Scene 奏狂奏曲
見慣れた朝日が差し込む教室だが、教壇にいる先生の歯切れが悪い。着古したライダースジャケットの皮革が、その動きに合わせて硬質な音を立てる。担任でもある数学教師は腕組みをすると、苦虫を嚙み潰したような表情で口を開いた。
「……俺もこんなクソみてえな話はしたくねえんだが」
「先生、いつになく口が悪いです。教師なら俺らの手本になってください」
「うるせえ。こんな話、真面目にできるか」
先生の珍しい物言いに、教室の空気がざわめいた。
「昨日の夜、水泳部の部室と、女子更衣室のロッカーが荒らされた」
「荒らすって?」
「ありていに泥棒だ。盗まれた」
「学校に入ったの?」
「今朝になって登校してきた生徒が発見した。警察が来てる。対処は俺たちでやるから、お前らは近づくんじゃねえぞ」
教師は咳払いを一つ挟み、さらに言い淀みながら続けた。
「盗まれたのは乾燥室に干してあった水着と、ロッカー内の衣類だ。犯人は施錠をこじ開けている。閉め切っても意味がないから、私物は必ず持ち帰れ」
衣類。
オブラートに包んだ表現だが、要するに下着泥棒である。
女子のパンツが盗まれたのだ。
男子には隠しきれない好奇心と、思春期の卑俗な興奮が見え隠れする。対照的に女生徒は眉をひそめ、不潔なものを払うように身をすくめた。
「先生、それって犯人として、真っ先に俺たちが疑われませんか?」
「まだ何とも言えねえが、たぶん違う。部外者だ」
「どうして?」
「犯行時刻が深夜だからだ。昼間なら俺だってクソ男子だと思ったよ。けど生徒が真夜中に鍵を壊して、わざわざ校舎に侵入するとは思えねえ」
窓際の席にいる仄火は、教室の喧騒にも無関心だ。暇そうに外の景色を眺めていたら、バルコニーの手すりに一羽の鳩が舞い降りる。目が合ったので両手を振り上げると、なまはげのような仄火に驚いて飛び去った。
学内で事件が起きたそうだが、正直なところ世俗の些事でしかない。仄火は一切関知していない事柄だし、何でもいいからさっさと終わって欲しいだけだ。
ただし一点だけ、看過できない部分がある。
犯行時刻は深夜であり、無人の校舎に部外者の侵入を許したことだ。
仄火は黒板に視線を向けると、不愉快そうに頬杖をついた。
仄火の通っている学校は、付属中学とはいえ天下の鷲明館である。全国的に名前が通るほどの名門校で、私学のため学費も相当なものだ。
高い学費を払って生徒と親が買っているのは、教育のみならず『安全』も含まれるはずだ。下世話な窃盗など起こした時点で、学校側の怠慢以外の何物でもない。
可能性としては二つだ。
一つ目。犯人の手口がプロで、映画のスパイのような存在だった。
二つ目。学校の警備がザルである。
三つ目。十中八九、後者だ。
「はぁ……」
仄火は余計な手間が増えたことに、深いため息を漏らす。それなりのセキュリティはあって然るべきだと、学校側に勝手な信頼を寄せていた。だが現実にはこの体たらくなのだから、自分の身は守らなければならない。
性衝動に狂った一般人が侵入できるのなら、軍隊の工作員ならそれこそフリーパスで闊歩できる。仄火は狙われる心当たりが無数にあるため、他の同級生たちほど安穏と構えてはいられない。
女子のパンツはどうでもいいが、ロッカーに爆弾を仕掛けられるのは困る。
「……スターバック、頼むわ」
仄火の周辺で鳴っている音は、スターバックが常時監視している。教師の報告から仄火の嘆息までの流れで、説明などせずとも憂慮は伝わったはずだ。すぐさま警備状況を調べ上げて、次の休み時間には報告が来るだろう。
学校や警察では頼りないし、牧歌的な学び舎を要塞に替える必要がある。
§
静寂に包まれた教室の中で、数学の小テストが行われていた。大多数の生徒が黙々と答案用紙に向かう中、一人だけ開始数分で席を立った生徒がいる。
