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『シークレットガールズ 新世代へ――母から娘へ、受け継がれる五人の秘密』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『シークレットガールズ Season 3――母から娘へ、受け継がれる五人の秘密』
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15/19

第8話「幼馴染にバレる!?――莉央奈、絶体絶命!」


二代目シークレットガールズとして活動を続ける五人。


SHI☆、MIKU♪、YUNA◇、MII♡、LiZ☆。


学校では普通の中学生として過ごし、放課後になれば秘密のアイドルへ――。


そんな二重生活にも少しずつ慣れてきた五人ですが、今回はその「慣れ」が大きな危機を呼び込んでしまいます。


LiZ☆こと柴崎莉央奈が、芸能事務所で使うメンバーパスを誤って学校へ持ち込んでしまったのです。


しかも、そのカードを拾ったのは――。


幼い頃から莉央奈を知る幼馴染・相沢陽向。


カードには、


「SECRET GIRLS」


そして、


「LiZ☆」


の文字。


以前から莉央奈の行動を不思議に思っていた陽向と琴音。


さらに琴音は、LiZ☆を見て「莉央奈に似ている」と感じています。


もし、このカードからすべてが繋がってしまったら――。


LiZ☆=柴崎莉央奈。


そして莉央奈の正体が明らかになれば、SHI☆、MIKU♪、YUNA◇、MII♡の秘密にも繋がってしまう。


一人の小さなミスが、五人全員を巻き込む最大級のピンチ。


果たして二代目シークレットガールズの秘密は守られるのでしょうか。


そして今回、歴史教師とコーチという二つの顔を持つ崇道康熙が、五人を守るために動きます。


秘密を守ることの本当の難しさを、莉央奈が初めて身をもって知る第8話です。



二代目シークレットガールズとして活動する五人。


SHI☆。


MIKU♪。


YUNA◇。


MII♡。


LiZ☆。


学校では普通の中学生。


放課後になれば、正体を隠した人気アイドル。


その二重生活にも少しずつ慣れてきた――はずだった。


しかし。


秘密というものは、慣れた頃が一番危ない。


特にLiZ☆――柴崎莉央奈には、昔から自分のことをよく知る二人の幼馴染がいる。


相沢陽向。


藤宮琴音。


二人はすでに、


「最近の莉央奈は何かを隠している」


と感じていた。


さらに琴音は二代目LiZ☆を見て、


「莉央奈に似てる」


とまで言っている。


そしてこの日。


莉央奈は、自分でも気づかないまま――。


絶対に学校へ持ってきてはいけない“あるもの”を、鞄の中へ入れたまま登校してしまう。


その小さなミスが。


二代目シークレットガールズ最大級の危機へと繋がっていくことになる。


◇◇◇


朝。


柴崎家。


「莉央奈ー!」


「起きてるー!」


二階から返事が聞こえる。


「本当に?」


「本当に!」


リオは朝食を用意しながら苦笑した。


数分後。


制服姿の莉央奈が慌ただしく階段を下りてくる。


「おはよう!」


「おはよう。今日はちゃんと起きたね」


「昨日ちょっと早く寝たから」


「珍しい」


「私だって早く寝る時あるし」


莉央奈は椅子へ座る。


その横には、昨日のレッスンで使ったバッグ。


本来なら芸能事務所へ置いてくるはずだった。


しかし昨日は帰宅が遅くなったため、そのまま持ち帰っていた。


リオが何気なくバッグを見る。


「それ、今日も持ってくの?」


「え?」


莉央奈もバッグを見る。


「……あ」


一瞬考える。


学校用の鞄には教科書。


レッスン用バッグにはレッスン着やシューズ。


今日は放課後そのまま事務所へ向かう予定。


「学校の鞄に必要なものだけ入れて、これは帰りに取りに来る?」


リオが提案する。


「いや、面倒だから持ってく」


「学校に?」


「ロッカーに入れとけば大丈夫でしょ」


リオの表情が少し変わる。


「中身ちゃんと確認した?」


「したよ」


「本当に?」


