姫との出会い、そして――
転移後の世界が剣と魔法の世界で、リアルタイムSRPGをイメージしている作品です。
週2 水曜日・日曜日 更新 予定です。
これからの作戦の行方を表しているのか、どんよりとした雲が空を覆っている。キャンシルを除いたギルドメンバーは誰もが無言のまま、再び王城へと向かっていた。
王城に着くと、外交官のヴァルガスが出迎えてくれた。
「どうぞこちらへ。姫様がお待ちです」
応接室に通されると、中央にフードを被った一人の少女が座っていた。冒険者風の、いつでも戦闘に入れるようなヒーラーの装備をしている。
「初めまして、アマネと申します。今日からよろしくお願いします」
一国の姫とは思えないほど柔らかな言葉で、フードを外しながら挨拶をしてくれた。
謁見の場では遠目で見ていたが、改めて近くで見るとその整った顔立ちに思わず緊張する。
「こちらこそよろしくお願いします。時間もそれほどないので、まずはノクス皇国への移動と、戦闘になった際の役割について打ち合わせをさせてください」
「その前に……私はこの瞬間からロンド共和国の姫ではありません。アマネと呼んでください。敬称も不要です」
「……良かった~堅苦しくてどうしようかと思ってたのよ~助かるわ」
「メンソさん……敬語は不要とは言われていませんが」
「ふふっ。大丈夫ですよ。気軽に接してくれた方がありがたいです」
謁見の場では笑顔一つ見せず座っていて、姫としての気品と威厳を感じたが、話してみると温和な印象を受ける。少し肩の力が抜けた。
ノクス皇国までの行程は比較的単純だ。顔を隠したまま転移石を使い、ノクス皇国付近の拠点へと飛ぶだけ。アマネの近辺の者には話を通しているため、反対派の目につかなければ発覚することはない。反対派も、まさか自国の姫が立場を捨てて冒険者になるとは想像もしないだろうとのことだった。
唯一の懸念は戦闘だ。
連携が非常に重要になるため、綿密に打ち合わせをする。各人の役職やスキルセット、指揮系統を確認していく。ヒーラーの役割は多く、回復と補助を基本としながら、魔素を計算して余裕があるときには攻撃もする必要がある。アマネのスキルセットはキャンシルと似通っており、同じような動きができそうだった。
「アマネ、それとリョウ。いい?今回は人を殺すことになるかもしれない。その覚悟がないと、仲間の命に関わるわ」
メンソールの言葉が、静かに空気を変えた。
「……分かってる」
昨晩一人で考え続けたことだ。それでも、覚悟できているかと問われれば、まだ正直分からない。アマネも静かに頷いたが、その表情に何を感じているのかまでは読み取れなかった。
拠点争奪戦に多く参加しているメンソールやパンテラでさえ、相手を殺した経験はないと言っていた。劣勢になると撤退を選ぶことが多く、国としても全滅より撤退を推奨している。だが今回は違う。共和国内で追われれば、撤退の選択肢はほとんどない。
「じゃあ、行きましょ」
アマネがフードを深く被り、一行の最後尾につく。所々に警備の姿が見えたが、王城の門を出るところまではヴァルガスが同行してくれるため、特に問題なく移動できた。
「ここまですんなり出られると、逆に怖いな」
「想定通りではあるけれど……このまま進むと、騎士団の副団長と戦闘になる可能性が高いわね。異能持ちらしいからできれば避けたいけど」
「異能の詳細は教えてもらえませんでしたしね」
国が関与していることが戦闘中に露見すると、今の体制が危うくなる。だから異能については教えてもらえなかった。未知のスキルを持つ相手と戦うことになるかもしれない、ということだ。
「……転移石が見えるわ」
転移石の周囲には、二人の兵士が立っている。通行証を差し出すと、兵士の一人が確認を始めた。
「ノクス皇国から……こちらへ来られるのは大変だったでしょう。念のため、後ろの方のフードを取って確認させていただけますか」
「彼女、日に当たれなくて……できればそのままにしてあげてほしいのだけど」
「申し訳ございません。規則ですので」
問答無用で兵士がフードに手をかけた瞬間、メンソールが転移石を発動させた。
世界が暗転する。
次の瞬間には、全員が第二世界へと転移していた。静寂の中、誰かが小さく息を呑む音がした。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ブックマークしていただけると喜びます。
私生活が忙しく、次回は4月15日(水) 20:00更新予定とさせてください




