第五話:五蘊その2【受(じゅ)】:痛みはただの通知です?
さて、第5話です。
シャリホを苦しめているのは、泥の冷たさだけではありませんでした。
自分の体に起きている「痛み」という現象を、彼は勝手に「不幸の物語」へと書き換えてしまいます。
カモメが教える、痛みの正体とは――。
「あああ……! 腰が……! これは呪いです! 私の商才を妬んだ世界の陰謀です!」
シャリホはぬかるみの中で、腰を抱えて悶絶していました。
普段はふかふかの椅子に沈み、甘やかされた体。
泥沼は、その幻想を容赦なく剥がします。
「おじさん、それ本当に“呪い”かい?」
「では何だと言うのです! こんな激痛が!」
カモメは泥の上に降り立ち、自分の足を嘴で強くつつきました。
ピクッと体が揺れます。
「……痛いな」
「ほら見なさい! 痛いでしょう!」
「うん。でも、それだけだ」
カモメは淡々と続けます。
「痛みは“通知”だ。
これ以上やると壊れるぜ、ってな」
「通知……?」
「通知を読むか、通知に怒鳴り返すか。
選んでるのは、あんただ」
シャリホは荒い息を吐きながら、泥に沈みかけた宝石を見ます。
腰は確かに痛い。
けれど――
その痛みに「破滅」や「呪い」という字幕をつけているのは、自分かもしれない。
……しかし。
(15時45分。鳥による医学的根拠のない診断。責任追及案件)
ペンは止まりませんでした。
「……やれやれだぜ」
痛みは消えません。
けれど、痛みに貼る字幕は選べるのかもしれません。
「破滅」
「呪い」
それとも――ただの通知。
次回、第6話。
男はみんな助平!もちろんシャリホも例外じゃありません。次回最も手放しにくい執着が登場します。




