第十話part6
結局なにか話すこともなく、私たちは目的地に着いてしまった。でも……
「ここ?」
「そのはずだけど……」
なんかそこは広い通りの道に面してる飲食店というか? いや、飲食店にしかみえない。それに……普通に営業してるようだし。いや、今は中途半端な時間帯だからか、準備中の札が入り口にはかかってる。午後の営業開始はもっと後からという事だろう。
「営業してるよね?」
「そうだな」
私も野々野君も困惑である。この店がつぶれてるのなら、中に侵入してたりして待ち構えてたりするんだろうって……そんな風に思える。でも……普通に営業してるからね。
もしかしてここの息子とか娘とか? けどなんか私によこした手紙的に今から自殺します……ような内容だったと思う。それなのに自宅でそんなことをするだろうか?
親がすぐそこにいるのに、自殺なんて……ね。普通はしないよね。これが定休日で親がいなくて、その目を盗めるタイミングなら……まだわかる。
でもどうやら普通に営業はするみたいだし……つまりは今まさに、この建物の中では仕込み? とかしてるんじゃないかな?
「入ってみる?」
「なんていうんだよ?」
「それは……そうだね」
とりあえず訪ねてみるかどうか聞いたけど、なんと声をかければいいのかわかんない。私も野々野君もどちらかというと人見知りするタイプだ。ぐいぐい他人に迫っていけるようなコミュ力は持ち合わせてない。
それに息子や娘さんはいますか? ならまだいい。――実は自殺するかもしれないんですよ~なんて言えないよ。というわけでちょっと考える。その時だ……なにか私は視線を感じた気がした。
バッ――と振り返る。すると目が合った。それはこの大きな四車線の道路を横断できるように架けられた歩道橋……その中腹から私を見つめる人物がいた。
「野々野君……あれ」
私はその人物を見ながら野々野君にその存在を知らせる。すると彼もその彼を確認したんだろう。こういってくる。
「あれみたいだな」
「うん……」
私たちは彼が待つ歩道橋に脚をかける。階段を一段一段あがり、階段が終わりかけると、その姿がよりはっきりとみえる。ダボっとしたスウェットの上下に片目が隠れた髪型。そんな人が、こっちを向いてる。でも目はあわない。
その人は下を向いてるからだ。私たちは警戒しながら、その人に近づいていく。私が前にでてたほうがいいんだろうけど、野々野君が私の前に、それこそ守るように立ってくれてる。
それがうれしかった。




