが生まれた瞬間から、見ていたかった。そう考えていたからだろう。みつきちゃんの手をずっと握っていた。クリームなんてもうとっくに塗り終わっている。この手を離さず、一日中いられたらいいのに。そう思っても時間は迫ってくるもの。あと少しで終わってしまう休み時間。その最後の瞬間まで、この手を離さないように。それから……もっとみつきちゃんに触れていたい、そんな気持ちから、あるお願いをした。

「みつきちゃん。パーして」

「パー?えっと、こう?」

「ん。そう」

おれの言う通りに手を開いたみつきちゃんの掌に自分のを合わせる。それだけならハイタッチだけど───────。

「わっ……!!る、琉兎くん!?」

「最後の仕上げだよ。 みつきちゃんの手しっかり守らないとでしょ」

ゆっくりと指を絡める。一本ずつ、一本ずつ。みつきちゃんの手と一体化するように。

あぁ……このまま連れ去っちゃおうかな。顔赤くして、ホントかわいい。でも、まだ足りない。

「ほら。みつきちゃんも。ぎゅうってして?」

「えっ、で、でも……」

「みつきちゃんがしてくれないとずっとこのままだよ?」

「わっ、わかった…。こう、だよね……?」

いつだって素直なみつきちゃんが、おれの言う通りに指を折る。そして完成するのが、恋人繋ぎ。

「よくできました」

そう笑いかけた直後、みつきちゃんの顔が耳まで赤くなった。気づいたのかな。この状態のこと。

ふふ、幸せ。こうしてたらホントに恋人みたい。あぁ……残念だな。終わりが来るの。もっと一緒にいたいのに。だから、最後に……ちょっとだけ、痛いかもしれないけど大丈夫。おれがみつきちゃんを想う気持ちなだけだから。ぎゅっと繋がれたみつきちゃんの……手の甲。そこに触れている指に力を込める。爪の痕が残るように。きっとすぐ消えちゃうだろうけど、みつきちゃんの体に、おれの痕が刻まれたんだ。それだけで今日は十分。

「琉兎くん。ありがとう……」

目を伏せながらお礼を言うその姿がたまらなく愛おしい。ふふ、きっとこんなことされたのおれが初めてだよね。あぁ…このまま君の全てを手に入れられたらいいのに。なんて気持ちを奥にしまって、優しく微笑みかける。

「うん。いつでも塗ってあげる。あ、そうだ。みつきちゃんに一つあげる」

カバンの中からもう一つ同じものを取り出し、みつきちゃんの前へ持っていくと、彼女の顔に戸惑いが浮かんだのが分かった。

「えっ、でも…琉兎くんのだから、貰えないよ…」

それでも、おれは─────

「いーの。予備のだから。無くしたら困るでしょ?だからもう一本持ち歩いてるんだ。…みつきちゃんにプレゼント。ね?受け取って」

君とお揃いがいい。おれと同じ匂い。このハンドクリームを見るだけで、みつきちゃんとおれの繋がりが一つ増えたことを感じられる。これを見るだけで君をもっと想える。みつきちゃんに、おれのことを沢山考えてほしいから。ポーチから取り出す時、手に塗る時。これを見て、おれに会いたくなってほしいな。

「…いいの?」

「うん。…ふふ、おれとお揃い」

みつきちゃんの手に同じハンドクリームを乗せる。みつきちゃんはそれをじっと見つめ

「…琉兎くん……。ありがとう…!」

嬉しそうに笑ってくれた。おれの、大好きな笑顔だ。

きっと、おれからの優しさだと思って受け取ったんだろうね。みつきちゃんってそういう子だから。

ふふ。ホント……かわいい──────。そんな言葉を何度思い浮かべても、みつきちゃんへの思いは到底収まりそうになかった。

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