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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
短章:宝物庫に眠る漂流物
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危険物が眠る部屋



 ――カイセが出会ったその一品。

 いや、最終的には三種の品が目の前に並ぶことになった。


 (シンプルな拳銃、マシンガン、こっちは火縄銃…歴史の博物館でレプリカを見た事があるけど、これは本物…この世界ってどれだけ余所から流れ込んでんだよ)

 

 異世界から迷い込んだ異物。  

 漂流物という存在の中で、最も流れ着いて欲しくない類の代物。

 それが三つも並ぶこの場。


 (…拳銃は警察が持ってるような奴だよな?弾丸無しだけど目に見える破損はなさそう?素人だから見た目しか判別できないけど。マシンガンはボロボロで弾倉も無しで、鑑定からも破損状態なのが判別できる。そして…火縄銃。これやたら綺麗だけど、もしかして完品なのか?)


 それらの三つを検分するカイセ。

 拳銃、マシンガン、火縄銃。

 この中で一番危険なのは多分マシンガンだろうが、しかし破損状態で知識なしに復元は難しいだろう。

 対して拳銃は比較的状態が良く見えるが、肝心の弾丸がゼロなので一応すぐに問題になるようなものはない。

 ゆえに一番問題なのには火縄銃。

 これも素人目だが紛いなりにも色々と作り上げてきた技術者モドキの目が、その状態の良さに警笛を発する。


 (多分こっちの材料と技術でも作れるよなぁ…今なら俺も、バラして中身確認すれば作れそう)


 何せこちらの技術でも作れてしまう可能性が高い。

 現実的に製造量産可能な危険物が、もっとも状態が良い姿で保存されている。


 「………」

 「………」


 これらについてどう語るべきか、迷い無言が続くカイセ。

 そしてその表情をじっと見つめる案内役の守護者プロス。


 (素直にいくか)


 そうして考え迷ったうえで、伝える言葉を選んだ。


 「…これ、全部粉々に壊していいですか?」

 「は?」


 選んだうえで、前置きすっ飛ばしていきなりおかしな発言をする。

 ここにあるモノは全て国の所有物。

 どれだけ面倒な代物でも、国が持つ保管品であるのは事実。

 なのにその代物を、守る者の目の前で壊したいと口にする。

 

 「ふ…ははは、その反応は流石に予想しておりませんでした。ふふふ」


 すると想定外の言葉に笑い出すプロス。

 至極真面目な言葉なのは理解しつつそれでも笑いが零れだす。


 「ははは…ええどうぞ。そのままお好きにお壊しくださいませ」

 「…え?いいの?」


 カイセの断られる前提の言葉。

 あくまでもそれほどの代物だと理解して貰う為に告げた、ノーと言われる予定だった提案。

 しかし予想外にも受け入れ許される返事が返って来て、カイセは逆に戸惑う。


 「他の品物には影響せぬように壊してくださいね」

 「え、あ、はい」


 戸惑うままにどうぞどうぞと言われてカイセが壊す流れで進む話。

 この室内の隅っこ、広い空間に案内されて漂流物の銃の破壊が始まる。


 「えっと、本当に良いんですか?王様とかに確認は…」

 「はい。どうぞいつでも」

 「はぁ…それじゃあ…そい!!」


 そうして流されるままに拳銃、ライフル、火縄銃とリスクのある漂流物を魔法で砕いていく。

 完膚なきまでに、復元も不可能なほど粉々にしてその場には砂のようになったそれらが小さな砂山を作った。


 「お見事でした」

 「どうも…」


 こうして三つの銃は跡形もなく砂となった。

 そうした張本人であるカイセは、自身で提案したことながら納得は出来ずにいた。


 「ふふふ、流石にネタ晴らしをしましょうか」

 「ネタ晴らし?」


 するとプロスはその真意を語り出す。

 そもそもの今回の申し出の理由、漂流物の調査についても明かされる。


 「実を言いますと、この漂流物の調査依頼に付きましては過去にも何度か行われているのです。いわゆる転生者(・・・)もしくは転移者(・・・)と思われる人物相手に、記録上は三度『調べてください』とお願いしていました。前は百年ほど前になりますが」


 そもそもの漂流物の調査は、異世界関係者と思われる人物相手にこれまで三度行われてきた。

 ある種の恒例行事。

 カイセは都合四度目の依頼になるだろう。


 「勿論思われる(・・・・)という推測でしかありませんので過去三人のうち一人は全く無関係の一般人でした。しかし…一人はいわゆる転移者。もう一人はいわゆる転生者でした」


 過去三度の依頼相手は、一人は完全な外れの一般人。

 だが残る二人は大当たり。

 

 「そのうちの一番最初、初めて依頼した相手が初代勇者と呼ばれた英雄でした」


 しかもその記念すべき一人目が、当時既に勇者として活動していた初代勇者本人だったそうだ。

 

 (この手の話って国としても基本オフレコの秘密だと思うんだけど、完全にそっち方面の話もOKな相手として扱われているなぁ…)


