第十一話Part5
「うっううう……ううううう」
「えっと……」
なんか組み伏せてる彼が泣き出した。うわぁぁぁぁん! という泣き方じゃないが、悔しくてたまらないみたいなさ……そんなまさに男泣きって感じだ。でも……女性の涙もそうだけど、男でも泣かれるとなんかこっちが悪い……みたいな気がしてくるよね。実際アスファルトに顔を押し当ててるからね。い、痛いのかな? 痛いよね。そう思うとちょっと力が……その時だった。なんと、押さえつけてた彼が腕からにゅるっと消えた。
「え!?」
驚いた。こんなこともできるんだ。私がちょっとでも力を緩めたせいで……
「ごめんなさい」
「いや、これはしょうがないよ。それにそんなに遠くには行ってないと思う」
確かにそれは野々野君のいう通りかもしれない。だって最後ら辺は彼はとても辛そうだった。力を使うのも限界が近かったはずだ。そうなると、あれは最後の切りふだってことになる。使えるのも一回切りの可能性がある。そうなるとそんな遠くにはきっといってないよね。
「おいかけ――」
――る? と言おうとしたところで言葉がつまる。だって、そこには件の彼がいたからだ。逃げてなかったんだ。そんなに遠くに言ってないだろうとは思ってたけど、歩道橋にまた現れるなんて……逃げる気ないってこと?
「おかしいよ……こんなの……」
フラフラと、そんな事をつぶやいてる彼。私たちは警戒する。もう力を使えるとは思えないけど……でも警戒は必要だろう。何かまだ出来る事があるかもしれないし。なにせ超能力というのは不透明だからね。私も五感に力を集中させるってことやってみる。今までは体の俊敏さとか筋力の増強とかに振ってたけど、五感も力によってパワーアップしてるようだと気づいたからだ。実際、試合中に全ての人の動きが見えたり、対象がゆっくりに見えてたのも……きっと視覚が強化されてたからなんだろう。
今更にそれに気づくとは……でも気づいたのなら、これからだ。私にはまだ伸びしろがある。実際、身体強化だからって体ばっかり鍛えてムキムキになる……なんてしたくないのだ。実際身体強化ならそれが一番ベストなのかもしれないが、私は女を捨てる気はないからね。
「おかしいって言われても……」
「だって……そうじゃないか。そいつには何もない……でも俺は選ばれたんだ! この力に! そしてそれは……君も同じだ。俺たちはそこらのゴミとは違う。俺を虐げてきた奴らとはもう違うんだ!! だから選ばれた俺たちは特別なんだよ」
こいつやばいな……私は素直にそう思った。




