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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
短章:宝物庫に眠る漂流物
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漂流物の眠る部屋



 「――着きました。この扉の向こうが目的地です」

 

 宝物庫を進むカイセ達。

 おかしな部屋からきちんと大事な部屋も、道中には様々な保管品を目にして過ぎて来た。

 そうして奥へ奥へと進んだ先。

 今回の目的地である漂流物を保管する部屋へと辿り着いた。


 「では少々お待ちを。よいしょっと」


 そして案内人でありこの宝物庫の番人でもあるプロスは鍵を開け始める。

 自身の持つ鍵束から間違えることなく正しい鍵を選びだし、扉の鍵穴に差し込んでいく。


 「…あの、鍵穴多くないですか?」


 だがその作業はやたらと長い。

 というか扉に鍵穴が多すぎる。

 ざっと見で十の穴があり、その穴を一つ一つを鍵で埋めて回して開けていく。


 「はは、まぁ多いですね。しかも手順がありますし」

 「手順?」


 一つ一つ順番に鍵を開けながら雑談に興じるプロス。

 

 「はい、ここの扉は決められた順番に鍵を開けていく必要があるのです。ただ開けるだけはないのです。しかもその手順は毎回変わる。そのパターンの指標が何であるか、そしていくつものパターンを覚え合わせられるものにしか開けられない扉です。あ、もちろんこの鍵を持つのも条件ですね」

 「つまりこうして見ているだけじゃ解けないと」

 「パターンの一つは覚えられると思いますがね。その程度で開くほど簡単な扉でもありませんが」


 この扉は幾重もの手順を強いる。

 まず鍵穴全てに合う鍵が必要。

 そのうえで何処かにある目印の指標を見出して、それが示すパターン通りに鍵を開けていく必要がある。

 少なくとも同行者にその解錠手順のパターンを一つ見せたところで突破できるような扉ではないようだ。


 「…よし、お待たせしました」


 そして最後の鍵を開け終えたのは解錠開始から十分後。

 解錠だけなら多分もっと早く済んでいただろうが…途中におかしな間が幾度か存在したので少し時間が掛かった。


 (多分その間も、解錠パターンに必要な何かをしてる時間だったんだろうなぁ)


 その間も解錠に必要な要素だとすれば、言うよりもっとここの守りは複雑そうだ。  


 「そこまで掛けて守るものが中に…」

 「あるかもしれませんし、ないかもしれません。何せ漂流物は不明品ばかりですから」


 それほどの守りの奥に眠るのは異世界から流れ着いた漂流物たち。 

 この世界の常識の外にある品々。

 ゆえにこそ、その品が安全なのか?(・・・・・)という推測すら困難。

 安全かもしれないし、危険かもしれない。

 収められた品にトンデモやばい品が紛れてる可能性は十分にある。

 だからこそ守りは厳重に。 

 例え中身がガラクタばかりだとしてもそれを知ることが出来ない以上は力を入れるしかない。


 「さて、では中へとどうぞ」

 「失礼します」


 そんな危険度未定の空間に、目的地の宝物庫、漂流物の眠る部屋へと足を踏み入れるカイセたち。


 


 「――でっか」

 「なんだこれ、顔なのか?」


 目的地へとやっとたどり着いたカイセが踏み込んだその部屋の中。

 まず最初にお出迎えしてくれたのは〔大きな顔〕。

 その出会い頭の圧に、今まで黙っていたカナタも反応する。


 「こちら、保管される漂流物の中でもっとも大きな品になります。単純鑑定では《石像頭部》とだけ示される、この中でも危険性は低いものだと判断される品になります。まぁこの大きさなので純粋な大きさと重さが危険という認識も出来ますが、特異な何かはないかと」

 「まぁ…ないと思いますよ」

 「おやご存じの品で?」

 「一応…」


 目にしたその品のデザインには覚えがあるカイセ。

 《石像頭部》という名ではあるが、その顔はどう見ても自由を掲げる神様の頭部。

 外国にある、有名なあの大きな女神像。

 その頭部だけが目の前に置かれていた。


 (まぁでもこれは単純に何処かのレプリカかな?本物とは材質も大きさも違うし。にしても…異世界来て目にすることになるとはなぁ…)