「大丈夫!」


莉央奈は自信満々に答えた。


だが――。


確認は完全ではなかった。


レッスン用バッグの内ポケット。


そこには昨日、新社長から渡されたばかりの一枚のカードが残っていた。


黒を基調にしたカード。


表には銀色の文字。


SECRET GIRLS


そして――。


LiZ☆


裏面には、


MEMBER PASS


と記されていた。


芸能事務所の専用フロアへ入るためのメンバーパス。


本名は書かれていない。


しかし。


LiZ☆本人しか持っていないもの。


もし学校で見つかれば――。


かなり危険だった。


◇◇◇


「莉央奈!」


校門前。


琴音が手を振る。


「おはよう!」


「おはよう、琴音」


陽向もその隣にいる。


「遅い」


「まだ間に合ってる」


「今日は荷物多くない?」


陽向がレッスンバッグを見る。


莉央奈の心臓が少し跳ねる。


「これ?」


「うん」


「……体育の」


「今日体育あったっけ?」


陽向が即座に返す。


「え?」


琴音が笑う。


「今日はないよ」


莉央奈が固まる。


「じゃ、じゃあ……」


「何?」


「部活!」


「莉央奈、部活入ってないじゃん」


「……」


完全に詰んだ。


陽向が腕を組む。


「また何か隠してる」


「隠してない!」


「じゃあそれ何?」


「習い事!」


「何の?」


「色々!」


「色々って何だよ」


「細かい!」


莉央奈はバッグを抱えるように持つ。


琴音が苦笑する。


「陽向、その辺にしときなよ」


「でも絶対怪しいだろ」


「いつか話すって言ってくれたんだから」


莉央奈が琴音を見る。


「琴音……」


「その代わり」


「なに?」


「本当に危ないことじゃないんだよね?」


莉央奈は真剣に頷いた。


「違う。絶対違う」


「ならいい」


陽向はまだ納得していなかった。


それでも。


「……まあ、分かった」


三人は校舎へ向かった。


莉央奈は胸を撫で下ろす。


――危なかった。


しかし。


本当の危機は、まだこれからだった。


◇◇◇


朝のホームルーム。


早川翔太がスマートフォンを見ながら盛り上がっていた。


「今日のシークレットガールズの動画見た!?」


「朝から!?」


西野彩花が笑う。


「見た見た!」


「LiZ☆やばくない?」


その名前。


莉央奈は反応しないように教科書を取り出す。


高瀬航平も他クラスから顔を出している。


「俺もLiZ☆!」


「航平また来てるの?」


「ちょっとだけ!」


「自分のクラス戻りなよ」


「いや、莉央奈に言いたくて」


莉央奈の顔が引きつる。


「私に?」


「LiZ☆めちゃくちゃ良かった!」


「そ、そうなんだ」


「莉央奈も見て!」


「時間あったらね」


「絶対!」


「はいはい」


高瀬は満足して自分のクラスへ戻っていった。


その様子を陽向が見ている。


「お前最近、LiZ☆の話されると変じゃない?」


「変じゃない!」


「めっちゃ否定するじゃん」


「だって毎回言われるから!」


「まあ、似てるしな」


「似てない!」


琴音が笑う。


「私はちょっと似てると思う」


「琴音まで!」


莉央奈は机へ突っ伏した。


秘密を持つというのは、本当に疲れる。


◇◇◇


一時間目。


国語。


櫻井隆明が授業を進める。


莉央奈は何とか集中していた。


二時間目。


数学。


清水真紀の授業。


三時間目。


歴史。


崇道康熙が入ってくる。


「教科書を開け」


康熙はいつも通り。


学校では歴史教師。


二代目の五人に対しても、他の生徒と変わらない態度。


授業途中。


「柴崎」


「はい」


「この出来事の背景」


莉央奈が答える。


「正解」


「よし」


「声に出すほどではない」


教室に笑いが起きる。


莉央奈が座る。


その時。


康熙は莉央奈の足元を見る。


机の横。


黒いレッスンバッグ。


見覚えがある。


芸能事務所で使っているものだ。


康熙の眉がわずかに動いた。


――なぜ学校に?


