3.邂逅
ホルスト視点です。
お口わるわるになってますが、腐ってるだけなので時期に良くなるでしょう。きっと。
王都の中央通りからは少し外れた静かな酒場の奥、テーブル席に座るローブ姿の男女が何か話すでもなく酒を煽っていた。
ちょっと人が下手に出てやってたらあいつら揃いも揃って付け上がりやがって!
やれ魔物の討伐だ、やれ調査の護衛だ、挙げ句の果てには狩りに付き添えだぁ!?ふざけんじゃねぇよ!!
「……ハァ…もう全部燃やしちまおうかな……」
男は持ってた木のジョッキを机に叩きつけるように置いたかと思えば、ズルズルと頬杖を崩して机にもたれ掛かってしまった。
同席している女性はそれに一切関わることなく、グラスを空にしては新しい酒をウェイターに注文している。
そんな異様な雰囲気の席に向かって行く小柄な男の子。今にもスキップし出すんじゃないかって程の上機嫌で残っていた席に着いた。
「え、なんでホルストもう出来上がってんの?」
「それはね〜、今日の仕事がクッソつまらなかったからよ〜」
「…もしかして、モニカも結構キテるの?」
「もちろんよロビン。あんのクソ豚ん゛んっ爵のケツが八つに割れるまで蹴り上げてやりたかったわ〜」
「それは…見たいような見たくないような。まぁまぁ、今日はいい情報ゲットしてきたからさ!ホルスト起こしちゃってよ」
モニカと呼ばれた白衣の女性は持ってる杖に魔法を発動させてから、もそもそ起きあがろうとする男の頭に思い切り叩きつけた。
バゴォォン!!と派手な音が鳴った割には、バウンドして起き上がった男の頭に傷はついていない。
「んだよモニカ、起きてるっつうの」
「気付けなんだからスッキリしていいでしょう?あなたも、私も」
「はいはい!そんなことはどうでもいいから!僕が調べてきた情報聞いてよ!」
今日は酔っ払っちまいたいと思っちゃいたが、モニカの気付けのせいで一気に酔いが醒めた。あいつ思いっきり殴るためだけに無駄に高度な即時回復魔法発動させるんだからどうかしてるよなぁ。
ロビンが集めてきた情報を聞くために耳を寄せる。関係なさそうに思えた話を聞いていくが中々どうして面白い。
どんな奴らなのか、会ってみるのが楽しみになってきたな。
翌朝、いつもの通り冒険者ギルドに顔を出した。
俺達は一月前からその日の仕事しか受けないようにしている。俺達が魔王城へ向かおうとしてるってことはギルドも承知の上だが、如何せん最近王都近辺でも魔物の被害が多くて出発できずにいる。
魔王軍が始動したという噂が広まってから、普段見たことのない魔物が現れたり、気性が激しくなるなどの事例が数多く報告された。
そんな不安定な状況の中じゃあ、俺達みたいな近接職のいないバランスの悪いパーティでも必要とされるらしく、未だに出発できずにいる。
俺もロビンもモニカもそれぞれソロでA級まで到達した異常者の寄せ集めだからバランスもクソもあったもんじゃねぇがな。
いつもの窓口、肝の据わったおっちゃん受付で今日も指名の仕事が入ってるか確認してると、やけにザワザワ騒がしくなった。
何だ何だと騒がしい方を見てみると、そこにいるのは赤い豪華なマントを羽織った冴えない顔の金髪男、小賢しそうな茶髪に、陰気な黒髪の痩せギス。
おっと早速のご対面じゃねぇか。受付は放っておいて挨拶にいかねぇとな。
「おんやぁ、勇者様御一行が冒険者ギルドに何の御用でぇ?」
「…ギルドマスターに呼ばれまして」
「王様やお姫様の間違いじゃありませんか?今ここではひよっこが安全に受けられるようなクエストはないんじゃないかなぁ?」
「何なんですか、あなた。そこどいてくれません?邪魔なんですけど」
「自分でどかしてみたらどうだい、ひよっこよぉ〜」
勇者は困り顔で、茶髪は意外と短気みたいだ、痩せギスはしれっと脇を抜けていこうとするから杖で塞いでおく。
モニカとロビンはニヤニヤしながら眺めてるし、周りの冒険者連中は俺がちょっかいを出した時点で壁際まで離れてる。さて、勇者様はどう出るかな?
