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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
短章:宝物庫に眠る漂流物
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ゴーレムの部屋



 王城宝物庫の一部屋目。

 偽物が積み重なった不要の部屋を越えて、カイセたちは次の部屋の扉を開けた。


 「――これって、ゴーレム?」

 

 そして踏み込んだ二つ目の部屋。 

 出迎えたのは何体もの人型。

 立った状態で綺麗に整列した、電源オフのゴーレム達。


 「この部屋はいわゆるゴーレム部屋ですね。実際はゴーレム以外にもいくつか収められてはいますが、この部屋の主役はあくまでもゴーレムなので皆そう呼びますね」


 二部屋目は〔ゴーレム部屋〕と呼ばれる。 

 正確にはゴーレム以外も眠る場所だが、見渡す範囲に目につくのはやはり全てゴーレムだったのでその呼び名も当然だろう。


 「…見たことない系統ですね」

 「おや分かりますか。私などここに着任した際にはとんと違いなど分かりませんでしたが、管理者の一人として学ぶうちにようやく分かるようになったというのに」

 「あぁいや、ハッキリ何がとまでは分からないんですが…」


 だがそこに並ぶゴーレム達には少々違和感があった。

 それはカイセ自身、所有するゴーレムに関する知識があるからこそ感じ取れるズレのようなもの。

 少なくともここに並ぶゴーレムたちは、カイセの知る知識のゴーレムとは何かが違う。

 しかしその何かまでは把握できない。


 『おそらく、ですがこれらは《シンクロ型》と呼ばれるゴーレムだと思われます』

 (シンクロ型?知らない系統だな。シンクロ…マスターと?)


 すると腰の神剣エクスがこっそり推論を語ってくれる。

 曰くこれらの見慣れぬゴーレムは《シンクロ型》と呼ばれるものであるようだ。

 しかしカイセには聞き覚えのないゴーレム系統。


 「これらのゴーレムはかつて存在した《シンクロゴーレム》と呼ばれるモノたちです」


 その直後、案内役のプロス自らが答えを語りだした。

 そしてその正体は《シンクロゴーレム》。


 「シンクロゴーレムは、ゴーレムマスター自身の意識を直接ゴーレムに同調させ、まるで〔自分がゴーレムになった〕ように自由自在に動かせる。そういった特徴を持つゴーレムです」


 言うまでもなく今主流のゴーレムは、持ち主が遠隔で(・・・)動かす型だ。

 しかしここに並ぶのは持ち主が疑似的ながら〔ゴーレムになる〕システムが組み込まれている。

 自身の意識をゴーレムのコアに同調・シンクロさせ、あたかも自分の体がゴーレムになったかのように、操るのではなく『自分が動く』ことで操作できるのがシンクロゴーレムだった。


 「当然〔指示を出して動かす〕のと〔自ら動く〕のでは天と地ほどの反応の差が生まれます。そのうえで現代のゴーレム同様に《戦技模倣》も備わっています」

 

 戦闘を視野に入れて運用されるゴーレムに組み込まれる《戦技模倣》。

 それは既存の誰かの実際の戦闘技術を模倣してゴーレムに再現させるプログラム。

 カイセのゴーレムにも剣の技を模倣させた《剣技模倣》が組み込まれている。

 もちろん剣に限る話ではないが、目の前のシンクロゴーレムたちにも誰かの戦闘技術が内包されているようだ。


 「とはいえ《戦技模倣》は当然ながら劣化した戦闘技術(・・・・・・・・)です。元となる戦技が素晴らしいものであればあるほどその再現は難しく、可能な限り質を高めようとすればそれだけゴーレムに使用する素材や魔法術式の精度が跳ね上がりますし、それにも当然天井が存在します」


 だが当然ながら誰かの戦技はその人の為の技術である。

 ゴーレムが再現するのはその劣化コピー。

 お手本が素晴らしければ素晴らしいほど、ゴーレムはその素晴らしさを発揮できずに悩むことになる。


 「その再現度を当時もっとも高めたゴーレムがこのシンクロゴーレムだったそうです。ゴーレムとシンクロした意識はそのままゴーレムが内包する戦技も振るうことができ、しかもより高い再現度を実現したそうです」