莉央奈は気づかない。


康熙は授業を続けた。


◇◇◇


授業終了後。


「柴崎」


「はい?」


莉央奈が振り返る。


康熙は教室の前。


他の生徒もまだいる。


「そのバッグ」


莉央奈の心臓が跳ねる。


「え?」


「大きいな」


表向きはただの会話。


しかし莉央奈には意味が分かる。


「……今日、ちょっと用事があって」


「そうか」


康熙はそれ以上言わない。


ただ。


ほんの一瞬。


目で伝える。


――気をつけろ。


莉央奈も小さく頷く。


その様子を。


陽向が見ていた。


「……」


◇◇◇


昼休み。


五人が集まる。


美空が莉央奈のバッグを見る。


「それ学校持ってきたの?」


「うん」


結菜が眉をひそめる。


「大丈夫?」


「大丈夫だって」


栞も心配そう。


「中に衣装とかない?」


「ない」


美羽。


「パスとか?」


莉央奈の動きが止まる。


「……パス?」


「事務所の」


「え」


五人が静かになる。


莉央奈は急いでバッグを開ける。


レッスン着。


シューズ。


タオル。


化粧ポーチ。


そして。


内ポケット。


手を入れる。


「……」


指先に硬いもの。


莉央奈の顔から血の気が引いた。


「うそ」


取り出す。


黒いカード。


SECRET GIRLS


LiZ☆


MEMBER PASS


「やばっ!」


美空が思わず大きな声を出す。


「声!」


結菜が止める。


莉央奈はすぐカードを握り締める。


「忘れてた……」


「なんで持ってきたの!?」


美羽が小声で言う。


「昨日帰ってそのまま!」


栞が言う。


「絶対なくさないで」


「分かってる」


結菜。


「今すぐ安全な場所に」


「制服の内ポケット入れる」


莉央奈はカードをしまう。


「もうバッグには入れない」


美空がため息をつく。


「危なかったね」


「本当に」


だが。


その直後。


教室の外からチャイム。


五人は慌てて戻る。


そして莉央奈は気づかなかった。


制服の内ポケット。


少し浅かった。


歩いた拍子に。


カードの角が、少しずつ上へ出ていたことを。


◇◇◇


午後。


音楽。


五十嵐真緒の授業。


「今日は二人一組で発声確認をします」


生徒たちが移動する。


莉央奈は琴音と組んだ。


「よろしく」


「よろしく!」


その時。


莉央奈が前屈みになる。


制服の内ポケットから――。


黒いカードが床へ落ちた。


カタン。


小さな音。


莉央奈は気づかなかった。


そのまま位置を移動する。


数秒後。


「ん?」


後ろを通った陽向が気づいた。


「何これ」


拾う。


黒いカード。


表。


SECRET GIRLS


そして。


LiZ☆


陽向の表情が変わった。


「……LiZ☆?」


莉央奈がその声を聞いた瞬間。


全身が固まった。


ゆっくり振り返る。


陽向の手。


見覚えのある黒いカード。


「……」


時間が止まる。


琴音もカードを見る。


「シークレットガールズ?」


莉央奈の顔が真っ青になる。


――終わった。


そう思った。


◇◇◇


「莉央奈」


陽向がカードを見る。


「これ……」


「返して!」


莉央奈が反射的に奪おうとする。


陽向は驚いて手を上げる。


「何だよ!」


「いいから返して!」


「お前のなの?」


「違う!」


「じゃあなんでそんな必死なんだよ」


「それは……」


周囲の生徒たちが気づき始める。


「何?」


「シークレットガールズ?」


「LiZ☆?」


危険。


さらに騒ぎが広がる。


その時。


「静かにしてください」


五十嵐先生の声。


教室が静かになる。


「どうしました?」


陽向がカードを持っている。


「先生、これ落ちてて」


五十嵐先生が近づこうとする。


莉央奈の心臓が激しく鳴る。


五十嵐真緒。


すでに五人の歌唱力に疑問を持っている教師。


もしこのカードを見られれば――。


かなり危険。


その瞬間。


教室の扉が開いた。


「五十嵐先生」


全員が振り返る。


崇道康熙。


「少しいいですか」


「崇道先生?」


康熙は教室へ入り、陽向が持つカードを見る。


一瞬。


表情は変えない。


だが状況を理解した。


「何かありました?」


五十嵐先生が尋ねる。


陽向。


