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お花畑女子のゆるふわダンジョン最強説  作者: 豆の木豆太郎
どうなっちゃうの!?最強無敵の花畑ダンジョン
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27.エピローグ

 

 ある日急に娘がいなくなった。

 娘の部屋も使っていた物もあるのに、存在だけが消えたかのように、写真の中から戸籍から、人々の記憶からもぽっかりと消え去っていた。


 可愛い可愛い愛娘のことを覚えているのは私と妻と長男だけとなった。


 あの子の好物を日々の食事に取り入れ、あの子との思い出を妻と必死に語り合った。

 僅かに残った記憶さえも薄れ行くことに怯え、眠れぬ夜を過ごしていたある日、夢枕に老人が現れた。



「其方らの娘は異世界でダンジョンマスターとして暮らしておる。ハルの願いにより、その世界で言う“盆と正月”の三日間だけ、そちらに帰ることを許した」



 限られた時間を大事にするがよい…そう言い残して老人は消えた。

 ベッドから飛び起きると、妻も今しがた同じ夢を見たと言う。


 異世界だとかダンジョンマスターだとか、分からないことだらけだが、あの子と会えるのならなんだっていい。


 一縷の望みを頼りに今日まで生きてきた。


 妻からのメールを見て人目も憚らず泣き出してしまい、早くこの目で確かめたいと定時退社で駆け出した。


 東京の北外れ、駅を降りて緑道公園を丘の中腹まで小走りで駆け抜ける。

 我が家の前で一度息を落ち着かせる。震える指先で鍵を回し扉を開けると、パタパタと懐かしい足音が聞こえる。


「あ、パパおかえりー!」


 気を抜くと涙が溢れそうになるのをぐっと堪え、心からの笑顔で応える。


「ただいま春瑠」




 ─────




 テーブルに晩御飯を運んで箸と小皿を並べていると、玄関から音がした。

 ちょうどいいタイミングで帰ってきたみたい。


「あ、パパおかえりー!」

「ただいま春瑠……そちらの方は?」

「私、ハルさんの()()()()()のマイスと申します!お見知り置き下さい」


 リビングの扉を開けて入ってきたのは、あたしのパパ。そしていきなり特大インパクトをかますマイスさん。

 ママにも同じことしてたんだけどね。


 パパは「は、はぁ…」って言いながらも、スカートを摘んで綺麗なお辞儀をするマイスに気を取られてるみたい。ほらほら、ご飯が冷めちゃうから手洗ってきてー!


 手洗いうがいをして席に着いたパパと、お酒の準備もしてきたママ。

 さぁ、みんなで手を合わせて、いっただっきまーす!


 あたしの大好物が揃ったご飯を食べながら、この世界での設定をママとパパに説明していく。


「っていうわけでね、今専門学校には行ってなくてね、少し遠いところで働いてるのよ。マイスとはその職場で会ったの」

「はぁ〜春瑠がもう社会人かぁ。マイスさんどうですか?春瑠の働きぶりは」

「それはそれは素晴らしいの一言ですよ。ハルさんのお陰で我が社は飛ぶ鳥を落とす勢いです。公私共にお世話させて頂いています♡」

「ねぇ春瑠、イケメンさんとの出会いはあったの?」

「それがねー、いっぱいいるのよ!」

「まぁ!素敵ねぇ」


 一応高級フルーツを生産したり、可愛い小物を作ったりする会社だって説明していて、ママには晩御飯の用意をしながらもう少し詳しい話もしてた。

 あたしがちゃんと仕事ができていることに感動したパパは気を良くして、どんどんマイスにお酒を勧めてる。


 夕食が終わると、いつもママとパパは晩酌をするから、あたしがお土産の金の果実スターベリーを切り分ける。

 包丁を入れた瞬間から甘い香りが広がって部屋の中を満たしていく。


「はいどうぞー。食べる時は気絶しないように覚悟してから食べてね?」

「ハハハ、春瑠は冗談が上手いなぁ。気絶なんてそんな………」

「あら、パパ本当に気絶しちゃってるわ」

「………ハッ!今何が起きた!?」


 まさか本当に気絶するとは思ってもみなかったパパは、恐る恐るもう一口食べて、うまぁぁぁぁい!!って叫んだ。

 ママもそれを見てからパクッと一口食べて、続けて二つ三つと食べていった。


 ウッディが厳選した完熟金の果実スターベリーは美味しいからしょうがないよね。でも食べ過ぎは良くないから、二個分しか切り分けてないの。

 すぐに食べ切っちゃったパパとママは名残惜しそうな顔をしてるけど、また明日ね!