 そもそも向こうですら本物もレプリカも実物は見た事のなかった存在。

 それがまさか異世界に来て初対面する事になるとは思いもせず。


 「記せる情報があればこちらにお書きください」


 するとプロスは何処からから持ってきた紙束と書き物を渡してくる。

 ここに知る情報を記せというお話のようだ。


 「勿論、如何なる事実もご自由に(・・・・)お書き頂いて構いません。また得られた情報に関しましても誠意ある対応をお約束いたします」


 そして告げられるのは立場表明の前置き。

 それはカイセの事情も理解した上の言葉。

 カイセの出自が異世界由来にあることをやはり完全に察したうえでの宣言とも取れる。

 

 (ご自由に、か)


 その自由という言葉は書く書かないの自由。

 あくまでも嘘は書くなという前提の下で、記し明かす情報は選んでいい(・・・・・)

 全部を記して伝えても良いし、知っているのに何も書かない判断をしてもいい。

 情報提供はあくまでもカイセの判断次第で良いというお話のようだ。


 「…カキカキ」


 その言葉を聞いたカイセは文字を記していく。

 元々今回の依頼は何処まで線を引くかに迷っていた。

 受けた以上は必要な開示は行う。

 だがもし不都合な品を目にした時には何処まで伝えるか、その線引きはここに辿り着く間もずっと気にしていた。


 「…ふむ、女神を模した像の複製品。原典ではないとはいえ、女神を模したとなれば少々扱いに困りますな」


 それらを考えた上で、カイセは簡潔に書き記した。

 これがどんな謂れのものなのかは彼らに必要な情報ではない。

 解放や自由、民主主義な正義など、込められた意味や情勢背景は別の世界の事情。

 少なくともこの世界においては全く知る必要のない情報。

 むしろ王制で実在の女神がいる世界では害にもなり得る。


 (その辺の判断はそれこそ責任もって王様たちに任せるって手もあるけど…まぁお許し通りにこっちで多少の取捨選択はさせて貰おう。少なくとも必要なのは物理的に危険かどうかだ)


 最も必要とされるのはあくまでもその道具の危険の有無。

 それ以外の部分は適宜自己判断で考えていくことにする。

 

 「ありがとうございます。では次はあちらから順番に」


 そうして女神の像の簡易的な情報提供を終えると道順を示される。

 まるで博物館のように並べられた品々をルートに沿って順に確認していく流れ。




 「――洗濯機じゃん」


 勿論その中にはカイセにも分からぬ未知の品物もある。

 だが割と分かるのもの多い。

 今見ているのはシンプルなドラム式洗濯機。

 鑑定的には《洗濯装置》とだけ記されているので用途は既に判明している。


 「洗濯の為の道具というのは名称からも分かるのですが、使い方が全く不明の品です」


 洗濯に使う道具という認識はあれども電気器具である以上は、科学の遅れているこの世界においてはオーバーテクノロジーも同然。

 技術研究の面では偉大な遺物かもしれないが、電気が無ければ動きもしないこれはただの置物同然。


 「まぁ、洗濯作業がとても楽になる道具、というところですかね?稼働させるのは私には無理ですが」

 

 品物は知っていても内部機構までは知らない。

 ゆえにこそ伝える情報は強制的に表面的なものに限られる。

 一応その表面的な、一般的な操作で反応を見てみるが当然電気もないので動くはずもなく。




 (――これ、映像ディスクっぽいけど見た事ない媒体だな…って、え?これ一枚で容量テラもあるの!?)


 中には見覚えがあって見てみれば全く別物だった代物もある。

 円盤状の記録メディア。

 しかし記されたのは全く知らない表記だった。

 別の世界からの漂流物、それもカイセの知る技術よりも先の代物。

 そういうものも含まれる。


 

 (――来たか。一番見たくなかった代物)


 そうして漂流物を眺めていると…一番懸念していた代物が現れる。

 この世界に流れ着いて欲しくなかった一品。


 「…どうやら使えない状態ですが、これは危険な品です」


 ハッキリと危険物だと言葉で示しプロスに警戒を促す。

 あくまでも破損品であり欠落品。

 素人目にも状態が悪く使い物にならないだろう代物。

 全体的にボロボロな上に弾倉(・・)が見当たらずに引き金(・・・)も折れているようなのでこの場で危険が起こるということはないだろう。

 だがそれ自体はゲームや漫画などで目にして来た定番兵器そのもの。


 (銃、それもマシンガンか…サバゲ用でも模型でもない本物の。さてどういう説明をすべきかな?)




 



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