「これが落ちてて」


康熙が手を出す。


「見せてもらえるか?」


陽向が渡す。


康熙はカードを見る。


SECRET GIRLS


LiZ☆


MEMBER PASS


完全にアウト。


だが康熙は平然と言った。


「ああ、これか」


莉央奈が康熙を見る。


陽向も。


琴音も。


五十嵐先生も。


「先生知ってるんですか?」


陽向が尋ねる。


「ああ」


康熙はカードを裏返す。


「学校行事で使うサンプルカードだ」


「……サンプル?」


莉央奈が思わず言いそうになり、止める。


康熙は続ける。


「今度、芸能関係の職業について授業で取り上げる予定があってな」


「歴史で?」


翔太が言う。


康熙は一瞬だけ止まる。


「総合学習だ」


「なるほど」


「宍戸先生や五十嵐先生にも協力してもらう予定だ」


五十嵐先生が驚く。


「私も?」


康熙が静かに五十嵐先生を見る。


「……後でご説明します」


「え、ええ」


やや強引。


しかし授業中。


深く追及する雰囲気ではない。


陽向がカードを見る。


「じゃあLiZ☆本人のじゃない?」


「当然だ」


康熙は即答した。


「本物のメンバーパスが学校に落ちているわけないだろ」


「まあ……確かに」


翔太が笑う。


「本人がこの学校にいるわけないし!」


教室に笑いが起こる。


五人だけは笑えない。


莉央奈は呼吸を整える。


助かった。


本当に。


ギリギリ。


◇◇◇


授業終了後。


「柴崎」


康熙が廊下で莉央奈を呼び止める。


「はい」


「来い」


短い。


莉央奈は康熙についていく。


人の少ない準備室。


扉が閉まる。


康熙の顔が変わった。


「何をやってる!」


「ごめんなさい!」


即座に頭を下げる。


「パスを学校へ持ってくるなと説明しただろ」


「忘れてた!」


「忘れたで済む問題じゃない!」


「はい……」


莉央奈は俯く。


康熙は深いため息をつく。


「あと数秒遅かったら五十嵐先生に見られてた」


「……はい」


「陽向と琴音も以前から疑ってる」


「分かってます」


「分かってるならもっと注意しろ」


「……ごめんなさい」


莉央奈の声が小さくなる。


康熙は少し黙った。


そして声を落とす。


「怖かったか?」


莉央奈が顔を上げる。


「……うん」


「なら覚えておけ」


康熙はカードを莉央奈へ渡す。


「秘密を守るっていうのは、こういうことだ」


莉央奈はカードを受け取る。


「自分の正体だけじゃない」


康熙は続ける。


「SHI☆、MIKU♪、YUNA◇、MII♡。他の四人の学校生活も背負ってる」


莉央奈は握ったカードを見る。


「もし私がバレたら……」


「他の四人も疑われる」


「うん」


「だから一人のミスが五人全員に関わる」


莉央奈は深く頷いた。


「もう絶対しない」


「本当に?」


「絶対」


康熙は少し表情を緩めた。


「ならいい」


◇◇◇


その日の放課後。


レッスン室。


四人が莉央奈を囲む。


「LiZ☆!」


美空――MIKU♪が叫ぶ。


「本当に危なかったんだから!」


「ごめんって!」


YUNA◇も真剣。


「私、心臓止まるかと思った」


MII♡も。


「陽向くんが拾うなんて……」


SHI☆。


「でも康熙コーチが来なかったら本当に危なかったね」


LiZ☆は全員に頭を下げた。


「本当にごめん」


四人が静かになる。


「私のせいでみんなまで危なくなった」


MIKU♪が腕を組む。


「次から気をつけて」


「うん」


YUNA◇。


「五人で守る秘密だから」


「うん」


MII♡。


「怒ってるわけじゃないよ」


SHI☆も頷く。


「失敗は誰にでもあるから」


LiZ☆は四人を見る。


「ありがとう」


その時。


康熙が入ってきた。


「反省会は終わったか?」


「はい」


「じゃあ今日から新しいルール追加」


五人が身構える。


「学校へ行く前、芸能活動に関係する物は必ず二人以上で確認」


MIKU♪が言う。


「持ち物検査みたい」


「そう思っていい」


「厳しい!」


「今日のこと考えろ」


「……はい」


即納得。


◇◇◇


夜。


柴崎家。


「ただいま」


「おかえり」


リオが迎える。


莉央奈はいつもより静かだった。


「どうしたの?」


「……今日、やらかした」


リオの表情が変わる。


