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謁見

転移後の世界が剣と魔法の世界で、リアルタイムSRPGをイメージしている作品です。


週2 水曜日・日曜日 更新 予定です。

外交官のヴァルガスと再度会談した後、謁見を行うことになった。

今日がその謁見の日で、ギルドメンバー全員で王城へと向かっている。


「他国の王様に会うなんてドキドキするね」

「自国の王様に会ったのも、ドラゴン討伐のときぐらいだからな」


ドラゴン討伐時に皇国の王に謁見したのは、ギルドマスターのメンソールと副マスターのルーダの二人だけだった。

他のメンバーにとって今回が初めての謁見で、皆一様に緊張している。


「謁見は形式上のもので、話は事前に決まるものだと思っていましたが……」

「詳細な依頼内容が謁見の場で、というのは不安要素ね」


依頼を受けるという方向性は決まっているが、自分たちの力の及ばない内容であれば断ることもある。そのことは全員が分かっていた。


****


王城に到着し、控室に案内されてしばらく待っていると、案内人がやってきた。


「お待たせして申し訳ございません。謁見の準備が整いました。装備はこちらでお預かりいたします」


魔石の付いた装備を持っていると、他者の介入なしに第二世界での戦闘に入ることができる。謁見の場で装備を外すのは当然のことだ。

逆に言えば、ここで依頼を断れば、ただでは帰れないということでもある。


装備を渡し、案内人の後についていくと、荘厳な門の前で「お連れしました」との声が上がり、重い扉がゆっくりと開かれた。


両脇に幾人もの兵士が並ぶ中、真正面には二つの玉座があった。そこに座っていたのは、黒髪で耳が長く尖った端正な顔立ちの人物と、その隣に座る若い女性だった。


玉座の間の中心まで進み、跪いて王の言葉を待つ。


「長旅ご苦労。顔を上げてくれ」


顔を上げた瞬間、内心で小さく驚きの声を上げた。王はかなり若く見える。黒髪に長く尖った耳——これがダークエルフか。


そして、隣の玉座に座る女性に目が止まった。

絶世の美女という噂に違わぬ美しさだった。王と同じ黒髪と尖った耳、人形を思わせるような整った顔立ちと白い肌。これまで見てきた誰とも違う、と思いながら、思わず目を逸らした。


「ドラゴン討伐の噂は聞き及んでいる。その君たちの実力を見込んで依頼がある」


王が手を挙げると、傍らに控えていた兵士たちが一斉に玉座の間から退出した。


「この場に残っている者たちは、信頼のおける者たちだ。我が娘のアマネ、宰相のアルヴェリス、近衛騎士団長のガルド、そして外交官のヴァルガスだ。そなたらの名も聞かせてもらおうか」


一呼吸おいて、メンソールが答える。


「私はメンソールと申します。右からキャンシル、ルーダ、リョウ、パンテラです」

「この場では、無礼講で構わない。忌憚のない意見を言ってくれ。この国は元々身分差がなく、王というのも形式上のことに過ぎない」


そう言われても、すぐに態度を変えることはできず、皆が軽く戸惑う。

宰相のアルヴェリスが「王がおっしゃる通りにしてください」と言葉を添えてくれたことで、ようやく場の緊張が少しほぐれた。


「分かりました。では、そのようにいたします。それで、依頼とは?」

「単刀直入に言おう。ここにいる我が娘のアマネだが、冒険者として君たちのギルドに加わる形で、ノクス皇国へ連れて帰ってもらいたい。しかるべき援助は都度させてもらう」


想定外の内容に、皆が動揺しているのが伝わってきた。事前にあれこれ推測していたが、誰もこの答えには辿り着いていなかった。メンソールですら、珍しく驚きの表情を見せている。


「……理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「各国からの婚姻申し込みについては聞いていると思うが、国の内部で賛成派と反対派に分かれてしまっているのだ。ここにいる者たちは反対派だが、賛成派には武闘派が多く、クーデターが起きることを危惧している」

「政略結婚は国としての常套手段かと思いますが……」


場の緊張が緩んだためか、メンソールが率直すぎる言葉を口にした。

だが王は気にした様子もなく続ける。


「他の国ならばそうだ。だがこの国では違う。今は姫という立場だが、王が代替わりすればただの娘に変わる。そのとき国の力関係が傾けば、同盟など無意味になる可能性が高い」


つまり、優勢な国にとって婚姻は形式に過ぎず、姫を手に入れることだけが目的になりうる。反対派としては、一時的なメリットのために姫を犠牲にすることだけは避けたいということか。


「賛成派に武闘派が多いのは、拠点争奪や第二世界探索による疲弊感からでしょうか」 「その通りだ」


共和国への旅路を経た身には、それが痛いほど分かった。

昼夜問わず拠点争奪戦に駆り出される兵士たちの疲弊は、ノクス皇国でも目にしていた。

騎士たちを退出させたのも、騎士団内に賛成派が多いからだろう。


「国の人間が連れ出せば、遺恨を残す。だから君たちに頼みたいというわけだ。……依頼は受けてもらえるだろうか」


メンソールはしばらく黙り込んだ後、静かに答えた。


「お受けいたします」

「そうか、ありがとう。詳しい手はずはアルヴェリスから聞いてくれ」


謁見はそれで終わり、一行は別室でアルヴェリスと作戦を練ることになった。


扉が閉まる直前、チラリとアマネの方を見た。

彼女はまっすぐ前を向いたまま、表情を変えなかった。


ここまで読んでいただきありがとうございました。


ブックマークしていただけると喜びます。


次回は3月29日(日) 20:00更新予定です。

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