10.一堂に会す
ハルちゃん視点から始まります。
『ハル様、落ち着いてお聞きください。……ダンジョンからの連絡がございます』
「えっ」
カゲアンナちゃんから念話で話し掛けられて、心の準備をしたはずなのに驚いた声が漏れちゃった。
「どうしたのだ、ハル」
「あ、ううん。何でもないの」
一緒にいた魔王様から何があったのか聞かれたけど、適当に誤魔化して念話に切り替える。
『アンナちゃん、ダンジョンからは何て?』
『貴方様を助けに魔王城の近くまでコウ・ライ・ジン・サリー・ランが来ており、直にマイス様も到着するそうです。合流した後救出に上がる…とのことです』
『……うん。アンナちゃんまでそんな感じになってるってことは、多分マイスガチ切れモードってことよね?』
『…はい。コウ達の念話とは別で、マイス様と共にあるカゲリーナからの念話にはものすごい念が込められておりました…』
「ヒェッ!」
「…やはり何かあったのであろう?話してみるがよい」
ガチ切れマイスを想像したら悲鳴が抑えられなかったんだけど、魔王様が話振ってくれたから話してみようと口を開いた。
「魔王様!緊急伝令です!!」
「何事だ!」
「ハッ!勇者一行が城に向かってきているとのことです!速攻で砦の門を破壊し突破され、一直線に走ってきています」
魔王様は空中に水鏡を出現させて爆走する勇者一行を映し出す。
戦闘を走るのは白馬に乗った金髪の──
「…マイルズ?」
勇者の隣に並び走るのは二本角の赤馬に乗った深紅のローブ──
「それにホルスト!?ジークとザグまでいるじゃない!」
「どういうことだ?ハルの知り合いか?」
「うん、そうなんだけど…ていうか!あたしも話があってね!」
『『ハル様!愛しいハル様!!私、マイスがすぐに参ります!!!!』』
「ウ、ウチのダンジョンマネージャーがすぐそこまで来てるのよ!ヤバイわ!!」
念話なはずなのにハウリングするくらいの大音量でマイスの声が届いた。
あたしの知り合いが集まってきていることに困惑した魔王様に、とにかく戦闘を避けて城内の大広間に案内することだけ伝えて走り出した。
めっちゃ緊急事態だけど、久しぶりにみんなに会える!お出迎えの準備をしないと!!
炊事場の扉を乱暴に開けて大急ぎで用件を伝える。
「ワンさんハンさん!パーティの用意よ!!」
─────
魔族の砦に急襲をかけて門だけを破壊して速攻で通り抜けたのはつい先程のこと。ロビンさんとザグが砦に潜入して門に細工を施して、ホルストの爆炎魔術で脆くなった門を吹き飛ばした。
砦はアーマービーの巣を突いたような騒ぎになっていたのに、魔王城が目と鼻の先程になると魔族の旗を振った悪魔が飛んできて並走しだした。
「何の用だ!」
その怪しい行動に殺気立つと悪魔は距離をとった上で両手で旗を振って安全をアピールする。
「我々はあなた方を歓迎するよう仰せつかっているのです。あたしの名前を出せば分かるはずよ!とハル様から」
「「ハルが!?」」
「はい。魔王様とハル様が城の大広間にて皆様をお待ちです。ご案内致します」
怪しさしかない悪魔の言葉だが、悪意や企みのようなものを感じ取ることもできなかった。
警戒しつつも速度を緩めて案内に続いて巨大な城に入る。
無骨な石造りの城内に惹かれた赤い絨毯の道を通って案内された大広間に入ると、素朴なランプの灯りに照らされた広い空間に幾つかのテーブルと食事、それに先客がいた。
大きくしなやかな体躯の白竜と黒い外套を纏った五人の人影。
その誰もが尋常ならざる強さを秘めているのが分かる。まさか魔族の幹部かと警戒を強めていると、ザグがボソリと言う。
「……ダンジョンのみんなじゃん……」
「……へ?」
ザグは一人ずつ指差してマイス、コウ、ライ、ジン、サリー、ランと言う。
ザグがそう言ったのが聞こえたのか、向こうも外套のフードを外していく。
黒髪に赤い花が咲き乱れた美女がマイスで、俺達よりも大きいんじゃないかと思える程の大男達がコウ・ライ・ジン、紫紺のとんがり帽子を被った淑やかな白髪の女性がサリーで、あの小さかったドラゴンパピーがここまで大きく立派に育ったことに驚愕を隠せない。
お互いに戸惑う中、広間奥の扉が開き漆黒の大男と紅花色のドレスを着た少女が入ってくる。
あぁ…変わらず元気そうで本当に良かった。
少女は広間に集まった俺達を見つけるとすぐに走りだして階段の上から思い切り飛び出した。
「マーーーーーイーーーーースーーーーー!!!!!」
「ハ゛ル゛様゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
飛び出したハルをふわりと優しく抱き留めるようにに黒い蔓を伸ばしたマイス。蔓を巻き戻してハルを抱き締めたマイスの顔は涙で大洪水だ。
「コウくんもライくんもジンくんもサリーちゃんも!ランちゃんまでこんなに大きくなって!!もう!もうッ!」
ハルが仲間達と感動の再会をしているのを眺めていると、ゆっくりと階段を降りてきた漆黒の大男が話し掛けてくる。
「其方が勇者か。余は第135代魔王グウェルノート・ラ・マーナ・デモルニア。人族からは魔境と呼ばれるこの地──魔国デモルニア──を統べる王である。其方らとは話がしたいのだ」
─────
マイス達がダンジョンから魔王城まで来てくれたことにも驚いたけど、みんな立派に格好良くなっていて嬉しい気持ちと急に心配になった気持ちとでアップアップになっちゃった。
みーんないっぱい撫で回してぐりぐりヨシヨシしたら、取り残されていた魔王様とマイルズ達のことを思い出した。
振り返って見てみると、テーブルに載った食事を取りながら和やかに会話していた。
ダンジョンのみんなと一緒に話しているところに向かうと、ホルストになんかジト目で見られたんですけど。
「何ー?何の話してたのよ」
「…お前が予想の斜め上を軽く飛び越えていくってことを話してたんだよ」
「何よその言い種!あたしだって大変だったんだからねー!」
「ハルは最初からずっとのびのびやっておったぞ?余の気勢が削がれる程度にはな」
「ホレ見ろ」
ムキー!何よ何よ!魔王とホルストで意気投合しちゃって!マイルズも何か言ってやってよって振ったらひたすらニコニコして「良かった良かった」って言ってるし!おじいちゃんかっての!
…まぁ、とりあえずは喧嘩になることもなくお話できてるみたいだし、まずはやることがあるよね!
「それじゃあ!みんなの再会と初めましての記念にパーッと楽しもう!」
冷たい芋の葉茶が入ったグラスを掲げて、乾杯!
コボルト達と一緒に育てて試行錯誤した魔国料理の数々を召し上がれ!
やっと、やっと合流しました!
まぁ筆の乗り具合が違いますこと!ノリノリですわよ!
ゆるふわ成分が帰ってきたと言うことで、また気楽にお楽しみ頂けたらと思います。