「ところで、春瑠はいつまでこっちにいられるんだ?明日はじーちゃん家に行くけど」

「明々後日しあさっての昼過ぎに出発かな。お兄ちゃんは帰ってくるの?」

「明日の朝イチで帰ってくるらしいわよ。さぁ、今日は早めにお風呂入っちゃいなさい」

「はーい」


 マイスに案内しがてらお風呂場へと向かった。



「夢じゃ…ないのよね。本当にあの子が帰って…」

「あぁ、本当に本当だ。元気そうで良かったな」


 風呂場から聞こえるはしゃいだ声に耳を傾け、確かな幸福を噛み締めていた。



 次の日は朝新幹線で帰ってきたお兄ちゃんを車で迎えに行って、そのままおじいちゃん家に直行した。

 お兄ちゃんとは車の中で近況報告したんだけど、未だに彼女ができてないんだって。お兄ちゃんいい人だと思うんだけど、甲斐性ないからなぁ〜。


 車で一時間走って、パワフルなじーちゃんと優しいおばあちゃんに会いに行く。

 お墓参りをして、料理上手なおばあちゃんのご飯を食べて畳でゴロゴロするのが気持ち良いの。


 次の日は高校の頃の仲良しと遊んで、久しぶりにショッピングとかカラオケとかした。

 友達に連絡とってからすぐ新曲のリサーチめちゃくちゃしたし、良い曲いっぱいあってテンション上がっちゃった。


 夜には家に帰って、パパとママとお兄ちゃんと久し振りにゲームして夜更かししたの。

 あたし柿鉄めっちゃ得意なんだよねー!マイスはずっとニッコニコでお世話してくれてた。


 最終日はゆっくり起きて遅めの朝ごはんを食べたら、みんなでお土産を買いに行った。

 お土産は名物のお菓子と調味料!お醤油とかお味噌とかでっかい奴買ってもらっちゃった。

 大きな袋いっぱいにお土産を詰めてマイスに持ってもらったら、リビングで家族にお別れの挨拶をする。


「それじゃあ、あたしはそろそろ行くね!またお正月に帰ってくるから、パパもママもお兄ちゃんも元気でね!」

「お世話になりました。次回はお孫さんをお見せできるよう頑張ります」

「春瑠も元気でな。仕事は程々に頑張れよ」

「風邪ひかないようにね。愛してるわ春瑠」

「今度は冬のボーナスで美味いもん食いに行こうな!」


 ママはぎゅっとハグしてくれて、パパは頭撫でてくれた。

 大好きな家族とまたこうして会うことができて本当に良かった。頑張って良かった。


 神じーちゃんにいきなり連れて行かれた異世界で、いつの間にかあたしの家族とも言える存在がたくさんできた。

 今となっては、日本か異世界のどっちかだけなんて考えられない。あたしは欲張りだからどっちも手放したくないの。


 だから!これからも元気に楽しく頑張って生きていくよ!

 そう心に決めて、クローゼットの扉を閉じる。






 暖かな陽射しに花やぐ香り、爽やかな風が頬をくすぐる。

 三日離れていただけなのになんだか懐かしく感じる。


 閉じていた目を開けると、そこには満面の笑みであたしの帰りを待っているダンジョンの仲間達がいた。


「「「お帰りなさいハルちゃん!」」」


 あたしの新たな家であり、家族であり、帰ってくる場所、それが笑顔溢れる花畑ダンジョン。


「ただいま!」






これにて完結です。お読み頂き誠にありがとうございます。


後書きを活動報告に乗せているので、もしよければ見に来て下さい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます。 昨日一気に読み、今、エピローグを読み終わりました。 最初はそんなんで大丈夫かなって思う不安なスタートでしたが、ずっと前向きで異世界を楽しんでいるハルちゃん、良か…
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