午後の濁る心
午後の授業が始まった。
途中、ルィーゼは午前よりはずっと落ち着いた感じでいられた。
しきりにこっちに向いてニコニコするのはちょっと良くなかったけど。
しかし彼女のことより、俺はネラのことが気になってしょうがなかった。
どうにか近付いて話でもかけようとしたが、その都度にネラは他の親友のところへ行ってしまうのである。
……いくら鈍感な俺だって、こうもなると勘づいてしまう。
俺はネラから避けられている。
そのきっかけは、なんとなく分かってしまった──きっとあの転校生のせいだ。
◇ ◇ ◇
物臭い気持ちのまま、どうにか午後の授業の終わりになった。
俺はネラの方を見た。
「あ、あのさ、ネラ──」
しかし俺には目もやらない。
彼女は例のアンナとトトノちゃん、そしてルッセルさんと共に、四人で教室から出ていったのだ。
ただドアの敷居を跨ぐ途中、ルッセルさんだけが俺に目礼してくれた。
「……はぁ」
立ち上がらんばかりの姿勢になっていた俺は溜息をついた。
そして、元通りに椅子に腰掛ける。
「くそ、なんで俺がこんな……。俺、別に今度は何も悪くねぇだろ」
鬱陶しい気持ちに一杯になって、つい声を出して呟いてしまった。
「──うん。ロゴスはなにも悪くないよ。だからそんなにしょんぼりしないで?」
その声に顔を上げると、やはりピンク髪の少女が俺の机の前で立っている。
窓から六月の午後の日が差されて、彼女の笑顔に少しの陰りを成した。
「あんな子のことなど気にしないで、アタシと一緒に街へいこ?」
「……」
あんな子って──きっとネラのことなのだろう。
その表現が俺はあまり気に入らなかった。
もしかしてルィーゼは午後の授業の間俺がずっとネラを見つめていたのを看取ったのだろうか。
しかし、
「……まっ、仕方ねぇよな」
俺はそんなことをこぼしながら起き上がった。
ネラとは今日中に顔を合わせるチャンスはなさそうだ。
どうせ俺はやることもないんだし、少しだけルィーゼと付き合ってやっても別に悪いことにはならないと思う。
しかも、彼女の表情を見ると──
あんなにも期待に満ちているのだ。
まるで俺の行動だけに自分の全てがかかっているかのような顔をして、俺の手先指先一挙手一投足に目を注いでいる。
これも結局俺がチョロいだけなのかも知れない。
でも俺なんかが何かするだけで誰かが嬉しくなるのなら、してやりたいと思ってしまう。
正直に言って、そんなに人に求められたことがないのだ。
だから少しだけ不思議だと思う気持ちもある。
だから俺は、
「ルィーゼ、行こうぜ」
そう言いつけて、先に教室のドアの方へ歩き出した。
「……うん!」
彼女は明るい顔で頷いて、俺の後を追ってくる。
そして、当たり前のように隣に密着して腕を組んでくる。
「お前な」
面倒くさいということよりも、そんな姿が人に晒されるのが億劫だったので、やめさせようと思った。
「どしたの? はやくいこーよ!」
しかし間近で彼女のエメラルドの瞳の輝きを見ると、離れさせることも躊躇してしまった。
「……分かったよ」
結局そのまま歩く。
するとルィーゼも歩幅を俺に合わせる。
今回は短くなってすみません! 次回はもっと頑張って書きます!




