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お花畑女子のゆるふわダンジョン最強説  作者: 豆の木豆太郎
人気すぎて困っちゃう!曲者が集まる花畑ダンジョン
28/71

5.ウチのダンジョンのとっておき!

最後視点切り替わります。

 

 リベンジマッチするとは言え、ウチのみんなも初めて聞いたからびっくりしてるよね。

 でも大丈夫。もうメンバーはここに揃ってるから!あたし、マイス、ウッディ、メルちゃん、キャロちゃん、おばあちゃん、おじいちゃん、あともしもの時のためのマイ・ハナ・ヨネダ・マイタちゃん達ね。


 おばあちゃんとおじいちゃん以外は遠距離攻撃ができるメンバーよ!



 準備は万端、王子様の方を向いてうなずいて開始の合図をお願いする。


「それでは、これよりハル対ホルストの模擬戦を開始する!始めぇッ!!」


 開始の合図が出されても、ホルストはまだ動かない。こちらの様子をニヤニヤしながら見てくる。ふふふ、予想通りね。


『レイラちゃん、予定通りにお願い。盛大にやっちゃって!!』

『ハ〜イ。ワカリマシタ〜』


 あたしがこっそり念話でやりとりしてることなんて知らないホルストは呑気な顔してるわ。ちょっと会話でもして時間稼ぎしようかな。


「時間制限があるのに随分と余裕じゃない」

「まぁな。前回は圧勝だったから、今回もお前の作戦に乗った上で圧勝してやろうと思ってな」

「そんなこと言ってられるのも今の内なんだからね!」


 雲が立ち込め辺りが暗くなっていく。すぐにポツ、ポツと木々の葉に雨が落ちる音がし始める。


「お、天気もお前の味方してるみたいだぜぇ?だが、魔術の炎はこの通り、雨の中でも使えちゃうんだよなぁ〜」

「へぇ、そうなの?知らなかったわ〜。でも、それは普通の雨なら…でしょ?」


 ニヤッとしながら手に持つ旗をクルクルして見せれば、ホルストも少し怪しみ始めたみたい。


 降り始めた雨は強さを増していって、地面に向けて白い線を引いて落ちていく。


「この雨はお前んとこのが降らせてるのか?そんなことできる奴いなかっただろ」

「そうね、つい一週間前まではいなかったわ」


 今やザァザァと雨が降りしきる中、流石に不味いと思ったのかホルストは呪文の詠唱をする。


「──火の神アスティムンドにこいねがう。猛る息吹よ雲を晴らしたまえ 熱気昇流アップドラフト!──」


 馬車が丸ごと入りそうな程大きい魔法陣が光を発すると、束になった熱気が雲を突き抜け大きな穴を開ける。青い空が見えて、砂漠に繋がる扉でも開けたかのような乾いた熱気がこちらにまで吹き荒れる。


 しかし押し上げたそばからどんどんと黒い雲が押し寄せて、その穴は塞がれてしまった。


「なっ!んだよそれ!!」

「ふふふふーん、ポイントめちゃくちゃぎ込んだからねぇ〜。ねぇレイラちゃん!」

「ネ〜」


 空をフヨフヨと漂いながらこちらにやってきたのは、新しく仲間になったダンジョンモンスターのレイラちゃん。ホルストに負けてから、炎対策をなんとかしないといかん!ってことで、1万DPをかけて召喚したの。


 レインラビリシア:清らかな水辺に棲む無楯貝類のモンスターが、長い年月を経て進化した姿。自在に雨を降らせることができ、気分が良いと雨の中をふわふわと揺蕩たゆたう姿が見られるだろう。下半身は柔らかな軟体で上半身は美しい女性のよう。頭部に兎のような突起があるが耳ではなく触覚。性別に関しては不明。


 天候を操って雨を降らせることができるモンスターって、めちゃくちゃお高いのよね。

 名前に龍神とか、女神とかって付いてるモンスターが多かったんだけど、それはもう億越えで手も足も出なかったの。ポイントが安いのもいるにはいたけど、その子が犠牲になると雨が降るタイプしかいなかった。


