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お花畑女子のゆるふわダンジョン最強説  作者: 豆の木豆太郎
人気すぎて困っちゃう!曲者が集まる花畑ダンジョン
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11.祝!冒険者デビュー!!

途中名もなき冒険者Aの視点が挟まります.

 

 冒険者ギルド……そこはワイワイとにぎわう中、可愛い受付嬢や命を賭けた戦いをくぐり抜けてきた精悍な顔つきの男と女がいるものよね。


「(落ち着けぇ…落ち着くのよハル……第一印象が一番大事!)」


 胸の高鳴りを落ち着かせながら、開いたままの大きな扉を抜ける。


 明るい外からの落差で室内はすごく暗く見える。人の顔も全然見えないけど、ぐしゃり顔だけは厳禁!目がシパシパして強張りかけた眉間に意識を集めて力を抜くの。ギャルなめんじゃないわよ!


 とりあえず第一関門はクリアね。


 朝教室で扉が開く度に誰が来たのかみんな一斉に確認するみたいな、そんな視線を感じるから、少しだけ口角を上げる。にこやかな表情は敵対心を抑えるって雑誌で見た気がするし!


 案内してくれてる門番のおっちゃんについて行きながら、段々と慣れてきた目で少しだけ周りを見回す。

 目立つピンクの髪を隠すためにフードを被っているから、あたし達の正体に気付く人はいないみたいね。


 第二関門もクリア。


 門番のおっちゃんが受付嬢に用件を話し掛ける間、ここがあたしの勝負所!!

 ふぅ…と一つ息を吐き出したら、そっと被っているフードに手を掛けてオーーーーープン!

 フードの中に詰め込まれた後ろ髪に一度手を通して、ファサッと整えると髪からは微かな甘さのフローラルな香りが漂う。


 耳元の髪に手櫛をかけてそのまま耳に掛け、偶然!まさに今!この瞬間に気が付きましたよって感じで、顎のラインに手を添えたまま周りを見る。

 高速でイケメンをチェック。瞬きをするのと同じタイミングで左に三回、右に一回振り向いて、自分が注目を浴びていることに気付いたらすぐに前に向き直って少し俯き下唇を噛む。


 これぞパーフェクト!乙女の恥じらいを可憐に演出できたわ!!

 内心「ッシャア!!」ってガッツポーズ決めてたんだけど、あたしのこの頑張りは儚くも崩れ去るみたい…。


 門番のおっちゃんと話し終わった受付嬢さんは、あたし達を案内してくれる雰囲気になったんだけど、向かう先を見たら案内先が自分からやってきていたみたい。彼女は「あっ、ギルマス……」って声を掛けようとしたんだけど、ちょっと遅かったの。


「おうハルちゃん!遅かったじゃねぇか。待ちくたびれたぜ」

「……ちょっとゴブリンに遭ってね。ていうかギルマスがわざわざ迎えに来ないでくれる?VIPみたいじゃん」

「VIP(すごい人)も何も、おめぇさんは正真正銘すごい人じゃねぇの。何言ってんだ?」


 はぁ〜。乙女の恥じらいも何もかも終わったわー。あたしのドキドキ青春物語よサラバダー……。




 ─────




 その日の街の話題は、彼女一色だった。


 冒険者ギルドに現れた彼女。ギルドマスターが呼んだ「ハル」という名前しか分かってはいないが、それだけでも十分すぎる程だ。


 俺達冒険者がたむろするギルドに案内されてやってきた小柄な女の子。女戦士しか日頃見ることがない俺達からしてみれば、手足や腰は今にも折れそうな程細く見える。豊かな胸と尻は決して下品に見えることがなくて、貴族のお嬢様ってのはこういう感じなのだろうと想像した。


 フードを外して桃色の髪があらわになった時、一瞬花畑にでも来たかのような錯覚を覚えた。

 艶一つ乱れることのないその髪を耳に掛ける仕草で軽く絶頂を迎えた男が何人もいたことだろう。


 その難関を乗り越えた男も、次の瞬間に息を止めた。


 俺達の不躾な視線に気付いた彼女は当たりを見回してから恥ずかしそうに下唇を噛んだ。

 甘く熟したベリーのようなその唇に白い歯が突き立てられたのを目にした瞬間、俺らの意識は一つにまとまっていたと思う。間違いないね。


 そんな彼女はギルドマスターの客人らしく、執務室へと案内されていった。

 話し振りでは貴族のお嬢様というよりも砕けた感じではあったが、あのギルマスと親しげに話している時点でヤバいくらい重要な人なんだろう。


 階上へと消えていく彼女を全員が無言で見送ってからは、そりゃあもう火が着いたように騒ぎ始めた。男も女も受付嬢ですら、皆(とろ)けた顔をしている。

 ある者は案内してきた門番に詰め寄り、ある者は知り合いへと声を掛けに走り、その他大勢は街の銭湯に身体を清めに走った。何しろ俺もその内の一人だから……なッ!!


