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お花畑女子のゆるふわダンジョン最強説  作者: 豆の木豆太郎
人気すぎて困っちゃう!曲者が集まる花畑ダンジョン
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9.いつもの日常?

後半視点が変わります。

 

 熊さんが現れたことで恐怖のお花見会と化した日から十日、ダンジョンはすっかり元通りの穏やかな感じに戻っている。


 咲き誇る花畑、のんびりと過ごすダンジョンモンスター、賑やかな冒険者達、そして大きな盃をペロペロ舐める熊さん。うん、今日も平和だね!

 スムージーを飲み終わった熊さんの身体を大きなブラシでゴシゴシといていると、気持ちよさそうに目を細める。


「お客さ〜ん気持ちいいのはここですかぁ?それともここかなぁ〜?」


 熊さんはそれには応えずに黙って首元をブラシに当ててくる。あぁ〜可愛い〜。

 ダンジョンの中を行き交う冒険者の人も最早慣れたもので、微笑ましく見てるみたい。




 お花見の日に熊さんが帰ってから、イグナシオの街では大騒ぎだったらしい。主レベルのモンスターが浅層にまで出てくると、普通のモンスターはパニックになって暴れたりするらしいの。

 だから街の高ランク冒険者を掻き集めて警戒態勢を取っていたんだけど、特に何も起こらず三日が経った。


 そして四日目、ダンジョンにひょっこりと熊さんが現れた。


 約束通り人族は襲わずにこっそりと来た熊さんは、スムージーができるまで日当たりの良い花畑でまったり待ってた。

 それからも三日おきに来ては静かに帰っていく熊さんに、冒険者の人達も警戒する気を失くしたみたい。


 今じゃスムージーだけに留まらず、あたし達がお茶会するテーブルでスイーツつまんだりもするようになったの。


 距離感が近くなると、よく言えば貫禄のある悪く言えばボサボサな毛皮が気になってきちゃったから、試しにブラッシングさせてもらえないかお願いしてみるとあっさりOK。


 一度ジャバジャバ水洗いしてドライヤー掛けながらゴシゴシブラシかけてくと、汚れとか抜け毛とかがいっぱい出てきて一回りスッキリして見えた。マジで色々出てきて悲鳴あげちゃったわぁ…。野に生きるモンスターだもんね、そうだよね。


 それ以降毎回ブラッシングさせてもらってるんだけど、最初はビクビクしてたウチの子達も慣れてきて、暖かい陽射しを浴びた熊さんがポカポカ気持ちいいのか、ホーンラビットがくっついてゴロゴロするようになったの。


 これでもうみんなメロメロですわ。もう可愛くてしょうがない。

 今やダンジョンの新名物みたいな扱いで、見に来る人までいるんだよ。カワイイは正義ってことだよね!




 耳の後ろから首元にかけてブラシをかけながら熊さんに話しかける。


「熊さんさぁ、もうウチの子になっちゃえばいいのにー」

『……俺にも縄張りがあってだな……』

「それってどこなの?結構遠いんでしょー?」

『……ま、まぁな。ここから二つ山を越えた先だな……』

「そんなに!?じゃあ縄張りごとこっち来ちゃえばいいじゃん!」


 熊さんは「うぬぅ」とか「むむむ」とか唸ってて、考えてくれてるみたいだけど頷いてはくれない。まぁ仕方ないかー。

 考え込んだまま戻ってこないから、熊さんの毛にお花編み込んで遊んじゃえ。



 結局熊さんは編み込まれたお花にも気付かないまま帰っていった。今度来たとき怒られちゃうかな?

 さて、じゃあ今日も熊さんのブラッシングして出てきた抜け毛で毛織物でもしましょうかね!


 折角強い熊さんから出た素材の毛を無駄にするのはもったいないってことで、アムちゃんとおばあちゃんに加工してもらってるんだよね。長い毛一本一本がすごくしなやかで弾力があるから、それをアムちゃんの糸で次の毛と絡めながら繋げていく。それを編み上げてできたのがこちら!


 豪掴熊グラップリングベアのチェインメイル:恐ろしい強度を誇るグラップリングベアの毛をプリズムフライの糸で編み込んだ逸品。非常に軽く服のように着られるが、その強度は鋼鉄のプレートメイルをも上回る。プリズムフライの糸が表に出ないよう縄編みになっているのがお洒落ポイント。防御+80 器用さ+12


 見た目は控えめな艶のあるグレーのニットワンピースでめちゃ可愛なんだけど、完全に鎧扱いなんだって。

 試しに冒険者ギルドでどれくらいの値打ちがあるのか計算してもらったら、金貨100枚は下らないって言われてびっくりよ!