 世間一般には明かされていない初代勇者の出自を含む話を当たり前に語ってくる。

 勿論カイセ相手なら今更な気もするが。


 「その最初こそは文字通りの調査、これらの不明品の情報集めとして単純な理由でお願いしました。しかし当時の王は気づいたのです。これは見定め(・・・)に使えると」

 「見定め?」

 「はい、これらの品、漂流物を見たその人がどんな反応をするかによってその善性悪性、友好度や人となりを調べる指標に、試しにも使えると、そう思いついたそうです。ゆえに今回のご依頼も、もちろん漂流漂流物の新情報の確保も目的ではありましたが、通例通りに貴方という人間の品定めに利用させていただきました」


 そんなある種の恒例行事化している漂流物の調査は二人目から、初代勇者の後からは〔人柄値踏み〕の意味合いも込められるようになったそうだ。

 異なる世界の知識や認識を持つ異物とも言える存在。

 ただの道具に過ぎない漂流物よりも、直接的にこの世界に影響を与えかねない転移者や転生者のその人柄を確かめる為の抜き打ちテスト。

 勿論漂流物の調査の意図は真実だが、重要度はむしろそちらに重きがある。


 「…もしかして私が知らせた情報って全部既知でした?」

 「勝手な試しにではなく、そちらが真っ先に気になるのですね」

 「いえまぁ不審者なのは自覚あるので、警戒されるのは当然というべきか…」


 人によっては騙し討ちのようなこの話に怒る者も居るかもしれない。

 だがカイセとしては当然とも思える。

 その存在を知る者たちが警戒するのは自然な防衛本能。

 ゆえに怒りは全くなく、むしろ自身が悩み絞り出した情報が普通に既知で役に立たなかったと言われる方が悩ましくなる。


 「ちなみにご提供いただいた情報は…女神像、洗濯道具、この二つに関して新情報を頂けましたのでご安心ください」

 

 だが、どうやら完全な無駄ではなかったようだ。

 武器関連などは既知情報だったようだが、二つほどは持ち得なかった新情報であり、当初の依頼通りにちゃんと漂流物の調査の役目を果たせていることを確認できた。

 とはいえ、それはあれらの銃を、既に危険物として認識していたというお話でもあった。


 「…なら銃は、危険なものだと知っていたんですね」

 「はい。実を言えば火縄銃と呼ばれるものに関しては実際に試射も行われました。当時の情報提供者が扱い方をご存じでしたので。しかし…知らなければよかったと嘆かれたようですね。当時の王は」


 知らなければ悩まずに済んだ一品。

 しかし知ったゆえに悩む羽目になった火縄銃。

 ここは魔法世界ゆえに、銃火器よりも強い威力を発揮する魔法など山ほど存在する。

 だが火縄銃の利点は誰でも(・・・)人を殺せる威力の遠距離攻撃武器を扱えるという点にある。

 資質任せの魔法よりも門戸が広い…いや広すぎる兵器。

 

 「当時の王の側近には、あの武器を増やして実戦投入する案を支持する者も居たそうです。何せあれを量産すれば非戦闘員と呼ばれる者たちも自然と戦闘要員に引き上げられますから」


 この手の武器は一般人すら戦闘員に格上げできる。

 ゆえにこそ軍備拡張の手として、注目されるのも無理はない。

 しかし…この世界においては未だにその手の火器は存在しない。


 「ですが当時の王はそれを良しとはせず、この保管庫に死蔵しました。やはりもしも(・・・)がよぎり処分は出来なかったようですが、その後の王も誰一人として転用することはしませんでした」


 結局誰も火縄銃を利用しようと思う王は現れなかった。

 ゆえにこそこの世界にはこの手の武器が存在しないまま、ある種の異世界純度を保ち続けている。


 「とはいえ、保管し続けるだけでもちょっとした火種を抱える状態ですから、今代の王は『面倒だから捨てないか?』と口にしていました。歴代王の保管の意志に阻まれ実行に移せませんでしたが…しかし今それも叶いましたね」


 ある意味で国にとってお荷物(・・・)扱いされつつあった火縄銃の存在。

 だがそれも今この場で消滅し、王家は継がれた重荷から解放された。


 「…もしかして王様の許可とか…」

 「取ってないですね。とはいえもちろん、それを判断するだけの権限を持ち合わせているのでご安心を。先んじた報告やお伺いをする必要を飛ばして事後承諾にはなりましたので愚痴を言われるかもしれませんが、誰かが罰せられるということはないので安心してください」 


 意外と融通効きすぎる豪胆なプロス。

 いずれにせよこの処分は王も望むべくものらしいのでお小言は来るかもしれないが問題視はされないだろうという。

 実際そうであってくれないとカイセの立場的には困る。

 

 「さて…そんな我ら側の事情を語ったところで…もう一つ。この試しの結果によって、次の部屋(・・・・)へと案内するかを見定めさせて頂いておりました」

 「え、次の部屋?」


 そんな漂流物の情報提供に託けた試しの場。

 いずれにしてもこの場所が終点。

 見渡してもそもそもこの先への扉らしきものも見えないはずなのだが…プロスは〔次の部屋〕の存在を口にする。

 

 「この宝物庫の最奥、一部の者しか知らぬ部屋。試しの結果を鑑みて…そちらへご案内させていただきたいと思います」



 



 

  





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