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お花畑女子のゆるふわダンジョン最強説  作者: 豆の木豆太郎
どうなっちゃうの!?最強無敵の花畑ダンジョン
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8.一方その頃のハルちゃん

更新遅くなってすみません!ハルちゃん回です。

 

 勇者一行が過酷な旅をしていたその頃、魔王城にいるハルちゃんは玉座の間で正座させられていた。


 魔王様と幹部のソウルシャードさん、炊事のワンさんとハンさんもいる中、世話係コボルトのテリーくんが経緯を説明するのを冷や汗をかきながら聞いている。


「コイツが毎日畑で何かしてるって話は聞いてたッス。遠目で見てた限りおかしなことはしてなかったんで放っておいたんスが、さっき今日の仕事を伝えに行ったら見たことない植物育ててたッス!」

「ほう、見たことない植物?ここで育つのはあの草と芋しかないはずだが」

「黄色い花が咲いたデカい草と、もう片方は芋の蔓だと思うんすけど変な形してたんスよ!風もないのにワサワサ揺れてるし、きっと変なモンスターでも生み出したんスよ!」


 テリーくんが一生懸命語ったのを聞き終えて、魔王様はあたしの方をジッと見る。


「それで、何か弁明は?」

「ハイ!あたしが育てたのは魔王様の言う草と芋であります!」


 魔王様は、指をすいすいと振ってから空中に浮かべた水鏡に映像を写し出した。


「確かに、これは異常な大きさだな。よく見れば似てるようにも見えるが、最早別物と言ってもよいだろう。……お前、まだ何か隠してるな。話せ」


 ヤバイヤバイヤバイ!色々お城にあった物パチって使ってるのバレた!?折角実験が上手くいったかもしれないのにどうしよう〜!ていうか!心読むルシャさんいるんだからこれもバレバレじゃない!?


「ブフッ!…お、怒らないから何したのか話してごらんよ」

「ほ、本当…?」


 魔王様を伺い見ると、無愛想な表情はそのままで頷くから覚悟を決めて全部話すことにした。


「ここで育つ植物ってあの二つくらいでしょ?味も何もないから、どうにかして美味しくできないか考えたのよ。でも、どうすればいいか全然わかんないから、実験みたいに色々条件変えてやってみたわけ。燃やした火で明るくしたり、灰を撒いてみたり、魔法の水を掛けてみたり。さっき見たのはそれを全部盛り込んだ奴なんだけど…」


 話してる途中からなんか刺さるような視線がすごくて尻窄すぼみになっちゃったんだけど、魔王様がお目々かっ開いてるわ。ちょっと怖いし。


 魔王様はその顔のまま続けろって言うから、細かいことも話してみた。どの条件も一つだけだとあんまり効果はなかったこと。欲張りセットグループはこの大きさでまだ二週間程であること。葉っぱの方は食べられるかもしれないが、芋の収穫にはまだ時間がかかることを伝えると、魔王様は怖い顔のままで、あたしが見ても分かるくらいに目をキラキラさせてた。


「その実験の成果を見に行こうではないか。着いてこい」


 魔王様を先頭にみんなで中庭の畑に移動する。


 黄色い花が咲いてる植物は、背丈の中程くらいから腕のように長く伸びた二本の茎の先に釣鐘型の花をつけている。その辺りの葉っぱは大きくなりすぎていて食べるのには向いてなさそう。上の方の若い葉っぱを手折るとパキッと軽い音がして綺麗に採れた。

 芋の方はどうしようか魔王様の様子を見てみると、何か魔法を使おうとしているみたい。


「多少味は落ちるが、成長加速の魔法をかけてみる。少し離れていろ」


 魔力が高まって魔法が発動したような感覚はあるんだけど目に見えるものはなくって、蔓が上へと伸びて芋の葉っぱが成長してからしおしおと枯れていった。魔王様がヨシって言ったから早速引っこ抜いてみる。


「ふぅっ…ぅぅぅん!!だぁぁ!抜けない!!テリーくんちょっと手伝って!」

「ハァ!?なんで俺が…」

「いいから、早く!」


 しのごの言うテリーくんに手伝わせても抜けず、ワンさんハンさんにも手伝ってもらう。それでも芋は抜けません。


「なんで抜こうとしてるのさ。掘り返したらいいじゃない」


 ルシャさんがそう言ってヒョイヒョイと指を動かすと芋の周りの土が盛り上がってぼこぼこと崩れていく。

 あたし達は芋を抜こうと力を入れてたからその瞬間スポンと抜けて尻もちを着いて転がった。


「こういうのはみんなで引っこ抜いてこそでしょう!?知らないんですか!大きなカブ!!」

「いや、知らないけど。これカブじゃなくて芋だし」


 掘り返した芋の見た目は少し大きくなったくらいで、紫の皮に丸い形は変わらなかった。実った芋の数はすごく多かったから、ワンさんハンさんは大喜びだったんだけど。

 二人がすぐにでも料理を作りたいって言うので、早速調理開始することにしたの。


 まずはいつも通り芋を洗って丸ごと蒸し器に。葉っぱの方は塩を入れたお鍋で茹でる。茹でると綺麗な緑色になったので取り出してみると、ネバーっとしたとろみがある。試しに少し取り出して味見してみると、苦味はほんの少しあるけど気にならないくらい。でもおひたしにするには向いてないかも。