「ちょっと急いでるので、後にしてもらえませんか?」
金髪男は痩せぎすを妨害するために伸ばした左手の杖を降ろさせようとする。穏やかな言葉遣いにしようと心掛けているだろうに、力んだ手から抑えきれない殺気が洩れてるぜ!っと。
こちらも負けじと魔力を巡らせてみると、向こうも稚拙な魔力操作で対抗してくる。
荒ぶる魔力がぶつかり合うことでギルド内に風が吹き荒れる。
実力のない奴らは膝をついて圧倒されないようにしてるが、モニカとロビン、それに金髪のお供二人も平気そうだ。ふぅん、中々やるのかもしれねぇな。
「外でやれお前らッッ!!」
面白くなって魔力の出力上げてたら、ギルドの奥から一足飛びで現れたギルドマスターから拳骨を喰らっちまった。まぁしっかり魔術防壁貼ってるんだけど。
「ギルマスあの魔気流の中どうやって飛んできたんだよ」
「まだまだお前らに負けるつもりなどないからな。気合いだ!」
「イッテテ……こいつが喧嘩売ってきたんですよ!」
「着いて早々何をしてるかと思えば、まぁちょうどいいか。着いてこい」
そう言って勇者連中とギルドの奥へ向かおうとするギルマスは、途中で止まってこっちを振り返った。
「そこの命知らず共も一緒に来い」
ハァ?なんで俺達も呼ばれるんだ?
よく分からねえが、俺よりも早くロビンとモニカがついて行っちまってるんだからしょうがねぇか。
ギルドの奥にある階段を登って三階にある会議室に通された。
部屋に入ると中心に大きな丸テーブルがあり、その周りには何脚かソファがある。適当なソファにどかっと座ると、モニカとロビンも寛いで座ってる。勇者連中はその後緊張しながら別のソファに座った。
ギルマスは全員が座ったのを確認してから話を始めた。
「さて、お互いに何で集められたか分かっていないと思うが話は簡単だ。実はな、お前達がこれから行こうとしている場所……一緒なんだわ」
あぁ、そうか。こいつら勇者御一行だもんな、そりゃ魔王城にも行くか。
勇者連中は驚いた顔でこっちを見てるが、そりゃアイツらからしたら俺達が魔王城へ行く理由なんて想像もつかないだろうな。
「こいつら…というより、ホルストが魔王城に行きたがっててな。しかし、知っての通り最近魔物の活性化が起きているため高ランクパーティが王都を離れることは難しいのが現状だ。そこで、魔王討伐の旅に出なければならない君達とホルスト達のパーティを統合することで、ホルストは魔王城へ向かえるし、マイルズくん達は戦力が充実する。ちょうどパーティの構成も近いし学べることも多いと思うがどうだろう?」
……なるほど、悪くない。俺達だけでも何とかなるとは思っていたが、パーティが充実するのはいいことだ。しかし──
「おいおいおい、そのガキ共のお守りをしろってのか?足手纏い抱えながら行ける程楽な道のりじゃねぇだろ」
「まだまだ君達には及ばないが、中々優秀みたいだぞ?何でも三人でエリュセロスを討伐したとか」
「ほー、そりゃ上々。いいぜ、その話乗った」
「ハァッ!?何勝手に話進めてんだよ!さっきまで喧嘩吹っ掛けてやがったのにいきなり同行するとか!」
マイルズとかいう勇者くんも他二人も不満気だな。
だが、目的のためなら手段を選ばないイッッッチバンこえぇ奴がウチにはいるんだよな。
「まぁまぁ、落ち着いてちょうだい。さっきはごめんなさいね?ホルストったら中々出発できなくてイライラしていたみたいで。実は私達だけでは不安だったの…一緒に来てはもらえないかしら?」
ウチの最終兵器モニカが頭まで被っていた純白の外蓑を外すと、大きく開いた胸元が露わになる。胸の谷間には祝福の紋章が光っていて、身体に沿うように作られた純白の衣はあいつの大きな胸を強調する。まるで追い討ちをかけるように胸を寄せて、下から覗き込むような視線を送ればもうKOだ。
あいつ真っ赤な顔して「あっ……や……」しか言えなくなった。
「というわけで、勇者様方も異論はないそうですわ。これからよろしくお願い致しますね」
にっこり笑うモニカが俺はこえぇよ。
魔気流とは、覇気と覇気のぶつかり合った余波みたいなものです。もっと適当な呼び方があれば良いのですが、私に捻り出せたのはこれでした。何かいい呼び方ありませんかね… ?
サンタモニカ・ディ・ストリーク
通称モニカ 現在の大神官を務めるストリーク家の四女 神職としての力量はストリーク家においても歴代類を見ない程のものであったが、嗜虐心が高く暴力的なため神官ではなく冒険者として生きる道を選ぶ。一時は悪魔憑きなのではないかと本気で心配される程であったらしい。職業は破壊僧。
ロビン・ファインダー
小柄で童顔な男。年齢不詳。出自も不明。偵察職であるにも関わらず両手に短剣を持って巨大なモンスターにも嬉々として襲いかかる。感知や罠解除、偵察潜伏何でも完璧にこなすが、戦闘狂なのが玉に瑕。職業は突狂星。