もちろん、新社長経由ですでに話は聞いていた。


だが知らないふりをする。


「何を?」


「秘密の……」


言いかける。


止める。


「大事な物、学校に持ってっちゃって」


「見つかった?」


「……ちょっと」


「大丈夫だった?」


「うん」


莉央奈はソファへ座る。


リオも隣へ座った。


「怖かった?」


莉央奈は頷いた。


「うん」


リオは少し考える。


「昔ね」


「昔?」


「大切な秘密を守る時って、一人だけの問題じゃないこともあるんだよ」


莉央奈が母を見る。


また。


具体的。


「例えば五人で秘密を共有してたら、一人のミスで全員が困る」


莉央奈の目が少し大きくなる。


「……お母さん」


リオが気づく。


「あ」


「なんでまた五人?」


「例えば!」


「またそれ!」


莉央奈がじっと見る。


「今日、康熙コーチとほぼ同じこと言われた」


「康熙?」


「あ」


今度は莉央奈がしまったという顔。


「崇道先生!」


「歴史の?」


「そう!」


「どうして先生が秘密の話を?」


「……人生相談!」


「歴史の先生に?」


「そう!」


二人は互いに怪しい言い訳をする。


そして。


同時に笑った。


「お母さんも怪しい」


「莉央奈も怪しい」


「私は普通!」


「私も普通!」


「絶対何かある!」


「そっちこそ!」


二人の笑い声がリビングに響いた。


まだ。


真実は言えない。


でも。


どこか似ている。


秘密を抱える母と娘。


◇◇◇


翌朝。


学校。


莉央奈は陽向と琴音に会った。


「おはよう」


「おはよう」


いつも通り――にはならなかった。


陽向が莉央奈を見る。


「昨日のカード」


莉央奈の心臓が跳ねる。


「何?」


「本当に学校のサンプル?」


「そう言ってたじゃん」


「崇道先生がな」


「ならそうでしょ」


陽向はじっと莉央奈を見る。


「でも」


琴音も。


「何?」


陽向が続ける。


「お前、あの時めちゃくちゃ焦ってた」


沈黙。


「それは……」


「サンプルなら、なんで?」


琴音も優しく尋ねる。


「莉央奈」


逃げられない。


莉央奈は少し考える。


そして。


「ごめん」


「何が?」


「今は言えない」


陽向の表情が変わる。


琴音も。


莉央奈は二人を見る。


「でも、危ないことじゃない」


「……」


「それだけは信じて」


琴音は少し黙った後。


「分かった」


「琴音」


「莉央奈がそう言うなら」


陽向はまだ何か言いたそうだった。


でも。


「……いつか絶対話せよ」


「うん」


「約束」


「約束」


陽向は頷いた。


だが。


完全に疑いが消えたわけではない。


むしろ。


LiZ☆のメンバーパス。


最近の莉央奈。


放課後の秘密。


少しずつ。


点が増えている。


まだ線にはなっていない。


しかし。


その日は、確実に近づいていた。


◇◇◇


一方。


職員室。


五十嵐真緒が康熙へ声を掛ける。


「崇道先生」


「はい」


「昨日のカードの件」


康熙の手が止まる。


「はい」


「総合学習で芸能関係の授業、本当にやるんですか?」


「……」


一瞬。


康熙の頭が高速で回る。


「企画段階です」


「そうなんですね」


「正式に決まったらお願いします」


五十嵐先生は笑う。


「分かりました」


そして自分の席へ戻る。


康熙は小さく息を吐いた。


隣を通った美和が小声で言う。


「大変ね」


「聞いてた?」


「少し」


「後で校長に話さないと」


「本当に総合学習やることになりそう」


「……仕方ない」


美和は笑いを堪える。


学校では。


「崇道先生」


「宍戸先生」


それ以上は言えない。


◇◇◇


放課後。


レッスン室。


五人のバッグが並べられていた。


康熙が腕を組む。


「確認」


SHI☆とMIKU♪が互いのバッグを見る。


YUNA◇とMII♡。


最後。


LiZ☆。


「私一人?」


「俺が見る」


「康熙コーチ!?」


「問題あるか?」


「ないです……」


バッグを開く。


学校に持ち込んではいけない物。


パス。


衣装。


芸能事務所の資料。


写真。


全部確認。


「大丈夫」


康熙が言う。


LiZ☆が胸を撫で下ろす。


MIKU♪が笑う。


