7.お花見するよ!!
ダンジョン視察団が到着して歓迎したりホルストと模擬戦したりでドタバタしていたけど、一段落してから三日が経った。
視察団の王子様と元宰相さんはダンジョンマンションの上の階に作られたVIP向けのお部屋、特に完全分解式の水洗トイレが大層お気に召したらしい。ご飯も大満足らしくて、いい関係が作っていけそう。
ホルストは模擬戦の後不貞腐れたようにゴロゴロしてたんだけど、コウ・ライ・ジンくんとサリーちゃんが自分達も模擬戦がしたいって押し掛けていって、いつの間にか戦闘訓練の相手をしてくれるようになったみたい。
最初は渋々やってる感じだったけど、だんだん乗ってきたみたいで楽しそうにやってたわ。本人は隠してるつもりらしいけど丸わかりなのよね。
今思い返してみると、あいつってば性格は悪いけど力加減自体はできるし、思ったよりも悪い奴じゃないのかも。
「次来る時にはパーティで対戦しようぜ。今度はぜってぇ勝つ」
「ウチらはいつでも相手になるし?てかあんたパーティとかちゃんと組めるわけ?」
「へっ!ほざいてろよ」
自信満々でニヤリ顔を残していくあいつはやっぱりムカつくけど、どんな仲間を引き連れてくるのか楽しみでもあるわね。
正式にこの国──ソルアンブリード王国──からダンジョン保護の報せが届いたのはその二週間後。
視察団が帰っていってからすぐに街から訪れる冒険者は増えて、冒険者ギルドの支部を設立するための準備も前倒しして進められていた。
ギルド支部を作るってことで、改めてダンジョンマンションの改装に取り掛かったの。
元々広く作られてた食堂を、丸っとギルドにしちゃおうと思うんだ。食堂奥の倉庫にしていたところをギルドの事務所にして、その手前にカウンターを設置。同じように広くしたキッチンにもカウンター設置して、お酒も出せるようになるといいよね。
後の細かいところはお任せしちゃうとして、次はマンションの方ね
マンション部分も上と下に増築して階段も立派に作っちゃう。
食堂からマンションの方に繋がるところにはおじいちゃんが管理しやすいように受付みたいな部屋を作って、必ずそこを通って出入りするようにする。
部屋には必ず窓をつけたいから全部崖側に作っていて、通路を挟んだ反対側はVIPエリア以外の階をぶち抜いて吹き抜けにしちゃって、身体を動かしたりできるようにしてみた。そこで訓練でもストレッチでも相撲でもなんでもしたらいいよ。ついでにダーツ盤なんかも置いといたんだけど、気に入ってくれるかな?
マンションはMAXで60人くらいは泊まれるように作ってみたんだけど、一月もする頃には入りきらなくなって野営する人達まで出てきちゃったの。
だから、渓谷エリアの崖下に野営ができるような場所を確保してあげた。まずは石ころだらけの地面に柔らかい土を敷き詰めて逞しい下草も生やしてあげて、トイレと泉も増設しておいた。
よくよく考えてみると、滝があって川があって、水飲み場もトイレもあるってこれキャンプ場みたいじゃない?
仕方がないからマンションのお風呂も拡張してあげて、男女別にしてみんなが入れるようにもしちゃいましょう!
そんなこんなで、ダンジョンマンションの長期滞在を受け付け始めたんだけど、住んでるのは全体的に女の子が多くて、野営の方は男の子が多くなったの。女子チームの圧がまぁ凄かったのよね……アハハ。
最初は全室長期滞在で埋まっちゃいそうな勢いだったんだけど、そこはギルドの人が調整してくれて短期滞在用のお部屋を10室残すことで、魔の森の深いとこに挑戦したい高ランクの冒険者の人にも使ってもらえるようになったの。
マンションの改装はこれでおしまい。
レイラちゃんを召喚するために使って空っぽになったDPも着々と増えてるから、最近はのんびりアイテムとかお菓子とか作りながら、ダンジョン領域を少しずつ拡げていってる。
平和なのはいいことだよねぇ。
それから二ヶ月。
ダンジョンの周りでは赤や黄に色付いていた木達も葉を散らしてしまってすっかり寂しい色合いになってきた。季節は初冬、こっちの言葉では閑水の上節になるかなって頃。ダンジョンに来る冒険者の格好も厚着になっていた。
そんな中でも!ウチのダンジョンは春模様です!
色とりどりの花が咲き乱れて、果実やナッツは実り豊かで、いつもどこかから良い香りが漂ってくる。
そしてイグナシオの街からダンジョンへと一直線に繋がる道には薄らピンクの花が咲き誇る美しい木が両脇に並びます。
そう!これは桜!!……に見えるモンスターなんだよね、はい。
チェリッシュミミックっていうモンスターで、本当に桜の木そのものって感じで花びらもひらひら舞い落ちるんだけど、綺麗な花に見惚れてるところをパクッと食べちゃうんだって。
ウチは栄養豊富だからそんな必要もないみたいだけど。
ダンジョン視察団の王子様達が来る時に、馬車3台が横に並べるくらいまで道が切り開かれちゃったの。それが全然可愛くなかったから、その道沿いにダンジョン領域を拡げていってやっと魔の森を出るところまでたどり着いたの!
