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閑話5舞台裏2


王の執務室にノックの音が聞こえる。

部屋にいた侍従が取次ぎを行い、執務室に迎え入れられる。



「失礼します」


侍女がお茶の用意をしその場から離れる。


「して、状況はどうだ」


「ええ、侍女二人は心を入れ替え仕事に励んでおります」


「そうか」


アンジェリーナは書類を差し出し笑みを浮かべる。


「それにしても少々強引な手を使ったな。あれが万一同盟国のお茶会ならどうなっていたか」


「ええ…侍女二人に重い沙汰が下っていましたが。侍女長がそろそろ堪忍袋の緒が切れたようで」


「シナリオを考えたのはお前だろうが」


アンジェリーナの笑みが黒すぎて王は怯えていた。

あの母にしてこの女官。


一国の王は実母と筆頭女官が怖かった。

この国はとにかく女性が強い。


未だに影響力の強い王太后の影響故だった。


実は今回の騒動は偶然ではなく、あらかじめ計画されていたのだ。


侍女長はあの二人がアレーシャに仕事を押し付けていた事実に気づいていた。


それでもこれまで咎めなかったのはいつか気づいてくれると心のどこかで信じていたが、そろそろ堪忍袋の緒が切れそうで重い罰を与えようと考えていた。


そこにシナリオを考えついたのがアンジェリーナだった。


「お前も相当ひどいぞ」


「あら?当然ですわ。仕事をサボるなど言語道断。あのまま裁かれても良かったのですが…あの二人も貴族の令嬢ですから使い道はありますわ」


優雅に紅茶を飲みながら恐ろしいことを言い放つ。

どっちかというと悪女に一番近いのではないか?と思ってしまう。


「お茶会に細工などしてませんわ。私は手を一切だしておりませんの」


フッと笑みを浮かべ扇で口元を覆う。


手は出してなくても結果的にどうなるか予測できたのを傍観していた。


王女の花壇に関しても直接は手を出していないがそうなるように仕向けたのだ。


「でもあの娘が癇癪を起してくださってシナリオ以上の結果になりましてよ」


「頼むからこれ以上恐ろしい言葉を吐くな」


恐ろしくて紅茶の味すら解らない。

敵に回せば己の命すら危ういほどだった。


(恐ろしい女だ)


セラフィーヌに絶大なる信頼を置かれるだけはあると思う一方で敵に回せばこれ以上恐ろしい女性はいないだろう。



「まぁ?私は国の為に努めておりますのよ」


「王の為には務めんのか?」


「ええ」


きっぱりと断言される。

聞かなければよかったと後悔の念すら抱いた。


「ですが、アレーシャ様は流石と言うべきですわね」


「うむ…仕返しをしないのは己の誇りを守る為とな」



平民と違い貴族は特権が与えられている。

その力は国の為、民の為に使うべきものであって自分の為に使うものではない。



責任と義務を持って振る舞うのが貴族や多族の務めだった。


「ただ罰を与えても侍女達の心を変えることは叶わなかっただろうに」


罰を与え裁くことはすぐにできるし、切り捨てることもいつでもできる。


若い世代の侍女を育てる為に可能性に賭けたのだった。



「アレーシャ様は王妃様と同じく人の心を動かすことができるお方です」


「うむ…レオンハルトは無意識に気づいていたのかも知れぬ」


弟が長い間嘆き悲しんでいた宮廷内の対立関係。

王も貴族も国を豊かにし国民を導く役目を担っている自覚がない。


その為にも王室に嫁ぐ令嬢はただ家柄がいいだけでは務まらない。


「前王妃の理念引き継げるだろうか」


「それは私には解りかねますよ」


「そうだな」


誰にも解らない。

亡き王妃の後を引き継いでくれるかどうかなんて。


ただ王は願うことしかできなかった。

腐敗しきった貴族社会をぶち壊すには新しい風が必要だ。


その風をアレーシャに委ねようと。


強く願った。




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