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お花畑女子のゆるふわダンジョン最強説  作者: 豆の木豆太郎
人気すぎて困っちゃう!曲者が集まる花畑ダンジョン
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4.負けてから…

マイス視点から始まります。

 

 ホルストなる戦闘狂の男が先遣隊の代表から止められたことで緊張の糸が切れたのか、ハル様はぐったりと倒れ込んでしまわれた。

 急いで駆け寄りハル様の様子を伺うと、疲れ果てて眠っていました。ハル様の看護はおばあちゃんに任せ、冒険者ギルドマスターのガルニアと先遣隊代表の元へ向かいます。


 先遣隊の代表は少しでっぷりとした身体に整えられた口髭が特徴的で、強さは一般人と変わらない程度でしょうか。ひとまずガルニアに任せて様子を見ていましょう。


「イグナシオの冒険者ギルドマスター、ガルニアと申します。急なお越しで歓迎の用意もできず申し訳ございません」

「構わぬ。お主ら近隣の街の者が洗脳されている可能性もあったからな」


 まぁ、そう思われるのは致し方ありませんね。その程度では我々は動じません。

 ガルニアはちらりとこちらを見てから、話を続けます。


「それにしてもやりすぎなのではありませんか?」

「このダンジョンの安全性確認もする必要があったからな、危険が迫らねば本性は分かるまい?」

「ぐっ、そうですね……」

「最もです。それで、我らがダンジョンの安全性は如何いかがでしたか?」


 ハル様の心を痛ぶったあの野郎については許すことなどできませんが、話の筋は理解できます。


「ダンジョンマスターの女は極力殺傷を避けようとしておるし、頭も弱そうだ。配下のモンスターどもも大したことはなさそうだからな、私兵団一個大隊もいれば十分に制圧できるだろう」


 我々の戦力は守りに特化した物であり、一度敵対してしまえば懐に入るのに苦労を要すると思うのですが、本気なんでしょうか?ガルニアの方を見ると、渋い顔をしています。まぁ、安全が確認できたと言うことで良いのでしょうか?


「それでは問題ないと?」

「あぁ、詳しい話は本体が合流してからになるが」

「それでは後のことはガルニアに任せます。我々はこれで」


 皆を引き連れてハル様の元へと向かうことにします。


『ダンジョンマネージャーよりダンジョンモンスター各位へ緊急連絡。要警戒対象がダンジョン内に滞在するようです。おじいちゃんはマンションの冒険者へ連絡した後マンション周り一帯の管理を。ある程度の裁量は任せます。トリチームは怪我の処置、トカゲチームは監視網の強化を。何か異変があればすぐに連絡を。以上』


 移動しながら緊急連絡を済ませ、ウッディの裏側に回ります。

 ベッドに横になるハル様はいつもの朗らかな寝顔ではなく、どこか険しい表情をしています。



 ……いけません、私まで落ち込んでしまいます。今はできることをしなければ。



 ふと気付くと、サリーがハル様のベッドに身を乗り出して手を握っています。


 こんな時だからこそ、リラックスが必要ですね。

 袖から種子を振り撒いて成長させます。紫の花が連なる微睡蘭と爽やかな香りのする夢見草の花が辺りを覆うと、ハル様の寝顔も心なしか落ち着いた気がします。


 いつもは騒がしいメルとキャロも今は物静かで、二人とも時折誰かに話し掛けている様子。おそらく妖精・精霊間ネットワークで通信しているのでしょう。今は少しでもDPが欲しい状況なのでとても有難い。