「先生、出来ました」
仄火は全問を埋めた答案用紙を手に、泰然と教卓へと歩み寄る。先生は心底つまらなそうに教卓に視線を落とすと、丸印のみで埋め尽くされた採点を終える。
「……簡単すぎたか?」
「ええ、まあ」
出題は名門中学における標準的な難易度だったが、連立方程式など公立なら次年度以降に習うものが含まれていた。
学習の心づもりとしては、五十分を使って解かせるつもりだった問題だ。時計を見上げると五分と経っておらず、授業が終わるまで仄火は暇になってしまう。
「お前はこれでも解いてろ」
先生は背後の電子黒板に向かうと、1から100までの数字をすべて足し合わせる計算式を書き込んだ。本来であれば高校で扱う総和の記号だが、相手が仄火なのであえて説明を省いている。
中学一年生に出すには意地悪だが、仄火は問題を見た瞬間に即答した。
「5050です」
先生は嘆息する。
「……その答えが正しいとしても、自分で計算したことを証明しろ」
「暗算しました」
「不可能だ」
「1+100=101です。次に2+99=101となります。これが50+51=101まで続きます。したがって50×101=5050となります」
淀みなく説明する仄火に対して、先生は面白くなさそうに顔をしかめた。
「……お前、マジで可愛くねえな」
中学の入学式からじきに一か月ほど経つが、仄火の授業態度は常にこのような調子である。単に頭が良いという領域を超えており、住んでいる次元が違うような印象を周囲に与えていた。
名門私立に勤務する数学教師として、幾多の秀才を指導してきた自負はある。だが久世仄火という生徒は、根本的に何かが違うのだ。
いかなる難問を与えようとも、過程を省略して正解を弾き出す。すでに教員としての熱意や指導力は失われ、ただ底知れない異物に対しての諦観だけしかない。
「……何でお前みたいなのが、俺のクラスにいるんだよ」
「だって中学生ですし?」
「俺の授業、もう出なくていいぞ。教えることがない」
「そんなこと言わないでくださいよ。先生の授業、嫌いじゃないですよ。『どう教えれば生徒に理解してもらえるか?』っていう、先生の苦心が透けて見えます」
「クソ生意気なガキだな」
仄火はケラケラと笑いながら、自分の席へと引き返していった。
席に戻りながら見渡せば、まだ仄火以外は誰も終わっていない。机の隙間を縫うように歩いていたとき、仄火はある男子生徒と目が合った。
雪ノ下奏だ。
男にしては小柄な部類で、柔らかな栗毛をマッシュヘアにしている。ブレザーを丁寧に着ているが、若干サイズが大きいのか両袖が余っていた。子犬のような愛嬌のある顔立ちをしており、クラスではマスコットのように扱われている。
何とはなしに足を止め、机にあった奏の答案用紙を横目にした。そのまま自席へと戻り腰を下ろしたものの、仄火の頭にはある疑問が浮かんでいる。
「……あいつなにしてんの?」
奏は自分の答案用紙を消しゴムでこすり、書いた文字を消していた。
明らかに不可解な行動である。
なぜなら仄火が見た答案用紙は全問が埋まっており、しかも全て正解していたからだ。つまり奏は正解をわざわざ消して、もう一度書き直していることになる。
§
校庭では男子生徒が走り回り、天高く飛んだサッカーボールを追いかける。教室は女子生徒のお喋りが重なり、絵に描いたような平和な休み時間だ。
だが窓際の自席にいる仄火は、難しい顔つきで手元を眺めている。画面から放たれる無機質な光が、黒曜石の瞳に図面を映していた。
手元のタブレット端末で見ているのは、スターバックから届いたセキュリティレポートだ。妥協を許さない緻密な構成で、プレゼンテーションファイルに警備状況がまとまっていた。
結果は一言で――悲惨である。
