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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十一章 乳母と、クロイツァー伯と、旅立ちの日

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第十四話「代わりの教師」


フェリクスの死後、新しい剣術教師がついた。

だが、マティアスは、その教師と、あまり馴染まなかった。

理由を聞かれても、うまく答えられなかった。

「技量に、不満があるのですか」と伯爵が聞いた。

「不満はない」

「では、何が」

マティアスは、少し考えた。

「……分からない」

本当に、分からなかった。

ただ、稽古場に立つと、フェリクスの声が聞こえる気がした。

自分でやれ、という声だった。

それが、新しい教師の声と重なると、妙な違和感があった。


グレーテは、この変化に気づいていた。

「フェリクス様のことを、まだ、気にされているのですね」

「気にしてはいない」

「そうですか」

「……少しだけ、思い出す」

グレーテは、それ以上、何も言わなかった。

ただ、微笑んだ。

「思い出すことは、悪いことではありませんよ」

「そうか」

「はい」

マティアスは、その言葉を、しばらく考えていた。

そして、少しずつ、新しい教師の稽古にも、慣れていった。

完全には、馴染まなかったが。


つづく



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