ジュリー
「あなたも、ってことは君もか?」
そう言うと女の子の目から一気に涙があふれ出た。
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!」
「お、おい、そんなに泣くなって。」
「話なら聞くから、な?」
「だ、大丈夫か?」
俺が何を言っても女の子は泣くばかり。
どうやら、自分の世界に入り込むと周りが見えなくなるタイプらしい。
立派な服なのに、涙で服はぐしゃぐしゃだ。
10分くらいして、近くて見守っていたらようやく泣き止んだ。
「おさまった?」
「ありがと。ごめんね、突然泣き出しちゃって。」
目は真っ赤に腫れている。
「別に大丈夫だよ。俺は健、鈴原健。」
「私はジュリー、ジュリー・ジラルドよ。」
「やっぱり、不適正だから泣いていたの?」
「ええ、まあね。」
「不適正なのは確かに悲しいことだけど、そんなに泣くほど気にしなくてもいいんじゃないのか?」
すると、ジュリーは呆れるようなため息をついた。
「あなた何もわかってないわね。」
「なんだ突然。」
「いい?ビジオっていうのは誰でも下克上できる唯一のチャンスなの。ビジオは全員に平等だから、ここで成り上がるしかないの。それなのに…」
ジュリーの目にまた涙が浮かび上がり始めた。
これはまずい。また大泣きされたら大変だ。
「だ、誰でもって言ったって、ジュリーは立派な服を着ているじゃないか。そんなに貧しいわけではないんだろ?」
「たしかに生活が苦しいことはないわ。むしろ生活水準は高いほうだと思う。」
「なら下克上なんてこと」
俺の言葉をさえぎって、ジュリーはぽつりと口にした。
「プライド」
「え?」
「100年ほど前まで私の家は名家と呼ばれていたそうよ。王家に仕え、勲章までもらっていたらしいの。でも、その100年前から私の家は狂い始めた。この100年間、ジラルド家はビジオを一回も受け取れていないの。」
「100年間も・・・」
「おじい様、おばあ様、お父様、お母さま、姉上、兄上、さらにはいとこやお父様の兄弟まで。ジラルドと名の付く人は誰もギフトに成功してないの。いつしか人は『呪われたジラルド家』と呼ぶようになったわ。王家の計らいで生活には困窮していないものの、今ではすっかりさびれてしまった。」
悔しそうに話すジュリーにかける言葉が見当たらない。
「家族はみんな諦めてしまっているわ。今日も、誰も一緒に来てくれなかった。でも、私だけは諦めたくないの。呪われたジラルド家なんて馬鹿にするやつらを見返したかった。でも、結果はあなたも知ってる通り。」
「ごめん、何も知らないのに無神経なこと言って。」
「いいわ。別に同情してほしいわけでも、慰めてほしいわけでもないし、もう二度と会うことはないだろうから。それに、これくらいのことで諦めないし。」
立ち上がって遠くを見つめるジュリーの目はもう赤くなかった。
「初めてあった人にこんなこと話すのなんて初めて。まあ、不適正同士頑張りましょ。」
「ああ。ジュリーも頑張れよ。」
階段を下りていくジュリーの背中は、泣いていたころとは全く違う、堂々とした背中をしていた。
強い子なんだな。
思わずそう呟いて、俺は宿へ戻ることにした。