子供を預かる学舎とは思えないほどの、杜撰も極まるほどの内容だ。
大手の警備会社と契約しているため、名目としては有人監視も行っている。異常を検知すれば自動で通報がなされ、警備会社も急行する体制にはなっていた。
ただし、肝心の設備が粗末に過ぎる。
顔認証や出席の有無を確認するような、高度なシステムはない。警備会社との契約を裏返せば、現場にはマニュアル対応しか出来ない人員しかいない。
監視カメラの配置は、素人が決めたように死角だらけ。侵入者を検知するセンサーも、ほとんどが飾り同然の旧式である。しかもそれらすべての設備が、校内の広さに対してまったく数が足りない。
通用口の施錠は簡易的なシリンダー式で、おまけに扉自体の耐久性も低かった。軍隊の扉の爆破突入に耐えろとは言わないが、せめて体当たりは防いで欲しい。
鷲明館を守るのは強固な警備ではなく、単なる『ブランド校』という薄っぺらい紙切れだ。『不審者が入るはずがない』という、無根拠の特権意識か性善である。
悲劇は終わらないことに、情報管理も論外だ。
スターバックが提示したプレゼンテーションファイルには、校舎の精緻な設計図面が網羅されていた。最新の警備配置はもとより、電気や配管などの重要配線まで明記してある。学外秘として暗号化されていなければおかしいのだが、スターバックは道端の石を拾うように入手してみせた。
『大学側の共有サーバーの中に、無防備な状態で配置されておりました。わたくしはただ、アクセスしただけでございます』
スターバックのハッキング能力は常軌を逸しているが、今回に限ってはそんな高度な話ではない。
とても単純な事実として、学内ネットワークが開けっ放しだった。大学には立派なサーバー室があるのに、運用する人間が機能を理解していない。パスワードは出荷時の初期設定から変更されておらず、アクセス権限は全ての端末に解放されていた。大組織によくある病巣とはいえ、大学では情報工学も教えているのに情けない。
もし仄火がその気になれば、三分で学校を完全封鎖して、十分以内に隠れている者まで皆殺しに出来る。そんな脆弱な箱の中に、自分は身を置いていたのだ。
さすがに放置は出来ない。
最悪、仄火が私財を投じてでも、警備システムの全面的な刷新だ。まずはブラックアイアン社を経由して、学校側と話を付けて、ついでに学内サーバーも交換する。もちろんサーバーに裏口を仕込んで、仄火の自由にするのは言うまでもない。
「……あの、久世さん。いま時間あるかな?」
導入する手順を考えていたら、遠慮がちに仄火を呼ぶ声がする。これまで同じクラスにいるだけで、仄火とはまったく接点がない人物がいた。
「……雪ノ下だっけ?」
「あ、覚えてくれてたんだ」
名字だけでも認知されていたことに、緊張気味だった奏は安堵していた。
「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど」
「なに?」
「そのタブレット、ブラックアイアン社の非売品モデル?」
奏が指を指しているのは、仄火が使っている電子端末だ。背面が落ち着いた黒鉄色に塗られて、アクセントでビビットオレンジが入っている。鷲明館の見取り図を映していたので、仄火はさりげなく画面を消灯した。
仄火が愛用する電子デバイスは、全てブラックアイアン社の内製品だ。彼女の趣味と要求だけで、予算に糸目をつけずに作った非売品である。このタブレットにしても世界に三台しかないため、事実上は仄火の専用になっている。
「……何で知ってるの?」
「じゃあ!」
奏の顔つきが唐突に明るくなる。
直前までのどこか遠慮がちだった態度は霧散して、まるで大好きな玩具を前にしたように身を乗り出した。
「やっぱりそうなんだ! それを久世さんが持ってるってことは、お父さんがブラックアイアン社の日本支社長って噂は、本当なんだね?」