 その悩みをある程度解消する手段として生み出されたのがこのシンクロ方式。

 人の戦技の模倣を、同調した人の意識が行う。

 これが最も再現度が高くなるやり方だったそうだ。


 「そしてこのシンクロゴーレムたちは、当時の、大昔の種族間戦争に駆り出されていき…多くの戦果を挙げたそうです」


 これらのシンクロゴーレムは大昔の戦争に実戦投入された。

 人の意識を乗せて戦うゴーレム。


 「戦果そのものは上々。しかし…このゴーレムには明確な欠陥がありました」


 結果として得られた成果は大きかった。

 しかしそこには大きな問題が存在した。

 シンクロゴーレムが今の時代に全く見かけぬその理由。

 

 「同調状態で出撃し、撃破されたゴーレムの操縦者の意識が消失(・・)したそうです」


 その一つ目がゴーレムの破壊=マスターの死。

 意識をゴーレムに同調させたマスタ-の体は眠ったような状態になる。

 ゆえにその体は戦場から離れた基地内で安静に寝かせられしっかり安全に保護されているはずだった。

 しかし、操るゴーレムそのものが致命的な破損状態に陥ると、同調したマスターの本体も死を迎えた。


 「倒されたゴーレムのマスターも死ぬ。それだけでなく無事に帰還したゴーレムのマスターにも後遺症(・・・)が発現したそうです」


 それどころか、無事に帰還したゴーレムのマスターにまで悪影響が発露した。

 問題点となる二つ目。

 長く強くゴーレムに同調した人間ほど、人の体に意識を戻した際に体の不調を訴えた。

 腕が動かない、足が動かない、視界がおかしい、自分の体なのに違和感を感じる。

 物理的な障害や精神的な障害。

 一時的なものもあれば、その後一生付きまとった後遺症まである。

 中には無事に帰還し同調を解除したはずなのに元の体が目覚めなかった者も居る。


 「人の意識を作り物の人形に乗せる。この行為は人の本来の姿を見失わせる致命的な欠点がありました」


 それらは実戦に参加した九割以上の操縦者に、何かしらの形で起きた不調。

 成果は上々ながらも安全性の部分で大きな問題が表れてしまったシンクロゴーレム。


 「そして戦争終結後、これらシンクロゴーレムの新規製造(・・・・)は全面的に禁止され、製造方法も葬られました」


 ゆえにこそ戦争が終われば禁止技術に指定されるのも当然のお話。

 ただしその全ての知識が消されたわけではない。

 後遺症が残る人々の治療名目でその後も一部の研究は続き、こうして残存した現物もしっかりと保管された。


 「それ…ずっとずっと前のお話ですよね?もうこれ必要ないのでは?」


 だがそれも大昔の話。

 すでにその後遺症を持つ人々も天命を終えている今の時代。

 ならばこの危険物を残す道理もない。


 「そうですね、ですが…これも備え(・・)なのでしょう」


 しかし未だにしっかりと保管される理由。

 それはまたしても『もしもの備え』だった。

 

 「先の不用品よりは、まだ分からなくもない備えではありますがね。心情的には別としても」


 人の心で考えれば非情なデメリットを持つ兵器などすぐに手放したいだろう。

 しかしそれも先の偽金などのリサイクル用物資と比べれば分からなくもない備え。

 いつ、どこで、どんな危機が訪れるかわからない世界。

 言い出せば切りのない危機の予想ではあるものの、そんな空想も起こる可能性がゼロと言い切れないのなら無駄だ不要だと言われても備えておくのが国の保険。

 物理的な危機への備え、防衛守護を目的として奥の手の一つとして、もしもの時には使うかもしれない戦力の一つとして今もシンクロゴーレムが保管されている。

 もしもの時には誰かを犠牲に、このロクでもないゴーレム兵器を出動させる。

 

 「一介の金庫番には、この兵器が置物であり続けることを切に願いことしかできません」

 

 そんな二つ目の、ゴーレムが保管された部屋。

 あまり居心地の良い場所ではなかったゴーレム部屋を進み、カイセ達は次の部屋に足を運ぶ。



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