21.のんびり日和!
麗かな陽射し降り注ぐ午後のティータイム。
ウッディの木陰で優雅にハーブティを嗜む。ユニコーンナッツとトレントベリーを使って作られたマカロンを摘まんで一口。んーうまっ。
メルちゃんやトレント達を助けたことから始まって、マイルズ達の元孤児グループを迎えることになり、渓谷エリアの増設やらなんやらでずっと慌ただしかったけど、それも一段落。あれから二週間くらい経って、彼らもすっかり馴染んだみたい。
あ、そうそう。ダンジョンマンションの管理をする人がいないと何かあった時に困るよねってマイスと相談して、頂上エリアに戻ってきてからすぐにモンスターの召喚をしたんだよね。
召喚したのはヤマンババァの男バージョン、その名もオトコヤマンババァ!
どっちやねーんってツッコミたくなるけど、そんな名前なんだからしょうがないよね。おじいちゃんって名付けをして、急拵えだけど戦闘能力が高くなって欲しいなって願いつつ多めにDPを渡したの。
おじいちゃんも召喚時は薄汚れてたからお風呂入ってもらってから服を着替えて、お仕事内容を伝えた。
マイルズ達が何か困ってたら助けてあげてほしいこと、悪い人が入ってこないように目を光らせておいて欲しいこと、あとはたまに報告さえしてくれたら自由にしていいとした。
召喚した次の日には早速軽い朝ご飯を作ったり、ジークくん達が狩ってきた魔物の皮鞣しもしたりと、活躍してくれているみたい。やっぱりヤマンババァは生活能力が高くて嬉しいね。
マイルズ達はしばらく街と行ったり来たりしながら生活拠点としての設備を整えていって、それが落ち着いてからは魔の森での狩りも始めたみたい。お肉が定期的に供給されるのでめちゃくちゃありがたいんだよね。
しばらくは生活できる最低限の狩りをしながら、魔物の皮や魔石、ダンジョンの薬草なんかを街で売って、後の時間は小さな子達の訓練や勉強に当てて過ごすって言ってたわ。
そうそう、イグナシオの街の冒険者ギルドからギルドマスターが直々にダンジョンを訪ねてきたこともあったの。この世界の成人男性ってデカいんだなぁってびっくりしたのよね…。
─────
「ハル様、オトコヤマンババァのおじいちゃんから面会の申請があります」
「んー、マイルズ達ってことよね。オッケー会いに行こ」
ギルド関係の話をするんだと思って何の気無しに渓谷エリアに向かったあたし達は、崖上からでも見て分かる程大きな男の人がいることに気付いた。声も大きくて快活に話してるその男の人にマイルズ達が何か文句を言っているのが離れていても分かった。
「だから!ハルとの面会はきちんと設定するから、今は帰れって!」
「なぁに折角来たのだから少しくらい良いだろう」
「何が折角だ!勝手に来やがって!!」
マイルズもお手上げの狸親父なわけね!まぁでも話し声は陽気な感じだし、マイスが臨戦態勢とってくれてるし、大丈夫かなって階段とことこ降りていったの。
わーわー言い合ってた狸親父とマイルズもあたしが来たことに気付いてこっちを見上げた。にこやかな表情のままでじっとあたしを値踏みするように見てくるもんだから格好良く決めポーズして言ってやったわ!
「あたしがこのダンジョンのマスターよ。いらっしゃい狸親父さん」
「た、たぬき?何だそれは」
「ニコニコしながら話をすり替える食えないおっさんのことかな」
ブッと吹き出す音が周りから聞こえて、マイルズ達が必死に笑いを堪えてるのが見える。よしよしウケたわ!
