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お花畑女子のゆるふわダンジョン最強説  作者: 豆の木豆太郎
人もモンスターも虜になっちゃう!魅惑の花畑ダンジョン
20/71

20.美味しいご飯とあったかお風呂、そしてふかふかのベッド!

お肉を捌く表現があります。苦手な方はお気をつけあそばせ。

マイルズ視点です。

 

 ハルんところのダンジョンに住まわしてもらうことになって一週間が経った。

 呼び方も別に様なんて付ける必要ないって本人が言ってるからそのまま呼び捨てさせてもらってる。




 一言で表すと、この環境は冒険者にとっての理想郷だった。





 俺達がここに住むことが決まったらまずパーティだつって晩ご飯を作ってくれた。

 マイマイ米とか言うので作ったピラフに新鮮なサラダ、温野菜は香ばしい匂いのする薄茶色のソースがめちゃくちゃ美味くて止まらなくなるし、オムレツとかなんの肉か分からない串もあってどれも美味かった。


 久しぶりに腹がいっぱいになる感覚を味わっていたら、ハルはお供の美人とサラを連れて一番乗りでお風呂に入って行った。


 ……俺達は決して育ちの良いガキじゃねぇ。こんな無防備な風呂を覗きに行こうと思う奴がいてもなんもおかしくないんだ。

 お、俺は別に興味ないが、何人か怪しい動きをしてキッチンの辺りを彷徨うろつこうとすると、途中から手伝いにやって来ていた優しそうな婆ちゃんが浴室前に仁王立ちしててな。変わらずに笑顔なんだが一瞬すんげぇ鬼の形相をした気がして誰も覗きになんて行けなかったんだ。


 その婆ちゃんはおばあちゃんって名前らしいんだが、食後のデザートにしましょうねって赤い果物を出して切り分けてくれたんだ。それが……もう、めっっっちゃくちゃに美味くて、あぁ思い出しただけでニヤけちまう。



 ハルとサラが風呂から出てきたら今度は男が風呂の番だ。

 シャワーは三つしかないって説明を受けてたけど、みんなで回して使えば何も気にならなかった。

 風呂に入るとお湯が半分くらい溢れていったが、ギリギリ全員入れた。俺は物心ついてから初めて風呂に浸かったが、すげぇ気持ち良くてポカポカするもんなんだな。


 風呂から出たらハルはもう自分のとこに戻っていったってサラから聞いた。

 驚くことばっかりで全然実感できなかったけど、俺達本当にここにいていいんだなって水を飲みながらしみじみ思った。


 部屋はみんな適当に決めて入って、何年ぶりかのふかふかなベッドに包まれたらすぐに夢の中だ。

 こうしてそれまでとは天と地ほども違う生活が始まった。



 朝の陽射しと鳥獣型魔物の鳴き声で目が覚める。

 

 命の心配をすることもなく寝心地の良いベッドで眠れたことに頭がついていかなくてしばらく呆けていたが、腹の虫に急かされてぐっと身体を起こした。

 身支度をして部屋を出ると、食堂には既にジークとザグがいて、もう一人見たことない奴がいた。そいつはおじいちゃんと名乗って、ここの管理をするのが仕事だと言う。


 ゾロゾロとみんなが起きて集まりつつある中で、いつも意地汚く寝ようとするガーラとサラを叩き起こしてから爺ちゃんが用意してくれた朝食を食べる。優しい味のする野菜スープとパンを堪能して、食後はそのまま作戦会議。


 まずは俺とマー坊とガーラとサラで街に行きダンジョンの報告とそこに住むことになった経緯の説明をする。その間残りの連中で森の中の元寝ぐらから荷物の移動をして、その後周辺の探索を行う予定。



 また一悶着起こるだろうと思って街に出発したが、特に妨害されることもなく到着した。

 門番には俺達が街に来たらギルドに知らせるよう伝わっていたらしくて、流されるままに冒険者ギルドマスターの執務室に案内された。


 マー坊がダンジョンの報告をした時には副ギルドマスターしかいなかったらしいが、今回は大柄で厳つい風貌の男が執務机に座っている。

 その大岩を彷彿とさせるような男がこのイグナシオのギルドマスターである。銀縁メガネのサブマスはその後ろに控えて立っている。


「おうおう、なんだか大変だったそうじゃねぇか」

「…大変っちゃ大変だったんだが、驚きの方が大きくてそれどころじゃない感じです」


 子どもが泣き出しそうな見た目なのに気安い雰囲気で話しかけるギルドマスターに少し面食らったが、ギリギリ敬語にできた。向こうも全然気にしていない様子だ。

 事の経緯を話そうとすると、掌をこちらに向けて話を遮られる。


「あぁ、先にこっちから謝らなきゃなんねぇことがある。なぁギルベルト」

「はい。今回ガルメリオ配下のチンピラがあなた方に迷惑をかけたのですが、その情報を流したのは私なんです。最近あいつらの態度がデカくて困っていたもので、活用させて頂こうと思いまして、ギルドから隠密に長けた腕利きを何人かつけた上で泳がせていました。危なくなったら手助けに入るよう指示していたのですが…被害はなくとも多大な負担を掛けてしまいましたね。申し訳ありません」


