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お花畑女子のゆるふわダンジョン最強説  作者: 豆の木豆太郎
どうなっちゃうの!?最強無敵の花畑ダンジョン
64/71

20.スーパーキューティバブリシャス

長い空白の後に別視点あります。

 

 暖かな優しい光に包まれたダリュンゴスとフェスキーモの身体は、徐々に淡い光の粒へと変化していく。

 身体がほどけていく中で、まるで時間を巻き戻しているかのように表情だけが幼く柔らいでいった。


 フェスキーモは一足早く身体が魔素へと変換されて、光の粒が集まり転生の準備を終えた。


 ダリュンゴスは険のとれた表情でフェスキーモだった光の玉を眺める。そしてポツリと零した。


「……私は…ずっと恐れていたのだな…」


 小さく相槌を打つと、続けて話し始めた。


「…見返したかったのだ。私の種族を馬鹿にしてきた連中を。力を蓄えて強くなりたかった。…だが、それ以上に死ぬのが怖かった…」


 巨大な身体の半分以上が光の粒になったダリュンゴスは、穏やかな表情で語り続ける。


「……今、こうして今生の終わりを迎えて、遠い昔のことを思い出したよ…。胸を張って誇れるような、そんな存在に…なりたかったのだと……私は…間違えていたのだな…」


「違う道があったのやもしれぬな」


 魔王の一言が重く響き渡る。


「だが、間違えたから今がある。其方そなたはやり直す機会に巡り逢えたのだ」


 ダリュンゴスが吐き出した正直な気持ちには、今までの果てしなく長い時間が重くのしかかっているように感じた。

 きっと重ねた時間が長い程、その重さは雪玉が転がるように増していくんだと思う。


 でも、あたし達がダリュンゴスに気安く声を掛けることもできない。なぜなら彼もまた魔族を苦しめてきたから。


 唯一声を掛けられるのは、今まで苦境を強いられてきた魔族の長だけなんだ。


 魔王はただただ事実を述べた。

 でも、彼にはそれで十分だったみたい。


 ダリュンゴスは顔をクシャッとさせて、嬉しいとも苦しいともとれない表情で眉を上げた。

 そして、ふぅ…と息を一つ吐くとあたしの方を見上げた。


「…ありがとう……機会をくれて……」

「…いいのよ。また会いましょう」

「うむ………__   」


 そう言い残すと光の粒が一箇所に集まっていく。

 こうして二人の転生準備が整った。


 あーもう!あたしまで泣けてきちゃったじゃない!


「湿っぽいのはここまで!さぁ、始めるわよ!」


 パンパンと頬を叩いて気合いを入れたら、モニターのGo‼︎ボタンを押す。

 すると、バランスボールくらいの大きさだった光の玉がギュンギュン回転し始めた。回転するスピードを上げながら内側へ向かって密度を高めていくと、バスケットボールくらいの大きさにまでギュッてなった。


 大きさが変わらなくなっても回転は止まらずに、ますます速くなる。その内淡く光を放ち始めて、あっという間に目を覆うくらいの眩しさになった。



 覆った手越しに光が収まったのが分かったから、そっと覗いてみると、光のあった場所には白い卵みたいなのに包まれた赤髪の男の子と、ネズミ獣人の赤ちゃんがふわふわ浮いていた。


 ゆっくりと落ちていたから慌てて二人を抱きかかえる。


 あたし一人でも抱っこできるくらい小さくて軽い二人は、スヤスヤと寝息を立てている。

 ぷっくりとした頬っぺたに小さな鼻、時折何かを食べてるように揺れるぷるんとした唇がもう…かわっ…!


