作戦前夜
転移後の世界が剣と魔法の世界で、リアルタイムSRPGをイメージしている作品です。
週2 水曜日・日曜日 更新 予定です。
「明日のおさらいをしましょう」
宰相のアルヴェリスと作戦を練った後、宿屋の一室に戻り、もう一度内容を確認することになった。
作戦は単純なものだ。
同じヒーラーであるキャンシルの代わりにアマネがパーティーメンバーとなり、キャンシルはアルヴェリスが用意した商隊に混じって先にノクス皇国へ帰る。
アマネはあまり表に出ていないこともあり、拠点争奪などに関わらなければ他国で身バレすることはほとんどないとのことだった。
「動きに気付かれなければ問題なくノクス皇国に帰れる……転移さえできれば出国する方には関門がないからこちらの勝ちだけど」
「メンソさんは戦闘になると思ってるってこと?」
キャンシルが心配そうに問いかける。
このギルドは人対人の戦闘を避けてきた。参加経験の多いメンソールやパンテラでさえ、他のギルドと比べれば経験は少ない。
「そうよ。特にリョウと姫様の二人は対人戦闘が初めてだから、リョウにはしっかりと説明しないといけない」
「メンソさんにしては珍しくちゃんと説明するんだね」
「さすがに今回は命の奪い合いになるかもしれないしね。相手は単なる兵士じゃなく騎士団だから、命尽きるまで戦い続ける可能性がある」
魔獣討伐後のインターバルは三十分だが、対人の場合、撤退を選ぶと相手も転移の対象となり、さらに時間が延びてしまう。相手に十分な魔素が溜まっている状態だと連戦が可能になり、インターバル中に第二世界へ転移されると、マナヴェールを最初に張ることができず、一方的にやられてしまう。
「姫様は戦えるの?」
「実戦は初めてだけど、訓練は積んでいるそうよ。ただ、対人戦はコミュニケーションと戦略理解、それに精神力が必要だから、そこは未知数ね」
魔獣相手であれば、スキルの傾向がある程度分かっていた。しかし対人の場合、スキルセットは個々で異なり、推測しながら戦うことになる。
「拠点争奪戦は殺し合いになることはほとんどないけど、今回は心配だな」
ルーダの言葉が、静かに胸に刺さった。
人を殺すということはできるだけしたくない。だが、そうしなければ自分たちが殺される可能性が高い。共和国内で撤退しても、すぐに捕まるだろう。
俺は黙ってメンソールの説明を聞きながら、ずっとそのことを考えていた。
魔獣と戦うのとは、違う。相手には感情がある。言葉がある。家族がいるかもしれない。 それでも、剣を向けなければならない場面が来るかもしれない。そのとき、自分は動けるだろうか。
「戦闘は転移石付近になるでしょうね」
「フードを被ってもらうけど、声をかけられた時点で即戦闘に移行するわ。新たな騎士団を呼ばれる前に転移する必要があるから、時間との勝負でもある」
転移した後は商隊の一部が残っており、そこから馬でノクス皇国に帰る予定だ。
姫様の顔がばれていなければ賊に奪われたということになり、ばれてしまった場合は姫様の独断ということになる。
どちらにしても王の立場が危うくなることは承知の上での作戦だった。
「明日は命がかかってる。こんなことになって申し訳ないけど、皆生きて帰りましょう」 「皆が納得して決めたことだからメンソさんが謝ることじゃないよ。リョウもそう思うだろ?」
「ああ、明日はルーさんが守ってくれるから任せてくれ」
「……そこは自分に任せてくれだろ」
笑いが起きる。だけど、その笑いの奥には明日への緊張が滲んでいた。
皆が部屋に戻り、一人になると、また静寂が重くなった。 窓の外、ロンド共和国の夜は穏やかで、遠くで誰かが笑う声が聞こえる。
人を傷つけるかもしれない。もしかしたら、殺すことになるかもしれない。 頭では分かっている。でも、本当に覚悟できているのかと問われたら、正直分からなかった。
ドラゴン討伐のときに流れ込んできた感情を思い出す。あの重さを、明日また背負うことになるかもしれない。今度は魔獣ではなく、人の感情を
。
眠れないまま、夜が深くなっていった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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私生活が忙しく、次回は4月8日(水) 20:00更新予定とさせてください。




