勇者邂逅 その3
蓮たちは、その光景を端っこで眺めていた。端といっても、訓練場は円形になっているので、壁際に突っ立っている。エターナルは戦々恐々としながら、蓮の後ろに隠れている。
しばらくすると、訓練場の中心で爆炎が巻き起こった。爆発に巻き込まれて、何人かの人が吹っ飛んでいく。誰かが魔法で攻撃したのだ。
「……派手にやるなあ」
蓮が中心を見やっていると、ふと殺気を感じた。見ると、細い青年が、木刀を構えてこちらをにらんでいる。
「や、やらなきゃ、やられるんだ……!」
そうつぶやいた後、叫びながら木刀を振りかぶってきた。振り下ろされた獲物は、蓮の脳天をとらえている。
蓮は振り下ろされた木刀をつかむと、そのまま手に力を込める。
木刀は蓮の握力に耐えられず、あっけなくへし折れてしまった。青年は思わずその場にへたり込む。歯がカチカチと震え、かみ合わない。立ち上がることもできないようだった。
蓮はため息をつくと、青年の服を襟元をひっつかむ。怯える青年をよそに、エターナルの隣に放り投げた。
「おい女神、こいつ見てろ。……お前も死にたくなけりゃここから動くなよ」
「え?わ、わかった」エターナルの言葉に続いて、青年もうなずく。
話しているうちに、何人か集まってきた。中央は文字通り爆心地だ。なら、まずは端っこにいる自分中を片付けようという魂胆だろう。にやにやと笑いを浮かべている。
まずは武器を持った奴らが襲い掛かってくる。振りかぶられた棍棒を躱して、手首を左手でひっぱたく。ものすごい力で、ごろつきの手から棍棒が叩き落された。
唖然としている男の頬に、左の手のひらが叩き込まれる。男も棍棒と同様に、横に一回転して地面へ叩き落された。
その光景を見て、蓮たちを囲っていた連中がたじろぐ。
(……この連中に、グーは駄目だな)
さっきの男に平手をかました左の感触を確かめながら、蓮は思った。さっきのでも寸前で力を抜かなければ、首と胴体がさようならしていたはずだ。グーなんぞ使おうものなら、間違いなく骨が砕ける。下手すれば体に風穴があきかねない。
そしてそんなことを考えながらも、敵は襲ってきていた。襲ってきた相手の武器を手で弾き、胸を軽くどつく。相手は向こうの壁まで吹っ飛んでいった。
蹴りなどもってのほかだ。脚力は腕力の何倍も力が出る。せいぜい使えて足払い。すっころんだ相手は、どこか遠くへと放り投げる。
木の棒での突きも、蓮が手のひらで受けると、棒が耐え切れずにへし折れた。驚く相手に加えて一人、また一人と蓮に挑み、餌食になっていく。
いつの間にやら、中央の喧騒はすっかり止んでいた。炎の玉や氷の塊やら電撃やらが蓮に向かっても飛んでくるようになる。火球や氷は手で弾き、電撃は躱す。電撃ばかりは女神と青年もあわてて必死に躱していた。
一方で向かってくる連中も、最初の時よりは力強かった。
とはいえ、相変わらずパーしか使えなかったが。平手打ちでノびてくれるのは幸運だった。
それからどれくらいの時間がたったか。蓮たちのところには誰も寄り付かなくなっていた。中央には、多くの人が倒れている。中には死者もいるだろう。多くの倒れた者のほとんどが血まみれだ。
銅鑼の音がけたたましく鳴り響いた。それと同時に、兵士長が声を張り上げる。
「そこまでえええええええええええっ!」
声が響くころには、戦うものはだれもいなかった。




