18.ジャッジを下しますの!!
ちょっとエッティな雰囲気がありますがKENZENですのよ?
メルちゃん達を追いかけ回してた方の冒険者から、リーダーっぽい男に水を掛けて起こして、昨日の話とか聞き出してたらいつの間にか話し込んじゃってた。
だって聞いてみればこのマイルズ達って若いのに波乱万丈なのよ!?うちのママがハマってた韓国ドラマもびっくりって感じ!
マイスがお茶の間セットも用意してくれるからついつい熱中しちゃって、気付いたらみんな目覚めてたみたい。
ま、まぁ手間が省けていいってことよね!
とりあえず、マイルズをリーダーとした元孤児グループが、ガルメリオって怪しい奴がやってる地上げ屋の用心棒グループにイチャモンつけられて襲われてたらしいってことが分かったんだよね。
今はごちゃ混ぜの状態でみんな拘束してるから、マイスに牢ごと移動させてチーム分けしてもらった。元孤児グループの方はたまたまマイルズがリーダーだったから粗方話を聞けたわけで、地上げ屋グループにも話を聞いてみましょうか。
「ねぇ、あなた達は何をしようとしていたのー?」
「ヘンッ!なんでテメェに言わなきゃなんねぇんだ!」
「なんでも何も……ここあたしん家だし、あんたらが騒いでたのってウチの近所なんだけど」
囚われたままで凄まれてもちっとも怖くないもんねーだ。真夜中に近所で騒いでるお馬鹿さん達をまとめてポイッとしたんだけど…って話してたら、なんか勢いなくなったのウケる。
「うーん、真面目に話す気ないー?」
「ねぇよ!!」
「そっかー、マイス何かいい案ないかな?」
「ございますよ」
にっこり笑ったマイスは生意気な態度の男に近付いて、袖から無数の緑の触腕を伸ばす。キラリと光を反射する細くて小さな刺が所々に生えていて、繊細なタッチでその男の腕や足を覆っていく。
「うっ!いでぇ!や、やめろっ!!」
男が喚くのを無視してマイスがそのまま首元までを触腕で覆ってしまうと、騒いでいた男の様子がだんだんおかしくなってきた。
痛い痛いと騒ぐのが減って、とろんとした目付きで吐息を漏らす。マイスはその男に顔を近付けてから命令を下す。
「素直に吐きなさい?」
はひぃ〜ってだらしない返事をしたところで、マイスは振り返って完了いたしました!なんて笑顔で言うの!
今の何!?なんかすごいアレな感じだったけど、何したのよマイスぅぅぅ!!
「な、何も疚しいことはしていませんよ!鍼治療というものを私なりに研究していたんです!知識を得るまでは良かったのですが、対人経験がまだでしたので実験がてらやってみて魅了の助けにしたんです!」
すごい焦ってマイスが説明してくれるから、本人も絵面がマズいことになってる自覚はあったみたいね。
チクッとした痛みとコリを解される気持ちよさが間断なく襲いくる上に、全てを茨で覆い終えた後はコリの程度も分かって、痛みがなくなり快感だけが更に増すからコロッと魅了に落ちるらしい。
すごいえげつないけど、めちゃくちゃ気持ち良さそう!あたしも今度やってもらおうっと。
従順な態度になったむさい男が裏事情を話し始めた。
ガルメリオはイグナシオの街で裏稼業のボスをしている男だ。行政の目が届かないスラムにおいて目を光らせている存在であり、暴力やその他諸々を用いて街の裏側を取り仕切っている。
度を越した違法行為や悪質な薬物の販売、街の外からの同業者の潜入などを防いで、自らの縄張りを管理する手腕は悪くないという評判らしい。しかし、そんな男にも欠点があった。
イグナシオの街にやってきて日が浅かった商人の家族が子どもを残して事故で亡くなったと聞いたガルメリオは、その子どもについて調べさせた。
当時9歳のその子どもは魔法の素質を持っていて、幼いながらも初級魔法を使うことができると分かり、保護するという名目の元傘下に加え入れるつもりであった。
身なりを整えてその子どもの元へ向かうと、マイルズ達孤児のグループがその悲しみに寄り添い慰めていた。そこに知らない大人が現れたものだから不信感を与えてしまい、魔法使いの卵を逃すことになった。
それからその孤児のグループにあの手この手で接触を図るが余計に対立を深めることになり、ガルメリオは歯噛みしていた。そいつらの情報を追う内に、他にも感知系ギフトを持つ少年や希少種族とのハーフがいることを知り、より執着するようになり手段を選ばなくなった。
クエストの妨害、裏工作、借りたばかりの長屋に対して立ち退きを求めるなど、そのどれにも屈さずに街の外で生活することを選んだマイルズ達に対して業を煮やして、直接暴力に訴え出ることにした。
イグナシオの裏を取り仕切るガルメリオの欠点とは────
──スキルマニアなのである。
「思ってたよりも大分しょうもないのねー」
「金を産むドラゴンの卵に目が眩んだ……というところでしょうか」
一通りガルメリオ側の話を聞き終えたけど、今回の騒動は10対0でこいつらが悪いみたい。
マイスが言うには、この世界の人族はほぼ全員が生涯で一つギフトを発現するらしいんだけど、幼い頃に発現したもの程ユニークで強い力を秘めている傾向があるんだとか。
魔法はギフトとは別カウントだからより複数の強みを持つことになり、また人族の中でも希少な種族は軒並み特殊能力を持っているんだって。だからマイルズ達のグループはまさに金の卵らしい。
「オッケー!とりあえず今回悪いのはガルちゃん側ってことで!街に戻ったらあんまり酷いことしちゃダメよってボスに伝えておいてねー」
「は?ガルちゃん?街に戻ったらってどういう──」
悪いことした人は没シュートです!