 あまりの可愛さに我を忘れそうになったから、マイスが用意してくれた揺り籠にそっと寝かせる。

 ふわふわの綿花に包まれた二人は起きることも泣くこともなく眠っている。


「(誰か!画力に自信のある方はいらっしゃいませんか!これ、早く保存してぇ!!)」

「(それなら私が)」

「(ルシャさん多才なのね!?イヤァァァ!二人がくっついてるのキャワイィィィ!)」


 はぁ…はぁ…赤子の魅力というのは本当に恐ろしいものね。

 とりあえず、ここでやることもなくなったからお城に帰りましょうか。


 空洞から道を戻って荷物の番をしてくれていた人狼のクゥちゃんとコボルトさん部隊に無事終わったことを伝えて撤収作業をしてもらった。


 みんな労ってくれて作業は自分達に任せてくださいって言うもんだからお願いしちゃった。

 緩やかな登り坂を進んでるとドッと疲れが押し寄せてきた。肉体的にもそうだけど、精神的にもクタクタだったんだなってやっと実感。


 ダンジョンの出口を抜けて外に出ると、厚い雲間から光が差した。

 千年もの間見ることのなかった晴れ間に、城からは割れんばかりの歓声が聞こえる。


 横目で魔王を覗き見ると目の端に涙を浮かべて噛み締めてるし、ここはそっとしておいてあげますか。


 歓声に迎えられつつ場内に入った。

 とりあえず、今やらなきゃいけないことをパパッとやってしまうことにして、応接間に集まった。

 装備を外して楽な格好になってソファに座ると、みんな溶けるように長い息を吐いて力を抜いた。これは起き上がれんぞー。


 ふわっと花やぐ香りと甘く蕩ける香りが鼻をくすぐる。


「皆様お疲れ様でした。甘味とお茶をご用意しました」


 ソファの背もたれに預けていた頭を起こすと、そこには懐かしの赤い果実が…!気が付いた時には齧り付いてた。


「あぁ〜うまぁ〜い。元気がみなぎるよぉ〜」

「これは美味いな。一体何の果実なのだ?」

「我らがダンジョン特産のトレントベリーにございます」

「ほう。確かに活力が湧くようだな」


 フルーツを食べたら元気になってきたから、マイスが入れてくれたお茶も飲んで一息つく。

 落ち着く優しい味わいのハーブティーには黒曜蜜オニキスハニーが入っていて、これまた懐かしい気分になる。


 さて、お仕事の時間だ。何から手をつけたらいいかな。


「ではマイスくん!現状報告から頼むよ!」

「かしこまりました。今回のダンジョンバトルはハル様がダンジョンコアにアクセスしたことにより勝利となりました。本来ダンジョンバトルでは、挑戦者は負けたら全てを失うためリスクが高く、挑戦を受ける側は負けても領域やDPの割譲程度で済むルールとなっています。今回はダリュンゴスが逆上しマイルズ様に倒されたことで、地下ダンジョンの全てをハル様が獲得致しました」


 あ、そういう感じだったんだ。

 割と危ない橋渡ってたみたいだけど、結果良ければ全て良しよね。

 ……心を読めるルシャさんだけじゃなく、魔王やホルスト、マイルズにまで呆れた顔で見られたんだけど!


「獲得したのは、DP1億6328万と、広大なダンジョン領域、それとモンスター二体です。領域は魔国の領土を越え他国との境界となっている荒地までも含んでいます。魔国を覆う厚い雲については、ダンジョンによる影響謂わば呪いのようなものであったため、効果を失っております。しかし、枯れた土地はすぐに戻るわけではありません」

「それは仕方があるまい」


 魔王にとっては最大の悩みの種が消えただけでも十分すぎるみたい。これ以上は望まない無欲な顔してるわ。

 しかーし!あたしがその程度で満足するなんて思わないことね!