 私も自分の仕事をすることにしましょう。




 翌日、サリーからの連絡で起きました。


『マイスさん、今起きたらマスタァのベッドの周りが真っ白で出られないです』

『マスターに異常はありませんか?』

『それは大丈夫。ふわふわしてるの』


 一体何が起きてるのか、ベッドがあるウッディの裏側に行くまでもなく理由が分かりました。ウッディの根元に大きな白い繭ができています。

 場所からしてソレアムの繭なのですが、広く糸を張っているためにハル様のベッドまで覆われてしまったのでしょう。


 サリーと通信しながら場所を特定して、糸を掻き分けてベッドまで開通させます。

 ハル様は変わりなく眠っておいでなので、引き続きサリーに見ているよう頼みます。



 昼過ぎになると、約20時間寝続けたハル様が起きました。長く寝ていたからか少しボーッとされていましたが、軽い食事をしている内に意識が覚醒していったご様子です。

 何か考え込んでいらっしゃいましたが、食事が終わると真っ先にダンジョンコアへ向かいました。


 現在のDP、ダンジョンモンスターの健康状況を確認してから、モンスター召喚のウィンドウを出す。絞り込みの条件を幾つか入れて、コストの高い順に表示、十数億DPを要するモンスターから流し見ていきます。女神、ドラゴン、精霊……とスクロールしていき、あるモンスターで指が止まる。詳細を何度も読み返し必要DPを確認したらすぐにウィンドウを閉じる。


「マイス、あれから先遣隊の人達はどうなったの?」

「このダンジョンの安全性が確かめられたとかで、本体が到着するまで滞在するようです。ダンジョンマンションは利用しないようで、渓谷エリアの崖上にキャンプを張っております。ホルストを含め、怪しい動きをする者は今の所おりません」

「そっか」


 色々任せちゃったね、ありがと。と小さな声でおっしゃってから、アイテム作りに取り組まれました。

 一言も発することなく、凄まじい集中力で幾つものアイテムを創り出していきます。



 迷彩柄のお守り:紛景蜥蜴スケープリザードの皮で編み込まれたお守り。中には走守宮スケープゲッコーの縞抜け皮が入っており、危機に見舞われた時一度だけ危機から脱出できるかもしれない。俊敏+5


 兎角の首飾り:清らかな水、薬草、黒曜蟻の琥珀糖、妖精の鱗粉が振り入れられた液体に三日漬け込まれた兎角は黄金色に輝く。持ち主に幸運をもたらすと言われる。精神+3 運+10


 悪戯妖精の粉爆弾:小さな小さな紙の包み。包みを開くとたちまち粉が舞い激烈な刺激をもたらす。涙と鼻水は止まることを知らず、僅かに身体が痺れる。持ち運びに注意。



 ハル様は日々アイテム作りに熱中し、気付けば一週間が経っていました。

 この一週間の間、我々ダンジョンモンスターも各々できることに取り組んできました。コウ・ライ・ジンとランは冒険者に頼み込んで魔の森へと向かい、おばあちゃんおじいちゃんは模擬戦をしていた様子。メルとキャロが連絡をしたからか妖精達がひっきりなしにお見舞いに訪れていました。



 そろそろダンジョン視察団の本隊がダンジョンに到着するようです。


 ガルニアからは逐次情報を受け取っていたので、今回は不測の事態にも対応できるよう準備が整えられています。ハル様からは、お偉いさんを歓迎するよう言い付かっていますので、そちらにも抜かりはありませんが……。




 ─────




 ダンジョン視察団とかいうお偉いさんが馬車に乗ってやってきたわ。キラキラ煌びやか〜で派手な紋章の付いた馬車が3台!その周りには馬に乗った騎士がいっぱい囲んでて、一糸乱れぬ陣形ってやつ?鎧もツヤッツヤでお馬さんも鎧でめかし込んでるの!


 ほわぁ〜あれいくら掛かってんのかしら〜贅沢ねぇ〜。


 それにしても、街からこのダンジョンまで馬車で来るの無理じゃね?って思ってたんだけど、なんでも先遣隊の人達が邪魔になる木を伐採してたみたい。

 あたしはここ最近ちょっと集中してたから今日知ってびっくりしちゃった。後で木植えとこーっと。


 到着した馬車からは金縁のマントを纏った青年と片眼鏡のお年寄りが出てきた。

 こっそりガルニアが教えてくれたんだけど、この国の第三王子と先代の宰相なんだって。だからこの警備なのね〜。お疲れ様です!