 ってことで路線変更!水気を絞った葉っぱは1㎝幅に刻んで、お塩とお酢で混ぜる!トロトロとした食感と爽やかな味付けがいい感じね。


 蒸し上がった芋を一つ取って味見してみると、あの味気なかったはずの芋にほのかな甘みがある。ねっとりホクホクした感じは健在なんだけど、これ里芋ってよりかはさつまいもに近いかも。


 蒸したお芋を輪切りにしてフライパンに、魔族秘伝のドロっとしたソースを水で薄めて芋に回し掛ける。焦げないように弱火にかけて、香ばしい匂いがするまで水分を飛ばしていく。


 最後にスープを作ろうと思う。お出汁のスープストックを小さな鍋に移して、生のお芋と干し肉を角切りにして入れる。じっくり火に掛けていき煮立ってきたら、一度茹でて3㎝幅に切った草を入れて塩で味を整える。お芋の紫色がスープに染み出して葉っぱの緑と合わさって、とんでもない見た目になっているけど味が良ければ全てヨシ!


 ワンさんとハンさんは蒸したお芋を潰して貴重な甘露と混ぜ合わせて捏ね、平べったいお団子にしたら溶き卵を表面に塗ってオーブンで焼いていた。


 出来上がったメニューがこちら!

 ・蒸かし芋

 ・刻み菜っ葉のトロトロ和え

 ・芋の照り焼き

 ・紫と緑のとろみスープ

 ・お芋の焼き団子


 器に盛り付けて早速実食することに。

 魔王様はまずスープに手を出した。あたし的には一番食べにくそうな見た目をしてるんだけど、ここに住む人にとってはいつもとあまり変わらないのかも。

 とろみのあるスープをスプーンで掬って口元へ運ぶ。口に入れた瞬間目を見開く魔王様。


「う、うまい…」

「本当だ。ちゃんと味がする…」


 魔王様とルシャさんが少しずつ食べ始めたのを見て、ワンさんハンさんテリーくんもおずおずと食べ始める。

 テリーくんは蒸かし芋を手に取り二つに割って小さく齧り付く。齧った瞬間に広がる甘い香りに、更に一口もう一口とかぶりつく。ワンさんとハンさんはトロトロ和えと照り焼きの味付けに興味深々な様子。


 あたしも、ワンさんハンさんが作った焼き団子を手に取って食べてみる。

 溶き卵を塗った表面はパンみたいに香ばしく焼けてて、中はしっとりホクホクしていて、しっかりと甘味になっていた。久しぶりの甘さが幸せ〜〜〜!


 あたしは焼き団子以外味見してるからお腹を満たす程度に食べたんだけど、他のみんなは気付いたら凄い勢いで争うようにして食べてたの。

 いつもの食事がアレならしょうがないよねぇ……なんて考えてたら、ふとお茶が飲みたくなった。


 ちょっと食堂を抜け出して中庭に戻ると、作物の前にしゃがみ込む。

 お芋の蔓は伸びすぎるとよくないって聞いたことがあるから、上へと伸びる蔓以外の地べたを這うように伸びる葉っぱを摘んじゃう。爽やかな香りのする黄色い花もプチプチと摘んで食堂に戻る。


 芋の葉っぱと黄色い花をしっかり水洗いして、水魔法で水分を軽く飛ばす。しなっと萎れたら空のフライパンに入れて弱火でじっくりと火にかける。お玉で混ぜながら焦げないように焙煎していけば即席芋の葉茶の完成!


 ポットにお茶の葉を入れて熱湯を注ぐと、お湯が薄らと緑に色付く。ポットにタオルを被せて蒸らしておきながら、人数分のカップを用意して食堂に持っていく。


 食堂に戻ると料理のお皿は全部空になっていて、みんな食後の余韻に浸ってるみたい。


「食後のお茶よー。みんな飲むでしょ?」


 タオルを外すとふわっと爽やかな香りが広がる。みんなの前にお茶を注いだカップを置くと余韻に浸ってた魔王様も身体を起こした。

 芋の葉茶を飲んで一息ついた魔王様はゆっくりと口を開く。


「お前のしてきたこと、よく分かった。余は少し誤解をしていたようだ。もう一度名前を教えてくれるか?」

「あたしはハルよ。ダンジョンマスターのハル。よろしくね、グウェルさん」

「うむ。よろしく頼む、ハル」


 最悪な第一印象だった魔王様との仲も改善したし、実験のこれからについても話し合った。

 明かりと肥料と水の量をそれぞれ調整した実験を続けていくことになって、農業担当のコボルトさん達が全面的に手伝ってくれることになった。


 あれ、なんか忘れてるような気がするんだけど…何だっけ?



世話係コボルトのテリーくんは目上の人にはッス口調ですが、ハルちゃん相手には一生懸命見栄を張っています。小型な身体付きの男の子です。モデルはテリア系。


雑草と呼ばれてた黄色い花の植物はモロヘイヤと明日葉をモチーフにしています。生命力が高くて栄養素も高いものになっています。ちなみに、モロヘイヤの種子とさやには毒があるそうなので、魔境に生える生命力逞しいフィクションの植物としてお楽しみ下さい。


お芋のモデルは里芋の形に紫芋の色と味って感じです。蔓の生え方はN古屋駅前の撤去されたモニュメントを想像してもらえたら。



すっかり馴染んだハルちゃんですが、さて何を忘れているのでしょう…?


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