「それでどちら様なの?」
「あぁ、俺はこの森近くの街で冒険者ギルドのギルドマスターをやってるガルニアだ。こいつらが世話になってるな」
「世話って程のことはしてないんだけどね。あ、あたしはハルね。ウチらもお肉とかお金とかでハッピーハッピーだから全然大丈夫!」
実は魔力のおこぼれだとかトイレの分解吸収機能で土の肥料にしてるだとか他にもいいことはあるんだけど、説明がめんどいからスルーで。ガルニアのおっちゃんも話してる感じは意外といい人みたいで安心ね。
立ち話してるのも疲れちゃうからマンションの食堂に入って話をすることにした。おじいちゃんが茶器とお湯の準備をしてくれて、マイスが臨戦態勢のままお茶を入れるっていう器用なことをしてたんだけど、ガルニアのおっちゃんはそれを見て感心していたわ。
「話には聞いていたが、そちらのアルラウネは中々やるようだな」
「まぁね〜。それでガルニアのおっちゃんはどんなご用事で来たの?さっき面会がどうのって言ってたよね」
「お、おっちゃんか…」
あ、ついついおっちゃんって言っちゃったけど、そんなに年取ってないのかな?ちょっと落ち込んでたけど、すぐに用件を話してくれたわ。
「まず前提として、ダンジョンマスターという生き物はほぼ例外なく人族に対して好戦的な種であり、ダンジョンは時間が経つ程に力を蓄えて大きくなる。そのためダンジョンは見つけ次第攻略してダンジョンマスターを捕獲ないし討伐するという決まりになっている」
え、マジで!?そんな危ない関係だったの?
びっくりしてマイスの方を見てみるとジト目でこっちを見ながら何度も頷いている。べ、勉強でやったことみたい。アハハハ。
「新しいダンジョンが相次いで見つかるダンジョン活性期には、王都に発見の報告が届くと、すぐに討伐隊を編成して送り込むことになっている。今も何件か新ダンジョンの攻略が進んでいるはずだ」
ひぇぇ…そんなことになってるとは全然知らなかった。あの怪しいおっさんに集められた人達が多分ダンジョンマスターなんだよね…?捕まったら碌でもない目に遭うのはなんとなく想像つくかも。おーこわこわ。
「それで、ここのダンジョンについてだが、人族に対して敵意がなく理知的なやり取りができること、また魔の森への橋頭堡──足掛かりになることから、交渉の価値があると私は考えている」
ガルニアのおっちゃんはさっきまでの真面目な顔を崩して問い掛けてくる。
「それで、実際のところ嬢ちゃんはこれからどうしていくつもりなんだい?」
「それはもう決まってるのよ!みんなと仲良くのんびり暮らして、美味しいご飯を食べるの!人の住む街へ遊びに行ったり、素敵な男性と恋に落ちたり……とにかく色々ね!」
「ダンジョンを大きくしたり、人の街を滅ぼしたりはしないのかい?」
「当たり前じゃない!だってウチは妖精さんや精霊さんが遊びにくるだけで十分稼げてるんだもん」
わざわざ怖いことしなくたって稼げるんだから、するわけないじゃんね!あたしのダンジョン運営は綺麗なお花畑と美味しいお菓子、それにキラキラのアクセサリーで成り立ってるの!
鼻息荒くそう力説したら、ガルニアのおっちゃんもポカーンとしてから大笑いしちゃった。おもしれぇ奴だななんて褒められたからあたしも気分良くて、いつの間にかガルちゃん嬢ちゃんって呼び合うくらい仲良くなった。
ガルちゃんはウチのダンジョンが安全だって王都のお偉いさんに伝えてくれるみたいで、もし何か困ったことがあればいつでも頼ってくれって言って帰っていったわ。
またしばらくしたら、王都からお偉いさんとか学者さんがやってくるみたいだけど、それまではゆっくりできそう!
あ、そうだ!ここのところバタバタしててすっかり忘れてたけど、妖精さん精霊さんの服とかアクセサリー作りも始めなくっちゃ!実は宝箱に入れてる装飾品とかはそのための練習台だったのよね。
あたし働いたことないからよく分かんないけど、お得意様第一って奴よね!
幕間を挟んで2章へGO!