「LiZ☆、昨日のトラウマ?」


「本当に怖かったんだから!」


五人が笑う。


そして康熙が言う。


「笑えるのは秘密を守れたからだ」


五人が静かになる。


「次は笑えないかもしれない」


「はい」


「だから気をつけろ」


五人が頷く。


「はい!」


◇◇◇


レッスン開始。


音楽が流れる。


SHI☆。


MIKU♪。


YUNA◇。


MII♡。


LiZ☆。


五人が踊る。


昨日。


秘密は発覚寸前までいった。


LiZ☆と柴崎莉央奈。


二つの顔が繋がりかけた。


けれど。


今回は守れた。


ただし。


幼馴染の陽向と琴音の疑問は、以前より大きくなった。


そして。


LiZ☆本人も、知り始めている。


秘密を持つことの、本当の怖さを。


二十五年前。


母・リオ――LIZ☆もまた。


同じように。


秘密がバレそうになる恐怖と向き合っていた。


でも莉央奈はまだ知らない。


いつか。


母と娘が互いの秘密を知った時。


今日の出来事もきっと。


「あの時、私も同じだった」


そう笑って話せる日が来る。


けれど今はまだ。


その時ではない。


学校では――柴崎莉央奈。


ステージでは――LiZ☆。


二代目シークレットガールズの秘密は。


ギリギリのところで――。


今日も守られた。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


第8話では、これまでで最も危険な「正体発覚寸前」の出来事が起こりました。


莉央奈が誤って学校へ持ち込んでしまった、LiZ☆専用のメンバーパス。


それを拾ったのは、よりによって幼馴染の陽向でした。


そこには、


「SECRET GIRLS」


「LiZ☆」


という、絶対に学校では見つかってはいけない文字。


さらに、その場には琴音やクラスメイト、そして以前から五人の歌唱力に違和感を抱いている音楽教師・五十嵐真緒までいました。


あと少し対応が遅れていれば――。


LiZ☆と莉央奈。


二つの存在が、一気に繋がっていたかもしれません。


そんな絶体絶命の状況で五人を救ったのが、崇道康熙でした。


学校では歴史教師。


放課後は二代目シークレットガールズのコーチ。


康熙は「総合学習で使用するサンプルカード」という、とっさの説明でその場を切り抜けました。


そして莉央奈へ伝えた、


「一人のミスが五人全員に関わる」


という言葉。


シークレットガールズの秘密は、自分一人だけの秘密ではありません。


SHI☆。


MIKU♪。


YUNA◇。


MII♡。


LiZ☆。


五人全員の学校生活や家族、友人関係を守るための秘密でもあります。


莉央奈は今回の出来事を通して、その重さを初めて本当の意味で理解しました。


一方で――。


秘密そのものは守れたものの、陽向と琴音の疑問は以前よりも強くなっています。


「どうして莉央奈は、あのカードを見てあんなに焦ったのか?」


「なぜ最近、放課後になると五人揃って姿を消すのか?」


「どうしてLiZ☆と莉央奈は似ているのか?」


まだ一つ一つは小さな点。


しかし、その点が少しずつ増え始めています。


そして莉央奈自身にも、もう一つの秘密があります。


自分の母・柴崎リオが、二十五年前に同じような危機を乗り越えてきた初代LIZ☆本人だということ。


今回、リオが何気なく娘へ伝えた言葉も、かつて自分自身がシークレットガールズとして秘密を守っていたからこそ言えるものでした。


母も娘も、互いに大きな秘密を隠している。


けれど二人は、まだその事実を知りません。


次回、第9話。


「母たちの再会――二十五年前のシークレット」


今度は、初代シークレットガールズの五人――。


EYEだった高野愛。


MORMだった森川未紀。


YAHだった山本麻子。


BEEだった荒木まや。


LIZ☆だった柴崎リオ。


五人が再び集まります。


娘たちが二代目として成長する一方で、母親たちは二十五年前の自分たちの青春を振り返ることに。


そして――。


偶然にも娘たちは、母親たちと小林前社長が昔から深く繋がっていることを知ってしまいます。


「どうしてお母さんたちが、小林前社長とこんなに親しいの?」


第7話で芽生えた疑問が、さらに大きくなる第9話。


二十五年間守られてきた最大のシークレットへ、娘たちがまた一歩近づきます。


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