 レイラちゃんは貝類モンスターってだけあって、攻撃したりする力がほとんどない代わりに天気を操作することができるのよね。それでも1万DP掛かるし、名付けでさらに1000DP使っちゃったけど。



「さぁ!この大雨の中でも同じこと言えるのかしら!?」

「クッソ!インチキしやがって!!」

「オホホホホ!やられた分はしっかり返してやるわよ!みんなやっちゃって!」


 いい笑顔でみんなにGOサインを送ると、めちゃくちゃ張り切って走っていった。

 マイスは袖から無数の触腕を鞭みたいにしならせて、おばあちゃんとおじいちゃんは鬼の形相で木製の刀と薙刀を振り回していて、メルちゃんとキャロちゃんは魔法を打って更に追い込んでいく。


 みんなもホルストにムカついてたんだなって思うと、ちょっとスッキリする。


 ホルストは炎以外の魔術も幾らかは使えるみたいで、最初は石の柱とか風の刃で攻撃していた。距離を詰められてからは魔術を使ってる余裕は無くなって、杖で普通に打ち合ってたんだけど……魔術師ってそういうもんなの?


 試合時間5分にも満たない内に、地面に転がされ続けたホルストが起きてこなくなった。泥だらけのまま大の字で寝転がるホルストが悔しそうに言う。


「クソッ…降参だ!」

「やったー!勝った勝ったー!あースッキリした」

「ハル様、おめでとうございます!」


 ぴょんぴょん跳ねて喜んでたらマイス達が周りに集まってきてくれた。みんな目をウルウルさせてるんだけど、そんな感動的だったかな?


「……あの一戦以降、ハル様のいつもの明るさが失われて皆心配しておりましたが、杞憂だったようで安心致しました」


 見える範囲でも、念話からでも、みんながあたしのことを心配してくれていたことがよく分かった。

 あの時はめっちゃくちゃ悔しくて、絶対にリベンジしてやろうって思って色々準備するのに忙しかったんだよね。


 ホルストの態度がムカついたからってのが一番の理由だったんだけど、改めてこのダンジョンのマスターはあたしなんだなって思いもしたの。


 何かがあった時にみんなのことを守ってあげられるようになりたい。あたし一人にできることなんて全然だけど、いっぱいいっぱい考えないといけないんだよね。


 だから、ちょっと焦ってたのかもしれない。

 でもみんながあたしのこと心配してくれて、自分にできることを一生懸命してくれてたみたいで、すごく嬉しい!


「みんな心配してくれてありがとね!全然大丈夫!」


 にっこり笑って見せるとみんなもほっと安心した顔をする。



 さて、勝負も着いたしそろそろこの雨も何とかしなくちゃね。



 ──パリパリ──



「レイラちゃん、もう雨止めても大丈夫だよ!」

「ワカッタ〜。デモ、ワタシトメラレナイヨ〜?」


 えっ、マジで!?


 詳しく聞いてみると、雨を降らせることはできても、晴らすことはできないそうで、このまま雲が晴れるのを待つしかないみたい。ホルストの方を見ても、寝転びながらヘトヘトだってアピールしてくるしどうしよう……。



 ──もそもそ──



 視察団の王子様達はすっかり馬車の中に入ってて、話の続きはできそうもない。

 ウチのダンジョンって基本青空天井な感じだから、こういう時にはちょっと不便なんだよねぇ。屋根付きの東屋でも作ろうかな?


 そんな他愛もないことを考えていたら、どこかから声が聞こえてきたような気がする。



 ──ハルちゃん、ハルちゃん──



 周りを見渡しても、みんながいるだけで特に変わったところはない。

 そういえば、なんだか雲が薄くなってきたかもしれない。


 厚い雲間から光が差し込んできた時、何かがヒュンと空に飛び出してきた。

 飛び出したその子が淡く虹色に色づく透き通った羽を広げると、辺り一帯が明るくなる。みるみる内に雲が押し流されていって、いつもの晴れ渡る青空が広がる。


 キラキラと降り注ぐ光の中、顔いっぱいに笑顔を咲かせてあたしを見ている女の子がそこにいた。



「ハルちゃん、ハルちゃん!やっとお話できるね!」



 姿が変わっても、モジモジと指先を絡めながら照れるところは変わらない。


「…アムちゃん!?アムちゃんの声が聞けるなんて嬉しい〜〜〜」


 あたし達は手を取り合ってはしゃいで喜んだ。

 アムちゃんはあたしよりも少し小さいくらいの人型になっていて、背中には大きな羽が生えてる。ほぼ透明に近いその羽は光にかざすと淡く虹色に輝いて見える。めっちゃくちゃカワイイ!綺麗!スタイル良!

