この手で作る
みつきと再会してから数週間。
邪魔な奴はいるけど、みつきと二人の時間が全く無いわけじゃないのはいい。中学とか高校と違って全部同じではないから。そのせいで、みつきと離れる時間があるけど。それでも、空いている時間に他愛もない話をしたり、一緒にご飯を食べたりすると、三年間が徐々に埋まっていく。
「…今日は髪下ろしてるんだ」
「そうなの…。実はね今日、寝坊しちゃって…少し巻くだけしかできなくて…」
そのままでも十分なみつきを
「……みつき。少しのあいだじっとしてて」
「うん?うん……」
自分の手で作りたくなった。
ちょうどいい。みつき、喜んでくれるかな。
座ったみつきの後ろに回り、柔らかな髪に触れる。茶色よりは薄く、少しだけ黄色みかかった髪が陽の光を浴びてキラキラと輝き、甘すぎない花の香りが微かに鼻腔をくすぐった。
10分ほど経ち、ようやく完成した。
「はい。鏡」
鏡を手渡すと
「え、わ!?なにこれ!すごい……!これ、編み込みだよね……!わぁ…!自分でやったときはこんなに綺麗にできなかったんだけど、ゆうちゃんすごい……!!」
角度を変えながら目を輝かせ、髪をまじまじと見つめるみつきが映った。
「似合ってるよ。みつき」
絶対似合うと思ったのと、単純に見てみたいが合わさって完成したのは編み込みツインテール。
……想像の何倍もいい。みつきはいつだってこっちの脳を超えてくる。
「ゆうちゃんありがとう!すっごくかわいい!ゆうちゃんって器用だね。…ん?あれ、このヘアピン…」
髪に夢中だったみつきがようやく俺からのプレゼントに気づく。
「みつきにあげる」
それは、少し前に出かけた時に見つけたもの。視界に入った瞬間、みつきの顔が浮かんできて、あげようと思って買ったはいいものの、どうあげようか悩んでいたものでもある。
「えっ!?いいの…?」
鏡越しに驚いた表情を見せたみつきは、控えめに視線と顔を俺へと向ける。もっとその顔が見たくて覗き込む。
「……いらないの?」
「……!」
一瞬、目を見開いたみつきは
「ううん!いる!ゆうちゃんありがとう…!!」
いつもの弾ける笑顔を見せた。真近で見るその笑顔は、出会った頃から俺の心を掴んで離さないもの。"かわいい"とか陳腐な言葉しか浮かんでこなくなる。同時に、頬が緩んで無性にみつきの頭を撫でたくなる。今日は…我慢しないとだ。せっかく俺がかわいくしたんだし。そう考える頭と心はみつきの前だと噛み合わない。無意識に伸びた手は軽く巻かれた毛先へと向かっていく。少しだけ指で遊ぶと、心が満たされていく気がした。
「…………」
「ゆうちゃん?」
「…他にしたい髪ある?」
「え、うーん……。ゆうちゃんはどんなのが似合うと思う?」
「なんでも似合うんじゃない。みつきなら」
「そ、そうかなぁ……?」
「似合うよ。絶対」
撫でられなくても、軽く置くだけならとみつきの頭に手をそっと乗せる。毛先よりもずっと満たされて、ようやく頭と心が噛み合った。
「えへへっ……もう〜ゆうちゃん褒めすぎだよ〜」
「────────。…………」
今度はなにをあげようか。みつきに似合うもの、ありすぎて困る。




