3.厄介な奴がきたよ!!
ちょっとだけハラハラ注意です。
最後少しだけ視点変わります。
身体測定が終わってから、みんなに素材を少しずつ分けてもらって解散になった。
最近脱皮したばっかりだっていうカゲジロウくんは抜け殻を、マメコちゃんとハトミちゃんは巣に落ちてる抜け羽とストックのお豆を持ってきてくれた。
黒曜蟻はお腹の蜜壺にごく稀に結晶ができてしまうことがあって、成分が濃すぎて自分達では使えないからってくれることになった。
コウ・ライ・ジンくんには涙が出るまで擽り続けて、流れた涙を掻き集めたりもしたの。
そんなこんなで集まったのは、走守宮の縞抜け皮、巨嚢鳩の硬羽・空気豆、角兎の角片、黒曜蟻の琥珀糖、白百合の麻痺毒液、妖精の鱗粉、玉葱人の刺激涙、苔惰獣の白爪花。
一つ一つが強い意味を持つものではないけれど、組み合わせ次第で色んなアイテムが作れる予感がビンビンしてるわー!みんなありがと!
とりあえず今日はもう暗くなってきたから、素材を大事にしまっておいて晩ご飯にしないとね!
ベッドサイドのチェストに丁寧にしまってから、おばあちゃんが作ってくれたご飯を食べに行く。
次の日からいつも通りの日課をこなした後にアイテム作りをして過ごしたの。
前作った時に比べて素材のレベル?が高くなってるみたいで、たまに失敗することもあったけどそれはそれで楽しかったんだよね。
何個か出来上がったアイテムをウチらで使えるように試してたら、遠くから物凄いスピードで野太い声が近付いてきた。
「おぉぉぉぉい!嬢ちゃぁぁぁぁぁん!!俺だぁぁぁぁぁ!」
「どこの誰よー!ガルちゃーん!!」
ウチのダンジョンと街との間に簡単な道ができている渓谷エリアの方からじゃなく、最短距離の魔の森を突っ切る形でイグナシオの冒険者ギルドマスターガルニアが走ってくる。
全力ダッシュで滝みたいに汗かいてるガルちゃんは、息継ぐ間も無く話を切り出した。
「王都からお偉いさんが来るのは前に話したよな?その日程が決まったんだが、実はその知らせが届く前に先遣隊が出発していたらしいんだ。その中に少し厄介な奴がいてな……」
ガルちゃんがそんなに急いであたしらに教えに来るくらいヤバい奴なの?ちょっと不安になってきたんですけど…。
「おうおう、厄介な奴ってぇのは俺のことかい?」
声が聞こえてきた方を一斉に振り向く。そこに立つのは深紅のローブを纏った男。被っていたフードを下ろしてニヤけた顔を露わにして話を続ける。
「随分な言い種じゃねぇか、堅岩のガルニアさんよぉ」
「ちっ、遅かったか。お前の厄介さはよく覚えてるよ。ホルスト」
そのホルストとか言う男は、顔に派手な傷跡のあるくたびれたイケメンなんだけど、メッッッチャニヒルな表情してるわ〜。テレビの中でしか見たことないけど、なんかホストとかにいそうな感じね!
よく見たら、ローブの男の後ろにキラキラした服装した人がいるし、要はお客様ってことでいいのかな?
「街に寄らずに直接ダンジョンに来たのはお前の我儘なんだろう?なぁ、狂炎のホルスト」
「ハハハハ、やっぱりあんたにはバレちまうか。なんだかおもしれぇダンジョンらしいじゃねぇか。俺ぁウズウズしちまってよ」
そういった男は、いきなり熱く渦巻く程の魔力を解放した。
「ちょっくら殺り合おうぜダンジョンマスターさんよ!!」
瞬く間に魔力が集まり、一つの火球が現れる。
えっ、ちょ、お客様じゃないの!?これマズいんじゃ──
「くらえっ!業火球!!」
「させません!!ウォーターヴェール!」
ローブの男が渦巻く炎の球をこっちに向けて放った瞬間、マイスがあたし達の前に水の幕を下ろしてくれた。
水の幕で炎の球が止められたかと思ったけど、消火しきれなくて大きな爆発が起きた。吹き飛ばされてお尻痛いんですけどぉ!!
「ほう、そいつが報告にあったアルラウネか。俺様の業火球を防ぐとはやるじゃねぇか、もっと遊ぼうぜぇ〜」
「くっ!これ以上の暴挙は許しません!!」
何アイツ。これがお遊び……?