 まずはあたし用にワンピース編んでくれたんだけど、リストバンドとかヘッドバンドにもできるの。編み方を格子編みにすれば柔軟性はなくなっちゃうけど、その分盾みたいな防御力も出せる。

 熊さんから出た抜け毛はいっぱいあるから、時間は掛かるけどまだまだ作れるんだよね。



 熊さんのニットワンピで防御力も上がったから、そろそろダンジョンの外にも遊びに行ってみたいなー。




 ─────




 どこまでも広がる暗闇の中煌めく星と虫の囁きのみが支配する時間、マスターが寝静まってからダンジョンモンスターだけでの集会が開かれます。


 メンバーが集まったことを確認して、静かに議題を切り出します。



「それでは、ハル様の外出に付き添う人員の選定会議を始めます」



 今日集まったのは各モンスターの代表者。

 砲塔マイマイからマイタ、ビックロップポーターからマメキチ、エスケープゲッコーからカゲアンナ、山婆グランマウントのおばあちゃん、プリズムフライのソレアム、グラスウィッチのサリー、オニオンユースのコウ・ライ・ジン、樹妖精のメル、霧妖精のキャロと、私を含めて10名です。


「ハル様をお守りしたい気持ちは皆同じであると思いますので、誰がこの任務に適しているのか考えましょう」

「ハイッ!私空飛べるし姿も消せるからいいと思うの!」

「そうですねぇ。ダンジョンの外ということは人族への対策を考えねばなりませんものねぇ」


 勢いよく手を挙げたソレアムは確かに適任に思えます。透明の護衛がいれば相手の不意をつけるでしょう。


「それならば、人族に見た目が近い私達はどうでしょうか?」

「男手があった方がきっと安心できるよね?」

「俺達なら連携もバッチリだしな!」

「それならあたしだって!パーティ組む時に魔法使いは大事なんでしょ?」


 コウ・ライ・ジンとサリーも競い合うようにアピールをする。皆背格好はちょうど良いのですが、どうしても初々しさがあって少し心配ですね。


『 僕達はぁ 早く動けないからぁ お留守番だねぇ 』

『俺らは一人一人がそんなに強くないからなぁ…アム嬢ちゃんが行くなら出番はねぇなぁ』

『私は行けますわ!小さき物なら荷物に潜り込むことも容易いですし、うってつけではなくって?』


 マイタ、マメキチは自らが適していないと申し出て、カゲアンナはサポートとしてアピールします。

 こういう時には我先にと騒ぎ出しそうな妖精はどうなのかと見やると、渋い顔をしています。


「私達妖精は眷属からずっと離れていることはできないのよね。一時的な旅行程度なら大丈夫なんだけどね…」

「もし外出先でハルちゃんに何かあったら、眷属から離れた私達はその揺らぎを真っ先に受けて不安定になっちゃうし…」


 なるほど、妖精族にはそのような制限があるのですね。半精神生命体であるが故の事情でしょう。

 皆のアピールを聞いて、ひとまず私の中での選定は決まりました。


「私が選んだメンバーを発表します。異議や改善点などあれば申し出てください」


 唾をゴクリと飲み込み、静かに次の言葉を待ちます。


「まずはコウ・ライ・ジンとサリー、防具を固めて人族に偽装しハル様を守ってください。カゲアンナはハル様の荷物に紛れてサポートを。スケープリザードの配置を変更していつでもこちらに連絡できるようにしてください。そしてソレアム、あなたが守護の要です。頼りにしていますよ?」


 皆の意見がそのまま通った形になりますが、誰も異論はないようですね。選ばれたメンバーはやる気をたぎらせています。

 私はダンジョンマネージャーを預かる身ですので、ハル様不在時のダンジョンを管理しなければなりません。おばあちゃんをつけることも考えましたが、老人を連れているのは弱味とも取られ兼ねない。この選出が今のダンジョンで考えられる最善であると信じています。


「それでは、ハル様の外出までに各自装備や配置を整えておくように。以上、解散」


 何事もなくハル様が楽しんで帰ってこられるよう、最善を尽くしましょう。


ホーンラビットが熊さんの近くでゴロゴロするのは、単純に気持ちがいいってよりは強者の匂いを身体に染み込ませようとしているからです。熊の威を借る兎ってところですね。


熊さんのブラッシングで出てきたのは、大人になると苦手になる小さな生き物達とその死骸ってところです。流石にハルちゃんでもそれは無理でした。

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