道の両脇にチェリッシュミミックを並べて、馬車1台が余裕を持って通れるくらいの道にしたわ。もし行きと帰りの馬車がかち合っちゃったら、片っぽが木と木の間に寄せるの待ってから通ってねって感じ。
やっと桜通りが出来上がったので、みんなでお花見に行こうと思う!
ウッディだけは大きすぎるから遠目での参加だけど、後はみんな参加!動くのが遅い子達は転移で移動させてあげて、ダンジョンの中心部を空っぽにするから冒険者のみんなも誘って、みーんなでお花見!
「ねぇねぇ、エレオノーラちゃん。お花見の用意できたんだけど、みんな準備はどうかなー?」
「もちろんバッチリですよ!このダンジョンの宴会ってだけでもう、みんなお預けされたハウンドドッグみたいですもん」
今日完成する見通しが立ったからあらかじめ宴会するよって伝えてたんだけど、このダンジョンの果実酒や蟻蜜酒が飲めるってだけで大騒ぎ。分け前が減っちゃうからって極々僅かな人だけ街から誘ってきたみたい。
全員で集まって選定会議までするし、もうどんだけって思ったけど、アレは美味しいからしょうがないよね。
ギルド支部のまとめ役エレオノーラちゃんが声をかけると、準備は万端みたいですぐに出発することになった。
渓谷エリアの崖階段を登って花畑を通り過ぎると、雪化粧をした緑豊かな森の中に薄桃色の道が現れる。
枝いっぱいに咲き誇る淡い花びらが風に乗って踊るように舞い散る様に、みんな食い入るように見つめちゃってる。
そうだよね、分かる分かる。桜って綺麗だもんね。
あたしはずんずん進んで先に準備してるみんなのところに合流。
今日は豪快にBBQをするよ!串に刺したお肉と野菜をどんどん焼いて食べていくの!
魔の森で獲れたお肉にはおばあちゃん秘伝のスパイスを振りかけて、街から運んできたお肉は塩とタレの二つを用意。お野菜は生でも食べられるくらい新鮮でジューシーだから、ピーマンとかエシャロットは串の間に挟んで香ばしく焼き上げる。
あたしのイチオシは、スケリザテイルのベーコンでアスパラガスとかズッキーニを巻いて強火でガッと炙るの。一気に火を通して旨味をギュッと閉じ込めたら遠火で中までじっくり。カリカリとトロトロの食感が……んもう、ベストマッチ!!
トレントベリーとか果物とフレッシュチーズをベーコンで巻いたものも、甘じょっぱさがクセになるの〜。
後はサラダもご飯物もおつまみも色々と用意してあって、本日の目玉の飲み物は3種類!
果実酒とフレッシュジュースのカクテルと、蟻蜜酒の炭酸割り、ハーブ酒を辛口のジンジャーエールで割った大人向けのものがあるの。どれも美味しいのよ。
え、あたしがお酒飲んでいいのかって?ダンジョンマスターはそもそも人間とは違うらしいから飲んでも大丈夫なんだって。しっかり味見させてもらいました!
さてさて、BBQの準備も整って冒険者ギルドの人たちもぞろぞろとやってきた。妖精さん達も集まってるしお花見始めちゃいますか!
「えー、みんな集まってくれてありがとう!今日はブレイコーよ!食べて飲んで楽しく過ごしましょ!」
ウオォォォォ!!って雄叫び上げながらお酒のコーナーに集まる冒険者の人達。
わらわらと集まった先にいたおばあちゃんの冷ややかな笑顔に出迎えられて、みんな一斉に背筋シャンとしたみたい。アレなら飲み過ぎも大丈夫そうね。
妖精さん達はあの身体のどこに入るんだっていうくらいよく食べるから、今日はとにかく大量の食べ物を用意したの。特に甘味に目がないから各種取り揃えておきました!お見舞いに来てくれたお礼も一緒にね。
モンスターのみんなも冒険者のみんなも、ワイワイと楽しんでるみたいで一安心。
さて!あたしもお肉食ーべよっと!
スンスン…スンスン…。
平穏なダンジョンに忍び寄る不穏な気配。
この時のあたし達は、まさかあんな出来事が起きるとは予想もしていなかった。
ホルストは花畑ダンジョンのほのぼのに当てられて多少丸くなってます。
この後ギルドでも人柄が丸くなったという評価がされ、A級からS級に昇格する話が出たとか出ないとか……。