「ふざけんじゃないわよ!!ホストだかブルストだか知らないけど、ウチで好き勝手してんじゃないわよ!」
『みんな緊急事態よ!マイマイさんチーム、アイツにポッピンミサイル全力発射!』
『はーい!』
ダンジョン全体に緊急アナウンスをかけてから、砲塔マイマイに攻撃司令を出した。
心なしかいつもよりハナちゃん達の返事も怒り気味みたい!
「んだぁ?お前。俺の名前はホルストだ。ホ・ル・ス・ト!覚えておけ……よっ!」
ローブの男が杖を一振りすると、すごい勢いで飛んできていた爆裂稲が空中で一斉に爆発する。
「これも情報にあったんでな。ほれほれ、次はないのか?んん〜?」
むっっっかつくぅぅぅぅ!!!!目にモノ見せてやるわ!!
『キャロちゃん!アイツの周りに霧張ってちょうだい!鳥さんチームは霧が掛かったらアイツ目掛けて豆鉄砲発射よ!その後はマイスよろしく!!』
『りょーかい!』
余裕面の男の周りが白んでいって、すぐに目の前も見えないくらいの濃い霧に覆われた。ビックロップポーターとビーンピジョンが一斉に豆を打ち出す。一つ一つの威力はそんなにでも、これだけあれば多少ダメージが──
「熱気流!!」
男が呪文を唱えると、熱風が上に向かって吹き上げていって、豆鉄砲は直接当たらないし霧は晴れるし!んもぅ!!
でもこれで終わりじゃないし!マイスさんやっておしまいぃ!!
「捕らえよ。アイヴィバインド」
地面に落ちた豆が急成長して、無数の蔦がローブの男に絡みついていく。足元から拘束されて首元まで覆われているにも関わらずニヤけた表情を止めないのが気持ち悪いわね。
ホッと一息つこうと思ったんだけど、ニヤニヤ男の方からなんかムワッとした熱気が漂ってくるんですけど……。
「ハハハハハ!いいねぇいいねぇ、想像以上だよ!だが、残念でしたぁ!火炎竜巻!!」
ニヤニヤ男は自分ごと炎の竜巻で燃やしていくつもりみたい!頭おかしいんじゃないの!?
いや、普通に考えたら焼け死んじゃうでしょって思うんだけど、マイスは警戒体制を解かない。
ものの10秒程で竜巻の中を燃やし尽くして炎は散っていった。その中に立つのは、深紅のローブで身を包んだニヤニヤ男。マジでどうなってんの!?
「驚いたか?驚いたろ。このローブはな火棲蛾の糸で織られたローブで、ちっとも熱くないんだぜぇ」
ヒャハハハハ笑ってる男はさておき、どうしよう。だってそんな、ウチのダンジョンにほのおタイプなんて相性最悪じゃん。
もう無理だよ…これ以上戦ったらみんなが燃やされちゃう。
ローブ男は細い火の鞭を振り回してピジョン達を脅して遊んでる。
「やめてよ…もうやめてよ…!」
何か考えなきゃいけないのに、あたしがこのダンジョンのマスターなのに、涙が溢れて前が見えない。
「そこまでにせぬかホルスト。やり過ぎだ」
─────
「ちぇっ、これからが楽しいところだってのによ」
お偉いさんにそこまでだと言われちゃしょうがねぇ。
俺の足元には鋭い根がこちらの喉元目掛けて突き出していて、上空には魔力を全開にした妖精が二体。人型の魔物が三体スッゲェ殺意向けてきてて、背後にはガルニアのおっちゃんの拳が髪に触れそうな程迫ってきてる。
杖を持った手を上にあげてプラプラさせて見せる。
「お前は楽しくなると熱中して周りが見えなくなる所がある。全く、この件を台無しにするつもりか」
「へぇへぇ、悪ぅ御座いましたよ」
俺に与えられた任務はこのダンジョンの危険度調査とお偉いさんの護衛だ。
そういう名目をもらったからには盛大に暴れてやろうと思ったのに不完全燃焼だぜ。
まぁ、久々にひりつく様な戦いが出来たからよしとするかぁ…。
マイスが使っていたのは“魔法”で、ホルストが使っていたのは“魔術”です。
モンスターが自らの意思をそのまま魔力で具現化する魔法と違い、人間が同様の現象を起こすには、ただの言葉から力を伴った言語に変換する必要があります。
だから、同じ現象同じ読み方でも、表現の仕方に違いが出ることになります。
ちなみにホルストくんはとても強い魔術師なので、サラリと詠唱破棄しています。恐ろしいですね。