一般的にこの年頃の子供だと、普通は友達の親の職業など気にしていない。ただ別に隠しているわけではないため、仄火が関係者であることはすぐにわかる。
「そうだけど……」
仄火がいぶかしむ間もなく、奏は嬉々として種明かしをする。
「ブラックアイアン社が出してる、製品カタログがあるよね? 僕あれを読むのが趣味なんだ! 以前にカタログの隅っこに、そのタブレットも載ってた!」
「……あれを読んでるの? 本屋じゃ買えないでしょ?」
「広報に電話すれば、誰でも買えるよ?」
さすがに少々引いた。
重工業の業界向けカタログを、中学一年の男子が愛読している。軍事に転用できる油圧シリンダーや、最新のサーボモーターが載っている冊子だ。間違っても玩具屋のチラシではなく、普通の子供が読んで楽しいものではない。
あんなマニアックな代物を、わざわざ送料を支払って取り寄せている。その事実ひとつをとってみても、年齢にそぐわない価値観なのは明らかだ。
「前からブラックアイアン社って、人型ロボットを作ってるって噂があって、楽しみでずっとチェックしてたんだ! アメリカ大統領のエイハブが、ブラックアイアンの製品だって聞いたときは、もう卒倒しそうになったよ!」
身を乗り出して興奮している奏の様子は、まさに得意分野を話しているときの趣味人のそれだ。熱を帯びた視線を目の当たりにすれば、彼が重度の『技術オタク』であることは察せられた。
正直、逃げたい。
だが仄火の席は窓際で、背後には壁しかない。狂信的な眼つきをした奏ににじり寄られても、仄火は椅子の背もたれに体重を預けるしかない。
「カタログで見たんだけど、最近のブラックアイアン社って、『アイスマン』っていう、等身大の人型ロボットを作ってるよね?」
「あ、うん……まあ」
奏は逃がさないとばかりに距離を詰めると、必死な顔つきで訴えた。
「ねえ、お父さんとは仲がいい?」
「わ、悪くはない?」
「良かった。もし不仲だったら、どうしようかと思ってた」
「ど、どういうこと?」
「ブラックアイアン社の日本支社長に話を通せるなら、お願いがあるんだ」
§
校舎の西側は湿った土の匂いがする、日当たりも極めて悪い裏手だ。華やかな正面とは隔絶された場所に、元は物置だったプレハブ小屋が建っている。
外壁の各所は赤錆に浸食され、塗装は見る影もなく剥がれ落ちていた。壊れたガラス窓を交換する予算すらないのか、ひび割れをガムテープで目張りしている。
『機械工作部』
ドアには100均で買ったプラスチックパネルに、手書きの表札がかろうじて刻まれていた。油性マジックで書いた文字は、紫外線に晒されて白く色褪せている。
「……こんな部活、あったんだ」
「形だけだよ。最後の先輩がこないだ辞めちゃったから、今は僕ひとり」
奏が慣れた手つきでドアの鍵を開けると、錆びついた蝶番が悲鳴を上げた。
室内は一言でジャンクの山である。
オイルと古い電子部品の匂いが混ざり合い、小屋の空気は重くよどんでいた。使い込まれた半田ごてやペンチが、汚れた籠に無造作に入っている。埃っぽいスチール棚の奥には、ブラウン管のモニターまであった。
床材はむき出しのコンクリートで、隅には正体不明の樹脂や金属粉が砂のように溜まっている。被覆の剥けたリード線や、電子基板が積み上げられていた。
「とりあえずこれなんだけど……」
奏が最優先で案内したのは、ハンガーに懸架された人型スケルトンだ。全高は170センチほどの金属製で、理科室にある骨格標本のようだ。だが腹部に電気モーターがあるため、展示物ではなく駆動するロボットである。
「……このロボット」
仄火のような専門知識を持っていなくとも、素人目にもあからさまなほどに壊れている。右膝が人体では曲がるはずのない、不自然な方向に折れているのだ。