 銀縁メガネのサブマスはきっちり腰を曲げて謝ってくるが、まぁどのみちあいつらの所に情報は流れていっただろうし、少し早まったくらいじゃねぇかと思う。横を見るとマー坊は「道理で動きが早かったわけだ」って納得顔だ。


「えぇと、まぁ……ふざけるなって思うところですが、もっと衝撃的なことがあったので割とどうでもいいかなと」

「貰えるもんは貰うけどな!迷惑料!慰謝料!口止め料!」

「がめついっす!」

「口止め料って口封じされるやつじゃない〜?」


 マー坊とサラとガーラが騒ぎ出すのを抑えて、さっさと本題に入ることにする。


「ガルメリオのチンピラと戦闘になった時に仲裁に入ったのが先立って報告していたダンジョンのマスターだったんだ。全員まとめて気付くこともできないまま樹花精アルラウネ1人に制圧されたわ」

「全員か!?30人くらいはいただろう?」


 ギルマス達が驚くのも無理はないよな。本当に全員、ギフト持ちのザグでさえもが気付いた時には眠りに堕ちていた。


「そのアルラウネがダンジョンマスターなのか?」

「いや、違う。ダンジョンマスターは普通の(?)人族の女っぽい」


 そこから起きたことを洗いざらい話していくと、ギルマスもサブマスも口を開けっぱなしにして驚いていた。


 まとめて拘束されて昏睡、叩き起こされてからハルとアルラウネとドライアドとでお茶を飲み、チンピラは強制転移させられて、ダンジョンに住まないかと言われて、昨日まで何もなかった所に高級宿屋並みの施設がどんどんと造られていく。歓迎会と称した食事はめちゃくちゃ美味くて、知性あるダンジョンモンスターが世話を焼いてくれて、魔の森での狩りもお勧めしてきた。そんなこんなでダンジョンに住もうと思うのだけれどと話すと、二人とも無言になってしまった。


「びっくりしすぎてなんも出てこないっすよね〜分かるっす〜」

「でもハルちゃんがすんごい良い人だってのはあたしが証明するっす!」


 表情も体勢も驚く余り固まってしまっていたが、ガーラとサラの言葉でようやく動き出した。そこに畳み掛ける用にマー坊が切り込む。


「さて、それであのダンジョンはどうするんで?基本的に見つけられたダンジョンは早期制圧が推奨されてますよね。そこのダンジョンマスターは俺達が住む所から街へと安全な道も引いてくれるそうですよ?魔の森深くへ行くにも断然楽になりますし、ダンジョンからのお土産つってこんなものも預かってきたんですがねぇ……」


 そう言ってマー坊は俺たちも感動した赤い果物や、ハルが作ったって言う装飾品を執務机に広げて見せる。

 果物を渡されたギルマスとサブマスはまずサブマスが果物をじっと見て頷き、二人揃って口に入れた。


「んなっ!?うますぎねぇかこの果物!!」

「これは……すごいですね。感動するのも分かります」


 ハル達には話しちゃいないが、ダンジョンは見つけ次第制圧するのが基本だ。

 ダンジョンは時間が経つ程に力をつけていくため、街から近いものは特に警戒される。ここまで良くしてくれたのにそれを仇で返すわけにはいかない。だからギルマスを説得するために色々借りてきたらしい。装飾品の方にはサブマスが目を光らせて鑑定していた。

 ギルマスとサブマスが話し合い、とりあえずは異例として王都へ報告、自らも視察に行って安全と有用性を確認してから保護の申請をすることに決まった。


「じゃあ後は金の話だな!いくら貰えるんだ?」


 マー坊が生き生きと交渉し出して、ダンジョン発見の報酬金貨20枚、迷惑料金貨5枚で、もし街とダンジョンが提携した後の金銭については、また改めて調整役となるということになった。流石抜け目のない奴だ。