バイバーイって手を振りながら、迷宮主腕輪のモニターで街方面の魔の森に向けて強制排出!
木の牢だけを残して地上げ屋グループは瞬時に消えていった。それを見たマイルズ達は目を見開いて周りをキョロキョロする。
さて、後はこっちのグループね。
「ねぇ、あんた達はどうするの?魔の森で生活してくのってキツくないの?」
とりあえずマイルズに向かって話しかけてみると、眉間に皺を刻んで唸り出した。
元孤児のグループをよくよく見てみると、リーダーのマイルズ含めて高校生くらいの子が三人、中学生くらいの子が四人、小学生くらいの子が五人の構成だ。
日本人のあたし的にはみんな外国人顔をしてるから歳が分かりづらいんだけど、お茶の間で話してる時にマイルズが16歳って聞いて、そこから予想したの。
「正直厳しいな。寝ぐらが確保できたとは言え、いつ魔物に狙われるか分かったもんじゃない。ザグの感知があっても四六時中とはいかないし、段々消耗していくと思う」
いつ襲われるか緊張しながらの生活なんて絶対しんどいよね。その内ハゲそう。
「あ、じゃあウチ住んじゃえば?別に食べる物も困ってないし、何か来たらすぐに分かるし、もしまたガルちゃん達来てもマイス一人でやっつけちゃえるし!」
「ハ、ハル様!?何を言ってるんですか!!」
えーダメだったかなぁ?でも街に戻ったらまたイチャモンつけられるの可哀想くない?
今回ダンジョン領域を伸ばした南の渓谷はあんまりいいアイディア浮かばなかったし人に見つかりそうだしってことで先延ばしにしてたんだけど、あそこの岸壁に住むところ作っちゃえ。
「なぁジーク、いいのかこれ。ここダンジョンだよな?」
「さぁ…でも、こっちとしてはありがたいことに違いないよね」
「まぁまぁ、どうするかは一旦置いといて!あたしのインスピレーションが騒ぎ出してきたからちょっと付いてきて!」
マイスに木の牢を解除してもらって、孤児グループを引き連れて渓谷側に歩いていく。あたしは迷宮主腕輪から操作して先に土台作りよ!
最初にするのは道の整備からよね!
魔法が使えるジークくんと女の子のサラちゃんが逃げてきた道をゆくゆくは街への道にするとして、日当たりの良い場所に岸壁を登っていくような階段を作っていく。
足場を盛り上げて階段を作りつつ壁側も削って、崩れたりしない強さを持ちながらもゆったりとした空間のある階段にしよう。岸壁を半分くりぬいたような感じになったんだけど、まだこれじゃ雨が降った時に大変よね。
蔓植物を所々に植えて天井を這わせていく。陽の当たる外側に向かって葉っぱを伸ばすように成長させたら葉っぱの軒先が出来上がり!
岸壁の真ん中くらいのところには広めな踊り場を作って、ここから洞窟を掘って住むところを調整していこうと思うの。そこら辺はみんなに希望聞いてみるとして後回しね。何か照明になりそうなのが欲しいなと思って、ヒカリゴケとかヤコウタケをバランスよく配置している内に到着したみたい。
「んなっ!?昨日までこんなのなかったぞ!?」
「驚くのはまだまだこれからよ〜」
目を見開いて驚いてる孤児グループの反応に気分が上がってきたので、半ば諦めたような顔をしているマイスは置いておいてドンドンいくわよー!