部活動には不釣り合いなほど高価な人工筋肉が、伸びたゴム紐のようにだらしなく垂れ下がっていた。
ロボットなら逆関節に設計されていることもあり得るが、無残なほどに歪曲したフレームから一目瞭然だ。
「見ての通り、壊れてる。見て欲しかったのはこれなんだ」
奏が自嘲気味に笑う。
「久世さんはロボットに興味はある?」
「なくはない?」
仄火は言葉を濁したが、実際は専門分野のど真ん中だ。
ものすごく得意である。
「ならロボットコンテストって知ってる? 自作したロボットでお題をこなして、その技術力を競う大会なんだけど」
奏が座面の破れているパイプ椅子を引くと、コンクリートと脚がこすれて乾いた音がした。仄火に着席するように促して、自分は旧式のシンク台に向かう。シンクには水が通っているらしく、奏は電気ケトルに水をくんでいた。
「このロボット、ロボコンの優勝を目指して作っていたんだ。けど大会のちょっと前の調整中に、着地に失敗して膝が折れちゃった」
ロボコンで出されていた課題は、要するに体操競技の動きである。人型ロボットに器械体操をやらせて、その完成度を競うものだった。
膝関節が折れた理由は、奏から聞くまでもない。着地したときの衝撃――つまり作用反作用の法則に対して、関節の強度が絶望的に足りないのである。
関節の強度を上げようとしたら、全体の重量バランスを全て取り直しになる。機械工作部にはそこまでの再設計をする体力がなくて、こうしてロボットは修理されることなく放置されているのだ。
結果、大会への出場すら出来ずに、他の部員たちは全員が退部した。ロボコンへの入賞を目的にやってきたのなら、上級生が諦めたのは無理からぬことだ。
「おかげで僕が部長だよ。新入生なのに。なにせ一人しかいないからね」
木製の作業机の上には、半田ごての焦げ跡が無数に重なっている。机のジャンクを適当に片付けると、マグカップにティーバッグの日本茶を入れて差し出した。
「そこで久世さん、最初の話に戻るんだけど」
「お願い事?」
「うん」
「……なに?」
妙な気迫で身を乗り出してきて、仄火はお茶をこぼしそうになる。
「ブラックアイアン社の新製品に、『アイスマン』ってあるよね? さっきもちょっと話したけど、等身大の自律人型ロボット」
「……あるね」
なんかもう読めてきた。
「アイスマンを買いたい。君のお父さんに取り次いでもらえないかな?」
「無理」
「そこを何とか」
「ダメ」
「どうしても?」
「不可能」
「そんなー」
仄火が即答で断ったのは、明確な理由があってのことである。もちろん意地悪で言ってるのではなく、あらゆる面から不都合しかない。ヴィクトルに紹介するだけなら構わないが、そこからアイスマンの購入は絶対にダメである。
……実は奏に便宜を図るだけなら、仄火にとっては容易いことだ。ヴィクトルの協力など得るまでもなく、仄火が書類一枚にサインするだけで完了である。
「部のロボットは簡単な動きなら出来るんだけど、運動強度の高いことをやると、フレームが持たないんだ。つまり高くジャンプすると膝が折れちゃう」
「……だろうね」
「わかる?」
「何となく想像は付く」
「でもアイスマンの骨格なら、体操くらいじゃ壊れないはず」
正しい認識だ。
アイスマンが採用している骨格は、『ALフレーム』という特殊な構造体だ。30メートルの高さから飛び降りても、折れるどころか歪みひとつ生じない。
だが奏に譲るべきかと問われたら、仄火は『絶対無理』と言うしかない。
なぜならアイスマンは――軍事兵器だからである。
『運動会で勝ちたいから、強力な銃火器を売ってくれ』
あるいはもっと露骨に。
『人殺しの道具を買いたい』
つまり奏が頼んでいることは、こういう意味の無理難題なのである。




