不適正
ジュリアさんに言われた通りに進むと、正面に10階建てのマンションほどの高さの真っ白な建物が現れた。もちろん白一色というわけではなく、ところどころに金の装飾や、ステンドグラスもあしらわれている。教会といっても差し支えなさそうだ。
神々しさに圧倒されつつも、20段ほどの階段を上り神殿の正面に到着した。
「ヤバいヤバいヤバイヤバイ…マジでヤバイ…」
扉を開けようと手をかけると、階段の端に座って何かぶつぶつ言ってる女の子がいた。
「どうかしましたか?」
「ヤバいヤバいヤバイヤバイ…本当にヤバイって…」
どうやら他人の声にかまっている場合ではないらしい。
反応がないので無視して扉を開けた。
「ようこそオルランド神殿へ。」
迎えてくれたのはどうやらシスターのようだ。
ここに来て初めてふくよかじゃない人に会った気がする。
「ギフト?のことで来たのですが。」
「ではまず確認させていただきます。あなたは17歳ですか?」
「はい。」
「了解です、資格はあるようですね。」
「資格が必要なんですね。」
「ええ。ギフトは17歳のときにしか受け取れないのです。ですから、ギフトを受け取られる方には必ず年齢確認をしているんです。まあ、17歳以外の方がギフトを受け取ろうとしてもできないので、形式的なものなんですけどね。」
「具体的には何が受け取れるんですか?」
「それは、私たちが決めることではありません。神様がお決めになることです。」
「神様が、ですか?」
「はい。その人の特性によってテュケー様が1つだけ神の力が宿る道具をくださるのです。それがギフトと呼ばれるものですね。」
「神の力?」
「ギフトはそれぞれの人の成長に合わせて成長する、あなた専用の道具なんです。」
「すごい!それはぜひ恩恵に授かりたいですね。」
「テュケー様は信仰のあるなしにかかわらず全員に平等なのです。さあ、あなたもどうぞこちらへ。」
そう言って神殿の奥を指さす。そこには、建物の天井に届くくらい大きな人型の石像があった。よく見ると、象の足元には水晶が置かれている。
「あの水晶に手をかざし、『ギフト』と叫んだください。すると、鐘が鳴ってあなたの前にギフトが出現するはずです。」
「わかりました。やってみます。」
遠くから見ると大きさに目が奪われるが、正面まで来るとその圧倒的な威圧感に身が震えた。
覚悟を決め、水晶に手を伸ばす。
「ギフト」
その瞬間!鐘の音が…鐘の音が…
あれ?
「ギフト!」
俺の声がこだまする。
「ギフト!!!!!!」
何回言っても鐘の音が聞こえない。
目の前には強大な石像しかない。
「あの、ギフトって言ったんですけど鐘の音が聞こえなくって…」
戻ってシスターに報告すると、シスターは残念そうな目を向けて言った。
「どうやらあなたは『不適正』みたいですね。まあそんなこともありますよ。気を落とさないでください!」
「いやいやいや、なんですか不適正って!」
「実は何人かに1人ギフトを受け取れない方がいるんです。あ、17歳以外の方は水晶自体に触れられないので、あなたが17歳ではないということは考えていませんよ。ただ、理由はわかっていないのですが一定数そういう方がいて…こればっかりはどうすることもできません。残念だったということでお引き取りください。」
そう言ってシスターは俺に神殿から出るよう促した。
「なんだよ、不適正って…」
思わずつぶやくと、ぶつぶつ言っていた女の子の声が止まった。(ってか、まだいたのかよ)
「もしかして、あなたも不適正なの?」
震える声で問いかけてくる。
「あなたも、ってことは君もか?」
そう言うと女の子の目から一気に涙があふれ出た。