 彼女の噂はあっという間に広がり、街中その話題で持ちきり。

 後日街中に現れた彼女を目にした奴らは密かに熱狂していたって話だ。


 あぁ〜あんな可愛い子とお近付きになれたらなぁ〜。




 ─────




 ガルちゃんの後に続いて階段を上って、三階に着いた。


 そこはワンフロア丸ごとガルちゃんの執務室になってるみたいで、豪華な装飾の扉を開いて中に入ると、お仕事する机と会議するような机があった。

 会議するような机の方を使うみたいで、ソファに座ると程よい沈み込みと何か高くて良さそうな革の感触が迎えてくれる。


「まずは、ようこそイグナシオ冒険者ギルドへ」


 ニヤリと笑ったガルちゃんは続けて言う。


「ここまで意外と遠かっただろう。疲れちゃいないか?お前さんらも装備を緩めるといい。この部屋の安全は保証するぜ」


 そうは言ってもみんな私に判断を任せるみたいにこちらを伺う。

 頷いてあげれば、窮屈だった頭装備や首元を緩め始めた。


「結局護衛は玉葱の坊ちゃんらと毒花の嬢ちゃんになったんだな。後は誰がいるんだ?」

「アムちゃんがそこの窓の外にいるよ」

「ほう。全く見えんな。それなら並大抵の相手には遅れをとることもないか」


 でしょでしょ〜。実際コウくんライくんジンくんとサリーちゃんも強くなってるし、ゴブリンにも圧勝だったことを教えてあげたの。


「どうせならお前らギルドカード作ってみるか?」

「えっ、モンスターでも冒険者になれるの?」

「一応検査の中に『人族に害をなす意思があるか』を確認するものがあるが、魔物かどうかを判別するものではないからな。あると便利だぞ」


 なんでも、ギルドカードは身分証明書になるだけじゃなくて、自分の能力を表示したり使えるスキルや魔術が記録されたりもするらしい。しかも冒険者ギルドでの個人口座とも紐付いてて、どこの冒険者ギルドからでもお金を預けたり引き出したりできるの。

 魔力パターンを記録して本人かどうか判断してるみたいで、セキュリティもしっかりしてるんだって。魔導秘物マジックレガシーの力ってすげー!


 この部屋にもその個人情報を記録するための魔導秘物マジックレガシーがあるみたいだから、先にそれだけやっちゃうことにしたの。

 石板の上に半球型の水晶が乗ってて、そこに手を置くとぶわぁっと光が溢れてしばらくすると元に戻る。みんな順番に手を置いていって、カードができるのはまた後でなんだって。


「まずはこれからのことを話そう。三日後にこの街の領主館でハルちゃんの歓迎パーティが開かれる。今日と明日は自由に観光してもらって構わないが、明後日の夕方に領主館へ向かうことだけは忘れるな」


 領主さんが開いてくれる歓迎パーティにお招きされたのが今回の目玉なんだけど、こじんまりやるとは言え正装しなきゃいけないんだって。だから前の日から泊まって準備する必要があるの。

 明後日の夕方冒険者ギルドに来れば、ガルちゃんが案内してくれるらしいので、それまで何して過ごそうかワクワクしちゃう!


「オッケー!明後日の夕方にここね!バッチリ」

「お、おう。頼んだぞ…?」


 バチコンウィンクまで決めたのに、なんだか不安そうな顔するガルちゃん。もうっ!失礼なんだから!


 話は終わったから、一階に戻って受付嬢からギルドカードを発行してもらうことになった。

 階段を降りていくと、ソワソワしてた空気が静まり返っていって、みんながあたしのこと注目してた。


 いや、ここまで注目されてるとガチで恥ずかしいかも。


 顔が熱くなっていくのを感じながら、何食わぬ顔で受付まで行く。今絶対顔赤いじゃん、やだもう。

 にっこにこ笑顔の受付嬢さんからギルドカードをもらって、確認してみる。


 ─────

 名前:ハル   年齢:19

 性別:女性   ランク:Fかけだし

 職業:魔従師テイマー

 スキル:初級水魔法、初級風魔法

 加護:大地の大精霊の祝福

 ─────


 横に伸びる棒グラフが二つあって、一つはHPでもう一つはMPみたい。100%表記になってて具体的な数字じゃない。能力は六角形のグラフになってて、こっちにも具体的な数字はない。

 力、防御、魔力、精神、敏捷、運の六つで、あたしのグラフは割と小さめかな。その中でも精神と運が高いみたいで、回復役ヒーラー向けなんだって。


 ていうか職業テイマーなんだね!てっきりダンジョンマスターって出るのかと思ったけど、そもそも人族の職業にはないもんね、納得〜。


 みんなのギルドカードも確認してみると、みんな年齢は0歳だった。そりゃそうだ、もうすぐ一歳だもんね。


 職業はコウくんが剣術士ソードマン、ライくんが槍術士ランサー、ジンくんが盾戦士ガードナー、サリーちゃんは魔法使い(ソーサラー)になってる。

 能力はコウくんが全体的に高いバランス型、ライくんは防御が低い分素早いタイプ、ジンくんは控えめだけど防御と精神が高いタイプに分かれてて、サリーちゃんは魔力と精神が高いタイプだね。


 みんなで見せ合いっこしてたら、ガルちゃんが横から覗いてきて何か感心してるみたい。


「中々バランスの取れたいいパーティじゃねぇか。前衛が二人に遊撃手が一人、ソーサラーがいてハルちゃんは回復魔術が多少使えるんだろう?」


 あんまり分かんないけど、いい感じみたい!全然興味なかったけど、あたしもお試しで冒険者してみようかな?



 玄関まで送ってくれたガルちゃんに手を振って、冒険者ギルドを出発する。

 時刻はまだお昼時、とりあえずお腹も空いたしご飯食べに行こうかな!街のご飯屋さんってどんな感じなのかなー!


サリーちゃんの職業の魔法使い(ソーサラー)ですが、人族であれば魔術師ソーサラーって表記になります。響きは一緒なのでギルドカードをじっくり見ない限りバレないでしょう。

ちなみに受付嬢はハルちゃん達をVIP対応しているので、個人情報を盗み見たりしてはいません。VIPの対応を間違えたら軽〜く首が飛ぶので、怖くてできませんね。

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