「ようこそ、あたしのダンジョンへ。ダンジョンマスターのハルよ」


 ……あ、あれ?歓迎する側が最初に挨拶するよね?あたし何か間違えちゃったかな?

 なんか騎士の人がざわざわしてるし、雰囲気悪くない?


「あ、遠いところまで来てくださってありがとうございます!もしかしてお疲れですか?歓迎の用意をしているのですが…」

「あ、いや、歓迎ありがとう。道中穏やかでしたので疲れてはいません。私がこの視察団の代表の──…」


 王子様と元宰相さんが自己紹介してくれたけど、名前が長くてあんまり覚えられなかったのよね。ちょっとびっくりしてただけみたいだし、問題ないよね!


 早速歓迎パーティの会場に案内するわ。



 今日のメニューは新鮮素材のフルコースよ!ガルちゃんの紹介で、イグナシオ一番のコックさんが泊まり掛けで来てくれて、おばあちゃんと一緒に貴族向けの料理を考えてくれたのね。


 前菜は、血芯ラディッシュと柑橘のマリネ〜生ハムに包まれて〜。

 スケリザテイルの生ハムは旨味がすっごくて、シャキシャキ食感と程良い酸味との相性抜群!もっともっと食べたくなっちゃう!


 スープは、空気豆の冷製ポタージュ。

 隠し味として花咲米が入っていて滑らかなとろみがついているの。揚げてパリパリにした花咲米をトッピングしてるんだけど、それがいいアクセント。


 魚料理は、魔巻貝と浮遊魚のアクアパッツァ。

 お魚はこのダンジョンにはないので、魔の森で撮って来てもらったものね。魔トマトの彩りが素敵。


 ソルベは、トレントベリーのソルベ。

 オニキスハニーで漬け込まれたベリーリキュールが果汁に加えられることで、洗練された極上の甘さに引き立てられた逸品よ。


 肉料理は、月光鹿のロースト。

 酸味のあるフレッシュな野苺のソースを少しつけて食べてみると、もうほっぺたが落っこちるような美味しさ。


 果物は、我がダンジョン自慢の完熟ジュクジュクトレントベリー。

 実の隅から隅まで熟すようウッディがとびきり目を掛けた奇跡の果実。限界まで甘露を溜め込んだその身は、最早衝撃。



 当初はダンジョンで出される料理なんて……って雰囲気がビシビシ伝わってきていたんだけど、料理を一口食べ始めてからは雰囲気が変わったのよね。

 美食を食べ慣れてるはずの王子様と元宰相さんが目を見開く程。魔の森やダンジョン産の食材は癖が強い物が多いけどその分旨味がもんのすっごくて、衝撃的だったみたい。


 食事が終わりお茶を出していると、王子様達も良い感じでほぐれて和気藹々(わきあいあい)とした話し合いができたわ。

 そこら辺の細かいことはマイスとガルちゃんに丸投げね!




 そんなことよりも!あたしには!果たさねばならないことがあーーーーーーーる!


 話も大分まとまったところで、王子様に話を切り出す。


「先遣隊に炎の魔術師がいましたよね?その男ともう一度勝負がしたいのですが、いいですか?」


 王子様が見た先の先遣隊代表が見た更に先には一人遠くでダラけている深紅のローブ男。

 先遣隊代表の男からあらましを聞いた王子様は、せっかくの友好的な関係が崩れないよう模擬戦にすることで合意してくれた。


 ルールはダンジョン全体vsホルストの旗取り合戦。あたしが持つ旗をホルストが時間内に取れればホルストの勝ち。あたし達は時間いっぱい旗を守り切ればOK。殺傷するような攻撃はせず、守る側も危険を感じたら引くように条件を定めた。


「おう、嬢ちゃん。また俺とヤリてぇってのか?今度は泣き出すんじゃねぇぞ」

「ふん!目にモノ見せてやるんだからね!!」


 さぁ、リベンジマッチといくわよ!!!!!


ハルちゃんの一週間の頑張りが次回明らかに!乞うご期待!!

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