閑話4舞台裏1
アレーシャが部屋を抜け出したころ。
「殿下」
「まったく、何をしているんだ」
エンディミオンの従者が報告に来ていた。
夜遅くに部屋を抜け出したと報せを聞きすぐに動く準備をした。
「決して傍を離れるな。いいか傷一つでも負わせれば俺達は兄上に裸で馬引きずりに地獄の訓練が待っている」
「はっ・・・はい」
「泣くな。俺が泣きたい」
冗談ではなく本気だった。
レオンハルトがブチ切れたら逆鱗に触れられた龍の如く。
怒り狂った獅子の如く歯止めは聞かない。
「兄上はアレーシャを溺愛しているからな」
「大公様はアレーシャ様との婚約を推し進めるためになりふり構っておりませんでしたから」
二人が思いを重ねたあの日から三日と過ぎていないのに婚約を吹き飛ばし結婚に結び付けた。
普通は婚約期間を設け結婚となる。
短くとも一年の期間を空けるのだがすぐに結婚式の手配を行っていた。
「よっぽどアレーシャを早く娶りたいのか」
「私はレオンハルト様を誤解していました」
女性に全く興味がないと思っていたのだが、その逆だった。
「レオンハルト様はアレーシャ様以外眼中になかったのですね」
「ああ…」
幼少期の初恋を思い続けていたが、一歩間違えればどうなっていたか解らない。
「エンディミオン様、まずくないですか?」
「あれは宮廷の侍女…何をしているんだ彼女達は!」
今にもアレーシャにつかみかかる勢いだった。
「仕方ありません」
懐から武器を出す諜報員。
「待て待て…何をする気だ」
「胸倉を掴みましたね。よって死刑です」
今にも殺しかねない勢いだった。
「王族に無礼を働いた場合極刑です。既に暴言、暴行と罪を重ねております。とらえてギロチンでさらし首です」
「だから待てと言っている!!」
エンディミオンは無闇に血を流すことを望まなかった。
とは言え王族としての責任感は強く家族思いだった。
兄が溺愛する女性が傷つけられて平気なはずはないが、様子がおかしい。
「なんということでしょう」
「うん、解っていたがな」
散々罵倒を浴びせ逆切れしたジェーンに癒しの魔法で傷の手当てをし、ジェシカの顔の傷も治している。
「なんと慈悲深い」
決して自分から手を出さない姿に従者も諜報員も感動している。
「お前達、アレーシャが許したんだ。手を出すな」
「仕方ありません。闇に乗じるしか」
「だから乗じるんじゃない!」
血の気の多い部下に頭が痛くて仕方ない。
その後何食わぬ顔でアレーシャと遭遇し部屋まで送り届けた後も側近達が暗殺を企てていたので精神的に疲れてしまったのだった。