 進化が終わったんだねって話をしてたら、進化する時のことを教えてくれた。


「ハルちゃんがすごく悲しんでたのが分かって、私も悲しくなったの。でも、それよりもね、その悲しみを晴らしてあげられたらなって思ったの。そしたら繭になってて……」


 や〜んその気持ちが嬉しいよ〜。あ、じゃあ空が晴れたのもアムちゃんのお陰なのかな?ちょっ、すごいじゃん!


 もうリベンジのことも視察団のこともすっかり頭から抜け落ちて、いつもののんびり和やかな空気がダンジョンに満ちていた。




 ─────




 模擬戦の顛末を見届け、流石に雨が酷いからと馬車の中から事の顛末を見ていた第三王子と元宰相。

 元宰相が左目に掛ける片眼鏡がきらりと光る。


「ふむ。これは中々」

「どうです?何が分かりました?」


 私が掛けている片眼鏡は、実はダンジョン産の魔導秘物マジックレガシーでして、高度な鑑定の効果がついた逸品なのです。

 曇り一つないレンズに映った情報は、外から窺い知ることはできず所有者にのみ明かされます。


 プリズムフライ:人型へと進化した希少な蝶の魔物。人語を介し魔法も扱うことのできる高度な知能を持つ。浄化や解呪の能力を持つとされ、鱗粉や涙にはその力が宿ると言われる。危機に陥ると自らの姿を透明にして逃げるため捕まえることは難しい。


「非常に希少な魔物のようで、浄化や解呪の能力があるとのことです」

「益々このダンジョンの価値が高まったというわけですか。あまり高まり過ぎても良からぬことが起きそうではあるが……」

「そうですな」


 本当にその通り。このダンジョンを我が国が保護し協力関係を結ぶことができれば多大な利益が生まれる。


 人類に協力的なダンジョンマスターなど初めてのことで、我々も実際にダンジョンへ来てみるまでは所詮魔物と侮っていた。保護するという名目の元こちらに有利な条件をつけたり、武力をチラつかせて服従を迫ろうかと考えていたが、歓迎の席でそれが間違いであったことに気付かされた。


 決して脅威的な魔物がいるわけではないが、ダンジョンマスターを守ろうと魔物達が一致団結している様が見て取れた。我々をもてなすために用意された食事も格別に美味で、ダンジョンマスターの人柄も至って穏やかであった。


 リベンジがしたいと言われた時にはどうなることかと思われたが、このダンジョンの戦力も見ることができた。

 ダンジョンマスターのハル殿は相手に大きな怪我をさせることを嫌っているようだが、仮にそれを加味せずに考えると戦力は中々のものとなる。


 示し合わせたかのように我々二人ともが、これは逃すべきではないという認識を持った。

 これは気を引き締めて交渉に当たらねばなるまい。


この世界では医療の発達が遅れていて地球よりも寿命が短いです。

元宰相は宰相の座を長男に継ぐことができたので、派閥争いだとかにはあまり縁がなく早めの余生を過ごしています。とはいえ50代半ばを過ぎているのですが。

王家との仲も良好なので、異例だらけの本案件にてサポートを任されています。


魔導秘物マジックレガシーの説明文は人類視点となっているので、いつものモンスター図鑑とは少し異なります。フライは飛ぶ昆虫という意味があるそうなので、決してハエではないことをここに明記します。


ちなみに、魔導秘物マジックレガシーは遺跡やダンジョンから出土する神秘の道具を指します。現在も発見されることから遺物ではなく秘物と表記しております。

人族が作り上げる魔導具マジックアイテムとは別になるので要注意!

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