「ダリュンゴスとフェスキーモに行った転生についてですが、前例がないそうで特別に1億DPで許可が下りました。あくまでもダンジョンモンスターだから出来たことであり莫大な費用が掛かっています。ダンジョンでなら転生ができると思わぬようにご注意を。また、今知り得たことは機密情報ですので、決して情報を漏らさぬようお願い申し上げます。以上です」


 秘密にしといてねって言った時のマイスが放った殺気で、大体何が起きるのか想像できたのか、みんな首をブンブン振ってるわ。まぁ神様絡んでますからね、しょうがないよね。


「ほんで、あの二人についてなんだけど、なんでかあたしの配下ってことになってるのよ」

「いいんじゃねぇの?ダンジョンのことは俺らにゃどうもできねぇし」

「うむ、こちらも異論はない」

「じゃ、ウチの子ってことで!」


 ちなみにどんな風に生まれ変わったのかも一緒に公開したの。


 カエサリウスエッグ:茸人型幼生モンスター。白い肌に夕焼け色の髪と外見はほぼ人族に近いが、白い卵のような外皮に包まれているのが特徴。中の幼体を衝撃から守っている卵のような白い外皮は、実は硬くなくてふかふかしている。


 フィールドマウシーズ:鼠型獣人モンスター。黒目がちの瞳と大きい耳、細くて長い器用な尻尾を持っており、穴を掘るのが得意。手先も器用で植物の葉を編んで巣の一部とする。雑食だが木の実や果実を好んで食べる。


 こんな感じで、説明文にも不安になるようなことは全く書いてなかったの。良かった良かった。


「今日はダンジョンバトル手伝ってくれてありがとう!みんなゆっくり休んでね」


 報告会もお開きにして、ゆっくりするぞー!








 ─────








「これはまた面白いことになったのぉ」


 星空を背景に大きく引き伸ばして映したモニターを見ながら顎髭を撫でる。

 観戦後の余韻に浸っておると、無粋な声が聞こえてきおった。


「ダンジョンバトルが起きるように仕掛けておいてよく言いますわ」

「それにしても大番狂わせじゃ」

たぎりますわねぇ〜」

「筋肉が足りん!力こそ全て!!」


「全くうるさいのぉ。静かに見ておれんのか」


 今回は別にStageの節目でもないというのに、いつの間にか集まりおった。

 わし主神なのに監視でもされておるのじゃろうか。


 あのダンジョンを見るのが好きな此奴らに言っても詮無いか。


「それにしてもあんな問い合わせは初めてでびっくりしましたね〜」

彼奴あやつらしい選択ではあるのぅ」


 本来命の取り扱いが軽いダンジョンにおいて、転生という概念が出てくることはなかった。

 基本的には数で攻める方針を取るダンジョンが多く、わざわざ転生させようと思う程のモンスターはあまりおらん。

 自我を持ったモンスターであれば分からなくはないが、そもそも自我の芽生えは離反や内乱のリスクと共にある。無計画に配下を強くすると足元を掬われるから、あくまで中間管理職といった感じじゃな。


 前例はないが、独断で許可をした。面白くなりそうだからの!


「勇者の覚醒した場面は中々良かった。迷いの無い剣筋は気持ちが良い!」

「あら、魔王と魔術師の連携も悪くないわよ。無駄のない魔力操作が素晴らしかったわ」

「あの地下空間がどうなるのか楽しみですわぁ〜」

「少し飛ばして見たらようござんしょ」


 わしからモニターを奪って自分達で操作し始めおった。

 何でもいいんじゃが、またしばらく騒いでるんじゃろうし、菓子でも用意するかの。



赤子二人を描くのに立候補したルシャさんですが、その場で薄い板状にした結晶に念写で映像を焼き写したので、ハルちゃんの理想とする保存ができています。

ソウルシャードさんだからできる技術で、追想のメモリー紫結晶クリスタルという名のアイテムです。ちなみに映像は30秒程の動きを記憶して自動再生しています。高性能!


カエサリウスエッグはタマゴタケ(アマニタカエサリウス)がモチーフとなっています。皇帝繋がりで、卵に還されたってのがギャグポイント高めで気に入ってます。

フィールドマウシーズはノネズミとカヤネズミがモチーフです。トリュフの胞子を運ぶのがリスやノネズミやモモンガ、あとハエだそうで、流石に虫を可愛くできる自信はなかったのでノネズミにしました。


転生するにあたって、ハルちゃんの意向はバッチリ反映されています。


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