 冒険者ギルドから帰る際に、商店通りによってすぐに必要になる食料やタオルを買い込んだ。

 宿代も払わないといけないから貯めておくに越したことはないけど、迷惑料分くらいはみんなで好きに使ってもいいだろう。今度改めてみんなで来ようと思う。


 帰りも特に絡まれることもなく平和に帰ってくると、食堂で探索組が興奮していた。


 木齧り鼠(ノウツリーラット)と呼ばれる大人の腕一抱えもあるネズミの魔物を討伐してきたらしく、テーブルの上に広げていた。全員解体なんてしたことないし、特に幼い居残り組がテーブルの脇でキャイキャイはしゃいでいて始められずにいた。


 すると爺ちゃんが婆ちゃんを連れてやってきて、解体の仕方を教えてくれることになった。


 ニヤリと微笑みながら包丁を研いで、首元にザクリと刃を入れて頭を落とす。血抜きをしてから皮を剥いで内臓を取り出して洗う。大きな関節に刃を入れて腿肉バラ肉と分けていき、食べられる内臓の処理に入る。頭を割って頰肉やら何やらをこそぎ出す場面は流石にガキ連中には見せられなかったな。


 解体し終わると、そのまま料理まで教えてくれるようだ。それもみんなに見せながら教えてくれた。


 バラ肉は骨ごとブツ切りにしてスープに、腿肉は火が通りやすくなるように開いてから肝臓や心臓と一緒に塩を振って焼く。食べられない内臓は処分して、皮に残った肉や頰肉などを集めてミンチにしてハンバーグにした。最初に婆ちゃんがやり方を見せてくれて、後はほとんど自分達で料理したから、生まれて初めてまともな料理を作れたことにちょっと感動しちまった。


 買ってきた食料から婆ちゃんが他の物を作ってくれてて、早速ご飯にすることに。


 みんなで席に着いたら食前の挨拶をして早速食べ始める。

 ガキ連中に肉を切り分けてやってから、まずはスープを一口。少し癖があるが香味野菜のおかげであまり気にならない。肉もほろほろと柔らかく解けていって美味しい。腿肉のソテーは歯応えがあってガツンとした野性味もあるけどクセになりそうだ。

 ハンバーグは特に年少に人気で、混ぜてあるハーブやパン粉が柔らかく食べやすい風味にしてくれている。婆ちゃんが作ってくれた付け合わせのマッシュポテトやサラダも美味くてすぐに完食だ。


 婆ちゃんはまたいつでも料理を教えると言ってにこやかに帰っていった。俺達が飯を作ってる間爺ちゃんは毛皮の処理をしていて、それも今度教えてくれるそうだ。



 翌日からは安全なところでガキ連中が薪拾い、残りは2グループに分かれて魔物狩りをしていった。

 良く狙うのは木齧り鼠(ノウツリーラット)弾丸野兎(バレットヘア)など、脅威度が低いもののこちらを見つけると向かってくる好戦的な魔物だ。魔の森には獰猛な魔物も多いため、ダンジョン領域の近辺で慎重に狩りをしている。


 陽が沈み始める頃にはダンジョンに戻り、崖際の階段を登っていく。

 階段の天井を覆う蔦には暖かなオレンジ色の光を放つ実が成っている。この蔓角灯ツルランタンは太陽の光に向かって葉を伸ばし、そのエネルギーを実に集めるという植物らしく、綺麗なその実は驚く程苦く毒も含まれているそうだ。


 食堂に着くと今日の当番が料理の準備を始めていて、腹の減るいい匂いが出迎えてくれる。

 汚れがひどい時には先に風呂に入ってから食事の準備を手伝い、飯を食った後はガキ連中に物を教えていく。夜が更ける前には眠たくなって、朝目が覚めたら朝飯やら戦闘訓練やらをする。


 何日か狩りをして魔物の素材が溜まったらみんなで街へ売りに出掛ける。帰りには食料や必需品の他、酒や菓子を買っていく。


 腹一杯飯が食えて、命を脅かされることもなく安心して眠ることができる。時間にも金にも余裕ができて、年上の俺やジークやザグも自分の鍛錬ができるようになった。


 冒険者ギルドでは定期的な報告をギルマスないしサブマスにしているが、毎回羨ましそうに話を聞いている。この環境は冒険者にとっての理想郷だ。


 ダンジョンに住むなんて考えもしなかったが、ハルには感謝してもしきれないな。


蔓角灯ツルランタンは鬼灯がモデルです。語感はフロランタン的な感じ。

毒については鬼灯と同様なものなので、ご婦人は要注意ですね。

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